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教師の仕事をつらくさせる背景

企業人と会話していると、世間の教師に対する思いをよく聞かされます。
私が「元教師」だと知ると、なぜかたいていその話になるのです。

まったくの勘違いもあれば、「なるほど」と思わされるものもあります。
残念ながら好ましくないお話を聞く機会の方が多くなっています。
ただ、私には一つ気付いたことがあります。

「教師全体の話をしながらも、特定の先生をイメージしているのでは?」
そう感じることが多いのです。
そしてその対象の多くは、クラス担任か部活動の顧問が大半を占めています。

我が国では、毎年、100人前後の教師が自殺していると言われます。
精神疾患で休職を余儀なくされる先生も、毎年5,000人程度。
過労死は表に出ることがほとんどないので、実数を掴むことができません。

上記の数字は公立の一般学校のみでの人数です。
幼・保、大・専、私立学校を合わせたら、いったい何人になるのでしょう。
こうした先生方全員に救済や復帰の機会がもたらされるのはいつ?

教育界はたしかに旧態依然とした組織観やシステムを墨守しています。
社会変化に対応できていない面が多く、現場の先生方を圧迫します。
加えて、保護者対応に困難の生じる場面も平成以降では急激に増えました。

数々のその矛盾や破綻を考えるとき、教育界の視野の狭さを感じます。
教育ベースで世の中のすべてを論じてしまうという、誤った姿勢があります。

世の中全体は、教育を軸として変化しているわけではありません。
この点に気付かないと、『井の中の蛙』になりやすいというわけです。
必要な思考の切り口は「政治」「経済」「社会」「技術」の4つです。

▽政治⇒⇒⇒判例・政策・法改正・制度・国際情勢・外交など
▽経済⇒⇒⇒株価・公定歩合・為替レート・可処分所得・経済団体など
▽社会⇒⇒⇒文化・伝統・教育・世論・報道・大事件・大事故・災害など
▽技術⇒⇒⇒技術革新・発明・インフラ・開発整備・IT革命など

こうした4つの切り口から世の中全体の変化を予測することになります。

平成以降、教育の世界においては以下のような変化がありました。

1.マネジメントスタイル(生徒管理)の変化
「強制型」から「共生型」へ

2.コミュニケーションスタイル(指導法)の変化
「指示命令型」から「質問型・提案型」へ

3.支援スタンスの変化
「教え込む」スタイルから「引き出す」スタイルへ

4.対応人数の変化
「1対大勢」から「1対1」へ

5.児童生徒との人間関係
「上下関係」から「協働関係」へ

こうした時代変化に気付いている学校と気付いていない学校があります。
もちろん、教師個人においても同様かもしれません。
その差はトラブル発生率や解決までの期間にも大きな影響を与えます。

「教育界は時代遅れ」と評されるのも、こうした背景があるからです。
子どもたちとのトラブルが多発している場合、ここに原因があります。

教育界の人材育成には、時代にそぐわない要素がたくさんあります。
いや、実際には人材育成の仕組みそのものがない学校も多いことでしょう。

教師一人ひとりの問題というより、業界的な問題だというわけです。
「自分の身は自分で守る」
事実を知り、自ら能力開発を進めるべき時代になったのだとも言えますね。

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