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インスリンの歴史

~糖尿病の歴史~

「それは糖尿病ではないか?」と考えられる病気と治療法の記録は世界各国に残っています。

紀元前1500年、古代エジプトの医学書『エーベルス・パピルス』。

そこには、“やたら多尿となり、渇きの激しくなる病気”を治す薬の作り方が記されています。“小麦の粒”と“水”、“(現代のパンに似た)お菓子”、そして水晶の一種である“緑鉛”、“細かい砂”、“土”といった鉱物まで混ぜ合わせて、ろ過して完成。あとは、“これを4日間服用する”と治る。

古代エジプトではこのような薬による治療が行われていたというわけです。それから約1700年後、紀元2世紀のカッパドキア、現在のトルコ。

そこにもこんな記述があります。

“患者は水を作ることを片時もやめず、身体や手足の肉はみな尿の中に溶け出てしまう。渇きはいやすすべもなく、水の流出はあたかもサイホンのようにとめどがない”

サイホンは、気圧の力で水を勢いよく押し出します。 人の身体から、とめどがなく水が失われる様子がサイホンのように激しかったのでしょうか。
この記述を書いたのは、医師 アレタエオスです。

彼はその著書の中で、この病気にギリシア語で「サイホン」の意味を持つ「ディアベテスdiabetes」という病名をつけました。アレタエオスは、この病気の原因を“胃腸あるいは膀胱に問題あり”と考えていました。そのため、ミルク、薄いかゆ、穀物、果物、甘口のワインと消化の良い栄養のある食べ物を病気を治すための食事として考え出したのです。紀元200年頃のカッパドキアでは、食事による治療が行われていました。

その400年後の7世紀頃、中国は唐の時代。孫思バク(そんしばく)という医学者の『千金方(せんきんほう)』にも、現代の糖尿病と似た病気の治療法が書かれています。

“この病気は、どんな薬でも治らない。ただし、お酒を飲むことと塩辛い食べ物、小麦粉を我慢すれば、たちどころに治る”

中国でも食事による治療が行われていたようです。

16世紀のスイスでは、医師 パラケルススが尿がたくさん出る病気の原因は腎臓にあると考えました。腎臓が塩気のために乾く。そう考えた彼は、口の渇きを訴える患者に甘いお酒をすすめました。 それからおよそ200年後の1797年、イギリスのロロという軍医によって新しい治療法が確立されました。 ロロはこの病気は、“胃の働きが異常に高まり、胃液が出すぎて、食べ物が消化されすぎることによって起こる”と考えました。 そして、糖尿病のときに大量に出る尿のほとんどは、野菜などの植物性の食品が消化されすぎたものだと考えました。 そこで、胃の働きを抑える薬を飲み、肉などの動物性の食品を食べれば、この病気は治ると考えたのです。 この治療法は『ロロの肉食療法』と呼ばれ、ヨーロッパ全土に広まり、インスリンの発見まで百年以上続けられていたそうです。

~インスリンの歴史~

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インスリン発見物語 “2人の学者と10匹の犬”

インスリンが発見されたのは、20世紀の初め。 当時25歳だったバンティングは、カナダの片田舎の平凡な整形外科医でした。ある論文との出会いがきっかけとなり、彼は糖尿病研究の道に入りました。それは、ドイツ人医師 ミンコフスキーが1889年に発表した、
「犬のすい臓を取り出すと、糖尿病になる」という論文でした。
この論文を読んだバンティングは確信しました。

“すい臓がなくなると糖尿病になる。

すい臓にある何かが少なくなったり、なくなったりすると糖尿病にかかるに違いない!”
“その何かを見つけ出して糖尿病の治療に役立てたい!”

しかし、田舎の外科医で、実験の経験も知識もなかったバンティングには自分の仮説を証明する手段がありませんでした。

母校のトロント大学に頼み込むこと3度、翌年の1921年の夏、ついに小さな実験室と研究用の10匹の犬を使うことを許されました。

この時、バンティングの研究に協力したのは医学生・ベスト、当時わずか19歳。
2人は手探りで、犬のすい臓から物質を取り出すための手術を始めました。それは、すい臓から出ている管を縛る手術です。すい臓から出ている物質を、すい臓に溜め込み、取り出そうと考えたのです。

手術後、10匹の犬達の体調管理が2人の日課となりました。朝はエサ作りから始まり、毎日必ず尿検査と血糖値の検査を行い、10匹の犬達を見守り続けたのです。

実験を始めて9週間後、1921年7月27日、ついにすい臓から物質を取り出すことに成功。

いよいよ、その物質の働きを確かめるときが訪れました。それには、糖尿病の犬に、この物質を注射して糖尿病が治るかを確かめるしかありません。
ここで2人は悩みました。この研究のためには、自分達の手で犬からすい臓を取り出し、糖尿病にしなければいけなかったからです。その犬は一週間と生きることができません。
この時選ばれた一匹の犬が、マージョリでした。

研究を成し遂げるためにはマージョリを犠牲にするしかありませんでした。
2人がマージョリからすい臓を取り出すと、マージョリの血糖値は急激に上がりました。
2人はマージョリに、犬のすい臓から取り出した物質を注射しました。数時間後、マージョリの血糖値は下がり、衰弱していたマージョリは元気になりました。
この物質こそインスリンです。

