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「老舗の底力と創意工夫」 ⑤提言 連携強化と柔軟対応を

 老舗個々の創意工夫とともに、それぞれのオーナーが異口同音に発したのは「連携」。酒屋の四釜商店の社長四釜壮俊さんが取り組む「港町プロジェクト」は、石巻のほか、塩釜、気仙沼、名取と4つの港町と7つの蔵元がコラボした商品展開。塩釜の相原酒店の発案で、お互い苦境を乗り切るアイデアとしてまとまった。うち飲み需要にもマッチして現在、プロジェクトは第3弾まで進んでいる。

 四釜さんは「売り上げは大きくなくても何かやっていることが大事。大きな事は市長に考えてもらって、うちらはできることを頑張るだけ」と話す。

 料理店「松竹」の阿部久利社長は料理人仲間で、半島部の独居老人に豊かな食を届ける案を模索している。経営を安定させたうえでの未来志向のプランだ。ミュージシャンの小林武史さんがプロデュースするアートと食と音楽の祭典「リボーン・アートフェスティバル」の開催期間中、荻浜にオープンするレストラン「はまさいさい」を、期間外に利用してデリバリーの方法を工夫できないか。高齢者や貧困家庭の食のレベルアップにつなげたい。食品ロス、食の格差などコロナ禍で見えてきたテーマを、解決可能な問題として進める機運が高まっている。

 阿部社長は「小林さんにも絡んでもらい、行政もかんでくれれば」と今にも動き出したい口ぶりだ。ピンチをチャンスに転じる新たなビジネスとして大いに議論してほしい。

 震災からの復興にあたって国の補助金を利用した日本料理店「大もりや」の社長・大森信治郎さんが抱えているジレンマは、建物の利用用途が限定されていること。再建した3階建てのビルには、宴会場、ホールも備えているが、そこに新たなテナントを入れることは本来の用途と違うため法規上できないという。被災地の多くで、同じ悩みをもつ自営業者は少なくないとみられる。被災当時とは全く違う局面になって、行政に柔軟な対応を求める声は多い。

 こうした具体的な訴えのほか「町内会がバラバラ」「官民一体の発信力が弱い」「石巻は出る杭がうたれるところ」といったネガティブな意見も聞かれた。今に始まったことではないと思う人は多いだろう。先が見えないコロナ時代、まずは身近な隣人、コミュニティーの結束がこれまで以上に大切に思われる。

 石巻駅前に40年店を構えるリーガルショップの店長新柵ひろ子さん(50)は、毎日、店頭の黒板にちょっとしたメッセージを書いて、道行く人を和ませている。そんな小さな心遣いを気に留める余裕をもって、コロナ時代を過ごしたいものだ。

現在、石巻Days(石巻日日新聞)では掲載記事を原則無料で公開しています。正確な情報が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に役立ち、地域の皆さんが少しでも早く、日常生活を取り戻していくことを願っております。




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