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左利きとハサミの、ちょっとややこしいお話。

左利きあるあるの中で、一番の嫌われ道具といえば大抵は「スープレードル(先の尖ったおたま)」ですが、こと「ハサミ」に関しては左利きの中でもその人によってかなりスタンスの分かれる道具だなあと感じています。

ちなみに、左ききの道具店の店長である私も左利きですが、ハサミに関しては「右手用」を「右手」で使っています。ですが、やはり左利きの道具店としてハサミをラインナップするのは必須と考え、手探りながらも左手用ハサミの取り扱いを始めました。

自分自身の体感、左利きの家族や知人の話、書籍、twitter・ブログの記事など見ていると、同じ左利きでも、年代や環境(主に保護者や教師などの意向)、元々の器用さ、利き度合い(?)の強さなどにより、ハサミに対するアプローチは人によってかなり違っていて、本当に奥深いなあと思います。

そこで、勝手にパターン分けして整理してみたいと思います。

A 「左手用ハサミ」を「左手」で使う

最近では「無理に利き手を変えない方が良い」という認識が広まり、左利き向けの子ども用ハサミや箸などが簡単に手に入るようになってきたため、比較的若い世代の左利きさんに多いのではないかと推測しています。

このパターンのメリットはもちろん、使いやすい利き手で道具を扱えること(本来はものすごーく当たり前なことである気もしますが)。
デメリットは、昔よりずっと手に入りやすくなったとはいえ、やはり選べるハサミが少ないこと。それから、誰かのハサミを借りる時に左手用が出てくる可能性は極めて低いと思いますし、共用のハサミを使う際に左手用が用意されていることはまだまだ少ないと思いますので、そうした場合に右手用を使うのが大変ということでしょうか。

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B 「右手用ハサミ」を「右手」で使う

右手用しかない環境だったから自然と右手で使っていた、親の意向で右手で使うよう躾けられた、などの理由が多いと思われるのがこのパターン。私もここに入ります。ハサミについては筆記や箸のように厳しく言われた記憶がないので、やはりある程度自然にそうなっていったのかなと思っています。

筆記や箸と比べて、ハサミの面白くも複雑なところだと思うのは、ハサミをうまく使う重要なコツの一つが「ハサミより紙の方を動かす」だということです。そのため、左利きの人が利き手でない右手でハサミを使った場合でも、筆記や箸ほどは不利に働かないのではないでしょうか。ちなみに、私自身、周りの右利きさんよりも切り紙などは得意な方だと思っています。

このパターンのメリットは、Aと逆で、右手用を使えるので選べるハサミが圧倒的に多いこと。そしてハサミを借りる場合でもいつも通り使うことができるということです。
デメリットは、おそらく最初にハサミの使い方を習得し、慣れるまでに困難があるかもしれないということ。この辺りは左利き度合いの強さにもよって変わってくるとは思います。(比較的楽に右手でできる人もいれば、絶対に左手でないと無理という人もいると思うので)

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C 「右手用ハサミ」を「左手」で使う

子どもの頃に左手用ハサミが手に入りづらかった世代、左利き度合いの強い人(あくまで推測ですが)に見かけるのがこのケース。webを見ていて、「ハサミ使いづらい・・」と不満の声を上げているのはおのずとここに当てはまる方が多い気がします。訴えは切実なもので、読んでいて胸が痛くなることも。実は、私の父親がここに当てはまる左利きです。(余談ですが私の実家は5人中3人が左利きです)

ここに当てはまる方が困難を感じやすいのは次のような理由があります。

(1) ハンドル部分が右手の指に沿うような形状になっている場合、左手で持ちづらい
(2) 内側から見たときに切り口が隠れてしまうので、線に沿って切る場合は外側から見て確認することになる
(3) 力の伝わる方向が右手の場合と逆になるので、切れ味が悪くなる
(これについて詳しくはまた別の記事で書こうと思っています)

そして、このCパターンの状況をさらにややこしくするのが、
「今になって左手用のハサミ使ってみたけど、かえって切りにくい!なんだこれ!」となってしまう問題です。

右手用のハサミを左手で使うことに慣れてしまうと、(3)の困難を解決するため、通常右手用を右手で使う時とは違う独自の持ち方(力の入れ方)をしている場合がままあるそうなのです。

左手用ハサミは持ち手も刃の合わせも、右手用がまるごと反転した作りになっていますから、その独自の持ち方で切ろうとすると上手く力が伝わらず、左手用なのに切りづらい、という事象が起こります。なかなか難しいですね・・・これが考慮された設計の左手用ハサミ、どこかにないでしょうか?もしご存知でしたら是非教えてください!

とはいえ、右手用を左手で使ってるけど上手く使えるから問題無し!という方ももちろんたくさんいらっしゃいます。私も実際に何度も試していますが、ハサミ自体の切れ味が良いもので、普通の紙を1枚切るくらいであれば、切れない!というイライラはそこまで感じませんでした。
なので、「切れ味が良く」「持ち手が左右対称」の右手用ハサミを使うことで、ある程度解決出来ることかもしれません。

※後日、左手用ハサミの使い方について記事を書きました!


と、まあ、一口に「左利きとハサミ」と言っても一人一人に違った事情があるわけで、それぞれの環境やご自身の特性に応じて、意識するにせよ意識しないにせよ、みんな工夫してやってきているということに、ちょっとした感動すら覚えます。もちろん、ハサミに限らず左利きの方はみんなどこかしらそうなのだと思いますが。

左ききの道具店は、左利きさんの暮らしがちょっとでも気持ち良いものになるように、そのお手伝いをしていけたらと思っています。
大人の方はもちろんですが、特に左利きの子ども達にとって、道具の使いづらさが原因でお絵描き・工作・勉強などが辛い時間にならないように、お子さんご本人と親御さんのサポートをしていけるよう、いろいろと考え中です。

左手用ハサミについても、機能は言うまでもありませんが、見て使って嬉しくなるルックスも重視しつつ、今後も少しずつ商品を増やしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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