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シャレにならない話

田中ひではる

 たしか2017年秋頃、ショートステイひといきを始めて少し経った頃にこの事件は起きた。ショートステイ利用中のご利用者が施設からいなくなったのだ。
※文章を読みやすくするため、この先このご利用者のことは「Aさん」とする

 Aさんは障害程度も重度で、初対面の人とコミュニケーションは難しく、屋外の移動も誰かの支援がなければ交通事故や目的地まで辿り着けない心配のある人だった。

 いつも帰宅願望の強く玄関が開いていればすぐに出て行ってしまうAさん。うちは自動で鍵がかかる電子錠なので、スタッフは玄関に鍵がかかってるかどうかは無関心というか「鍵はかかっている」と信じている。

でもその日は何故か開いていたのか開いてしまった。

 時間帯は夜暗くなり始めで、昼は薄着で過ごせるけど夜は少し寒くなる、そんな季節だった。Aさんがいなくなる直前は薄着だったという情報もあり、気温の面でも心配だった。

いなくなったことが間違いないという情報を受け警察と家族に連絡、そしてすべての責任者に連絡して時間がある人は探しに出てくれと頼んだ。

 僕は少しお酒を飲んでいたので歩いて捜索を始めた。僕はAさんのことを少しは知っていて自宅方向か飲食店、もしくはスーパーに向かう可能性が高いと思った。

 そして当時住んでた佐伯区利松の三和中学校の方から波出石交差点までのすべてのお店に入り、スマホでAさんの画像を見せて「この人ここに来ませんでしたか?」と回った。

そして出発から2時間後くらいに奇跡が起こった。

 波出石交差点角にある「丸源ラーメン」って店で店員にAさんの画像を見せたところ、迷惑そうな顔で「あそこの奥の席にいますよ」って案内してくれた。

 その時Aさんはトイレに行っててその場にいなかったけど、店員さん曰く「何言ってるのかわからず指差された商品持っていきました。いろんなとこ指さしてましたけど…」とのことでテーブルを見るとラーメンと餃子を完食した後だった。

 トイレに行くとAさんのいつもの口癖のような音が聞こえ僕は安堵した。トイレから出てきたAさんはラーメンと餃子が食べれてご満悦に見えた。

もちろんAさんはお金など持っていないので僕がお金を支払い店をあとにして施設に戻った。Aさんは家に帰ろうと思ってたのでちょっと嫌そうだった。

 たまに介護施設や保育園、学校とかで不慮の事故のニュースがあるけど、自分の施設もいつだってそうなる可能性があることを身をもって知った出来事だった。

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