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続けることで原動力に

「いのちの石碑」建立メンバー 母校の女川中で講演

 自然災害や津波から1千年先の命を守るため、女川町内に21基の「いのちの石碑」を建立した東日本大震災当時の中学生。そのメンバーが11日、女川中学校で震災を考える講演を開き、1―2年生70人が受講した。震災の記憶を風化させることなく、後世につないでいく大切さを学んだ。

 石碑建立は、発災直後、女川一中(今の女川中)の1年生(現在24―25歳)が取り組んだ伝承活動。町内21カ所の浜の津波到達地点より高い場所に石碑を建て「有事はこの石碑より高台に逃げてもらう」ことで未来の命を救う狙いがある。

発災当時の出来事などを語った(左から)阿部さん、伊藤さん、鈴木さん

 令和3年までに全て建立し、碑には津波から命を守るために生徒が考えた3つの対策①互いに絆を深める②高台へ避難できるまちづくり③記録に残す―と記されている。

 講演したのはメンバーの阿部由季さん、伊藤唯さん、鈴木美亜さんの3人。震災を知らない後輩に向け、阿部さんは発災直後の心境を「今の自分にできることは何と考える毎日だった」と回顧。「友人と一緒に卒業式で歌うはずの歌を避難所で歌い、皆さんが喜んでくれた。小さなことでも続けることで誰かの原動力になる」と訴えた。

 「町を襲う津波を思い出し、今も眠れない日がある」と打ち明けた伊藤さんは「伝承活動も最初は嫌々参加したが、今は充実感や幸せを感じる。一緒に活動してきた仲間のおかげ」と感謝した。

 「防潮堤を作らない女川の復興まちづくりをどう思うか」という中学生の問いに、鈴木さんは「高い防潮堤を作ってもそれだけでは不十分。津波から命を守るなら高台避難が大事」と強調。「女川は海と共存してきた。身近に海を感じられる今の女川が私は好き」と話した。

 聴講した生徒会長で2年生の高橋莉生さんは「講演を通じて普段から友人や家族、地域と絆を深めることが大事と学んだ。ありがとう、おはよう、おやすみなどのあいさつからしっかりと交わしたい」と語っていた。
【山口紘史】

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