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暮れゆく令和5年 悠久の時刻む 北上川

日々の中にある幸せ

 初代仙台藩主、伊達政宗は水害防止と水路整備を進めるため、川村孫兵衛重吉に河川改修を命じた。以来、川湊(かわみなと)として石巻の中心市街地は発展してきたが、河口に堤防はなく、東日本大震災の津波は川をさかのぼり、中心部に被害をもたらした。

 孫兵衛の時代から400年の時を経て再び河口部の大規模改修が進み、復興のまちづくりの中で堤防と一体的な広場が整った。堤防空間は「かわまちオープンパーク」と呼称され、ライブや映画、ヨガなど今年は利活用を探る元年となった。

 石巻川開き祭りは石巻に港を開いた孫兵衛に対する報恩感謝祭であり、第100回の節目を迎えた今年は、震災後初の3日間開催とし、花火の打ち上げ場所も開北橋下流に戻した。尺玉を含めて約1万6千発。球状の花火はどこから見ても同じ形であり、震災十三回忌の今夏は空と地上からきれいな花火を見たに違いない。

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 気の早い冬の太陽が西の空に沈み、空も雲も夕焼け色に染めていく。短時間に鮮烈な色を残す「冬茜」。色が少ないこの季節に一瞬だけ咲いた花のようでもあり、いてつく寒さの中でも見た人の心を穏やかにさせる冬の贈り物だ。

 夕日に照らされた北上川の川面がきらきらと輝く。そこに野鳥の群れが弧を描きながら舞い降り、羽を休め始めた。河川堤防の外側に広がる住宅地は長い影を伸ばす。青みがかった空は漆黒の闇に包まれ、やがて東の空に黎明の新しい光が差し込む。

 当たり前の日常が当たり前に続き、時を刻んでいく。それは誰かの努力と支えによってもたらされ、決して一人じゃないと実感できる。そこに感謝の気持ちを抱けば、争いも無縁だろう。幸せは平凡で穏やかな日々の中にある。迎えるあすもそんな1日でありたい。【外処健一】


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