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有事も〝家族〟と一緒に避難 しつけと責任は常に アニマルクラブ石巻代表 阿部 智子さん

 大規模な自然災害が起きた時、ペットのケアは後回しにされることが多い。だが、飼い主にとって大切な家族の一員であることに変わりはない。まだ見ぬ次の災害に向け、東日本大震災から何を学び、飼い主はどう心構えるのか。動物支援を続けるNPO法人アニマルクラブ石巻=石巻市不動町=の阿部智子代表は「飼い主が責任を持って守り抜くことが大切。人もペットもかけがえのない命」と話す。

 震災が起きた時、阿部さんは多賀城市の市民会館でアニマルクラブの活動や保健所での殺処分の現状などを紹介するパネル展の準備をしていた。渋滞や通行止めで自宅まで約5時間を要し、午後8時ごろに到着すると浸水した1階部分で犬2頭と猫1匹が冷たくなっていた。水は室内からだいぶ引いていたようだが、床から約1メートルほどの高さまで浸水した痕跡があった。

震災後、しばらくは自宅2階で67匹と暮らしていた

 1階部分に住むことはできず、業者の工事が入るまでの間、自宅敷地内のクラブで保護していた犬、猫67匹と一緒に自宅の2階部分で暮らし始めた。阿部さんは2階にある3畳半の納戸で猫12匹と生活を共にした。

 発災後、迷い犬、猫の相談から避難所で使用する猫のキャリーバッグやトイレの貸し出し依頼など、阿部さんの元に続々と人が訪れた。

 「私は避難所にいなかったけれど、動物を連れて避難する人はもちろんいた。ただ、避難は人命が優先。小型犬や猫ならまだしも、中型~大型犬の室内受け入れはほとんどが拒否されていたと聞く。言いつけに従って外につなぎ、津波の犠牲になった犬も少なくない」

 一方で東松島市内の中学校では、動物と飼い主のために図書室を開放していた事例もあったという。阿部さんは「動物に理解のある校長先生だった」と話す。当時、明確なガイドラインもなく、避難所での動物の受け入れは全てその施設の管理者の判断に委ねられていた。

「避難所では飼い主がペットのそばで見守って」と話す阿部さん

 阿部さんは「飼い主がペットと一緒に避難したら、そばを離れず見守るべき。それが飼い主としてのペットに対する責任」と強調する。他の避難者とのトラブルや事故を防ぐために日頃からしつけを徹底し、有事に備えた対応も唱えた。

 現在、アニマルクラブには約20人のボランティアがいるが、毎日活動できる人は少数。スタッフの多くが本業の傍らクラブで活動している。今のところ阿部さんの後継を担う人はいない。

 阿部さんは「震災から12年が過ぎ、それだけ私たちも歳を取っている。私もいつまで活動を続けられるのかは分からない。だからこそ行政と連携して『動物にやさしいまち・石巻』の実現を目指したい」と思いを込めた。【泉野帆薫】





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