おときゅうパス

50歳「一年生」、大人の休日倶楽部パスではじめての旅に出る

 知名度もなく金もなく、フォロワーさえ極端に少ない男にただ一つ許されていたのは、ギリギリに切り詰めた費用で旅をする事であった。
 この文章は、五十歳を迎え人生の新たなステージに立った男の、壮大な愛のロマンである


 ――ンなわきゃない。


「おときゅう」カード取得まで

 これまで僕は、北は北海道、南は沖縄と、様々な土地に旅行してきた。
 
 ただし
 旅費は片道一万円以内で納めるか(かつて、『どこまで乗っても1万円』という飛行機の割引があり、沖縄へはそれで行った)、もしくは航空会社のマイルをせこせこ貯めた無料特典旅行――の二択だが。

 特典旅行の場合、僕が住む土地の空港からは、東京行きと大阪行き、いずれも同じマイル数が必要になる。それだったら、より遠い大阪に行ったほうが得。
 したがって飛行機で東京へ行ったことは、ほぼない。


 これまで、東京に行く時には深夜の高速バスを使っていた。
 値段は安いものの、狭い車内で長時間ぎゅうぎゅう詰めにされたり、夜中一睡もできなかったりと、不都合も多い。
 40代も後半になると体力的にきつい面が多々あり、今後も続けていけるか悩むところではあった。
 
 東京行きの次案、というか普通は新幹線を利用するのだろうが、貧乏庶民にはなかなか厳しいものがある。
飛行機のような売り出し日割引(「お先にトクだ値」)はあるものの、予約開始直後に満席になるので、思い立ったら即予約、というわけにはいかない。
したがってここ20年ほど、僕は新幹線に乗ったことがない。
 一度は乗ってみたい憧れを長年抱きつつも叶えられないまま、僕は去年50歳になった。
 
 そして、ついに「あの」カードを手に入れることができた。

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