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次代への軌跡「新文化創造」 ①課題 巨大文化施設の活用

 東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市は、石巻文化センターなどの文化施設も被災した。復旧までは市民の文化活動も停滞気味だったが、復興事業が進み、新たな街並みが生まれるにつれ、徐々に活動の再開と広がりにつながってきた。

 震災後、移住などで人の動きが大きく変わり、ボランティアなどで訪れていた人たちが定住するなど、震災前とは違う表情が形作られている。昨年開設した石巻市開成の複合文化施設「マルホンまきあーとテラス」は、かつての石巻文化センター、市民会館の機能を集約している。

 施設を管理する石巻市芸術文化振興財団の三浦信也企画事業課長は「昨今のコロナで大ホール、小ホールを利用するイベントは中止や縮小したものもある。規模の小さい活動室は市民団体の利用が多い」と話す。

 利用料金の高い大ホールとは違い、研修室や和室、市民ギャラリーなどは基本料金が安く抑えられているため、最近は舞踊や楽器演奏、ストリートダンスの練習で活用され、複数の市民団体が利用しているという。

 昨年4月の開館からもうすぐ1年となり、利用者数は約10万人に上る。同市の成人式や全国豊かな海づくり大会など市の重要な行事は同施設の大ホールが活用されている。

 また、6月には市民らが大ホールで手作りイベントを開いた。ピアノ演奏やエイサー、ラップ、和太鼓などで芸術文化の幅を見せた。企画した毛利壯幸さん(56)も新しい文化創造に手ごたえを感じていた。

 しかし、同施設は中心市街地からの距離がネックになっている。市内にはビッグバン(河北)や遊楽館(河南)といった一定規模以上のホールを備えた施設があり、その2カ所と比較すれば確かに近い。ただ、まきあーとテラスは公共交通機関のアクセスも少なく、周辺に駅もない。利用するためにはマイカーなどの移動手段を確保することが条件の一つとなってしまう。

 大ホール、小ホール以外の空間を有効に活用するには、規模の大きさも一つの課題。利用できるスペースが多い分、それだけ複数の団体が同施設を利用していかなければならない。三浦課長は「まだ開館して1年。市民の皆さんに施設の使用感などを知ってもらいたい。ノウハウや経験を蓄積することで、より多くの人に利用される施設にしていかなくては」と話す。

 季節が一巡し、もうすぐ2年目に入る。巨大な文化施設の真価は、これから問われることになる。

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執筆担当者:渡邊裕紀記者
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