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NO NANPA , NO LIFE(新潟の女⑪)vol.412


最後は新潟の女。

前にも触れたが、この女からは一度振られている。

映画行ったり、ディズニー行ったり、ドライブ行ったりで、女との付き合いは順調のように思えた。

だが別れは突然女の方から言われた。

ドライブを楽しんだ帰りの車の中で俺はそれを受けた。

嘘だろう?と俺は思った。

女は付き合う以上は将来を見据えた付き合いがしたいし、結婚も考えたい。

俺と付き合うということは子供を断念するということで、それなら俺と付き合っていく意味がない。

そんなことを短兵急に考え、いきなり二人の幸せな記憶を遮断しにかかったのだ。

俺は早晩女がこういう結論を導く可能性があることは分かっていたから、気持ちを出来るだけ平らかにするよう努めた。

だがいくら振られ慣れてる俺であっても、少しの時間は必要である。

俺は気持ちの面で大きく舵を切る覚悟をした。

女はアラフォーの俺を受け入れ、年の差を物ともせず、よく俺を可愛いと言ってくれていた。

それが俺はとにかく嬉しかった。

そんなことを最後に伝え、俺は女との連絡を断った。

しばらくして女はSNSでメッセージを送ってくるようになった。

その時俺は既に頭を切り替えていたから、何のこだわりもなく女とのやり取りを再開するに至った。

どうやら女は別れてから未練が出てきたらしい。

子供という論点についてもいろいろ考えたらしく、新潟から出てきて結婚して子供を育てる、それがどういう意味を持つのかということ。

出来れば結婚しても東京を離れたくない。

とすれば出産後、親の助けも借りずに夫婦のみで子供を育てなければならない。

無事に成長していくのか、親のお眼鏡に叶う子供であり得るのか、親の面倒を見てくれるのか。

子供のことを軸にして考える時、必ずしも親として幸せでない自分を想像できてしまう直感。

女は結婚=出産ではないという結論を得ることになる。

とすれば、俺と離れる理由も霞んでくる。

そういうことらしかった。

俺は迷った。

ただ、俺は女を異性としてずっとずっと抱いていく自信がなかった。

年の差があるとはいえ、身体の若さは明らかに俺の方が上であった。

女はただ年齢的に若いというだけ。

それよりも何やりも、最初に別れ話を切り出した時、俺に投げかけた言葉はほぼ決定的な響きを持ったフレーズであったのに、寄りを戻す際に、女はそれを疑問形で考えていると違う意見を言い放ったのである。

明らかに口実に過ぎないと思った。

もしそういう疑問形の気持ちがその時あったとするなら、その後のLINEのやり取りもあれほどあっさり別れに突き進まなかったに違いないからだ。

この時点で俺は女に対する執着心を完全に失ってしまった。

俺はしばらく考えるとして時間をもらったが、結局は俺から別れを告げるに至った。

女とはたかだか5ヶ月くらいしか付き合っていない。

何のことはない。

だが、俺をアラフォーと知った上でやり取りしてくれる女はこれでいなくなった。

再び俺は虚飾の自分を押し出さざるを得なくなる。

回帰できる場所がない今の俺は、地に足が着いていない不安定さをとても感じる。

なにしろ、ステディであった3人の中で積み上げたものは一番少ない。

それが今の俺の唯一の拠り所である。(終)

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