バンティングとベスト、そしてマージョリをはじめとする10匹の犬のおかげでインスリンが発見されたのです。

その後、2人はヒトの糖尿病を治すべく、研究を続けました。

1922年、当時13歳のレオナード・トンプスン少年が世界で始めてインスリンによる治療を受けました。
この少年は当時、すでに糖尿病の末期で衰弱しきり、明日にも命を落としかねない状態でした。
しかし、治療を始めてから半年後・・・
トンプスン少年はインスリンによって、糖尿病のベッドから奇跡の生還を成し遂げました。

1923年、インスリンの発見は、ノーベル医学生理学賞を受賞しました。

~インスリンの改良~

歴史上、初めて成功したインスリン治療には牛のすい臓から作ったインスリンが使われました。
それからおよそ50年後の1970年代には、インスリンは豚のすい臓から作られるようになります。

やがて1982年には、ヒトインスリンという、人間と同じインスリンが人工的に作られるようになり、今も使われています。ヒトインスリンは、私達の身体の中にもいる大腸菌を使って作ります。 大腸菌にヒトインスリンの遺伝子を入れると、せっせとヒトインスリンを作り始めるのです。

糖尿病の病態とインスリンとは?

ご存知のとおり、糖尿病には、「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。インスリンは、膵臓から分泌され、血液中の血糖を下げるはたらきをもつ重要なホルモンです。

1型糖尿病では、発症の原因が生活習慣とは無関係で、このインスリン分泌が何らかの原因で出なくなる疾患です。この場合、外からインスリンを補う必要があるため、飲み薬ではなく、インスリン療法が治療の中心です。

一方、糖尿病の多くの方は、2型糖尿病で、遺伝的な要因や不規則な食事、運動不足、肥満などの生活習慣が原因で、インスリンのはたらきが低下することによって起こる疾患です。これには、主に2つの要因があり、膵臓のインスリンの分泌機能が低下してしまっている場合と、インスリンは分泌されているものの効きにくくなっている場合とがあります。

まずは、食事療法、運動療法による生活習慣の改善の指導が行われ、症状に合わせてお薬による治療、そして、インスリン療法が用いられることがあります。

インスリン効果値とCIR

インスリン効果値(インスリン1単位で血糖値がどれだけ下がるのか)

下記の1700ルールを用いると大体の計算が出来ます。ただ、あくまでも個人差がありますので、実際インスリン注射後に自分で血糖値を測定してより精度を高めていく必要性があります。

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例:朝6、昼6、夕6、就寝前12単位であれば
1700÷30≒56.7
よって、1単位でおおよそ50mg/dL下がると考えます。

CIR(Carbohydrate-to Insulin ration追加インスリン1単位で処理できる糖質量)

下記の500ルールを用いると、インスリン効果値と同様に近似値を求めることができます。

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例:朝12、昼12、タ12、就寝前14単位であれば
500÷50=10g /単位となります。
要するに糖質40gを含むおにぎりを食べた時には、4単位程度の超速効型インスリンをうてば良い事となります。

~インスリンの剤型~

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<プレフィルド/キット製剤>
インスリン製剤と注入器が一体となっており、使い捨てタイプのものです。カートリッジなどを交換する手間がなく、一般的に使用されることが多いです。
デバイス(注入器)名としては、フレックスタッチ、フレックスペン、イノレット、ミリオペン、ソロスターなどがあります。

<カートリッジ製剤>
専用のペン型注入器にセットして使います。ペン型注入器は長く使用でき、中身のカートリッジを変更することによって、使い続けることができます。
専用のペン型注入器としては、ノボペンエコー、ノボペン4、ヒューマペンラグジュラ、ヒューマペンラグジュラHD、イタンゴなどがあります。

<バイアル製剤>
専用の注射器で吸引して使用します。皮下注射が基本ですが、点滴や静脈内投与で使用することもあります。

~インスリンってどうやって注射するのか~

基本的には、インスリン製剤は、自分自身で「皮下注射」で行います。

皮下注射とは、皮膚のすぐ下にある皮下組織に対して注射するものです。皮下注射は、筋肉注射など他の注射と比較すると痛みは少ないです。吸収が早いとされるお腹に注射することが多いですが、その他に、上腕外側、おしり、太もも部分などに注射することもあります。

注射を行う部分を消毒してから、皮下組織の下にある筋肉内に入らないように、皮膚をつまみながら注射します。注射する場所は、皮膚が硬くならないように、毎回数cmずつずらして実施していきます。

専用注入器の操作方法はとても簡単で、基本的には、針をつけて、量を調整し、ボタンを押すだけで注射することができます。専用の針も、細く短く開発されており、注射している感じがしないぐらい痛みがないものです。注射している感覚がないのが不安なので、少し太めの針が良いという患者さんもいらっしゃるぐらいです。

~注射針の種類~

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インスリン注射に使用する針は、採血用などの針と比べて非常に細いのが特徴です。技術の進歩によって、針の長さや太さは、ますます短く細くなってきました。また、針が身体に刺さる際により抵抗がなくなるような工夫もされていて、『痛みは ほとんど感じない』といった感想もよくきかれます。

針の太さは、ゲージ(G)という単位で表され、数字が大きくなるほど細くなります。インスリン注射で使われるものは、30Gから34Gです。献血などで使われる針の太さがおよそ27Gですから、インスリン注射の針はとても細いことがわかります。

針の長さは、4mm~8mmと種類があります。短ければいいというものではなく、体型によって好ましい長さがあります。

注射針の長さによるちがいに加えて、針基(はりもと)と呼ばれる台座の形状が違うものが出てきています。

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