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回れ支援の輪~災害ボランティアバス体験記~(下)

 石巻圏域2市1町の社会福祉協議会による能登半島地震被災者支援ボランティアバスは6月28―30日、石巻市と石川県志賀町を往復した。作業は主に、被災民家からの壊れた瓦や塀の運び出し。健康なら誰でもできる内容であり、私も微力を尽くした。支援の輪がうまく回れば、復旧復興は早く進むと願いたいが、個人で足を運ぶのは移動を含めて体力、費用の面でも大変。バス運行は良い動機付けになった。【熊谷利勝】

 運行費は各社協が負担し、高速料金は災害ボランティア車両のため無料。食事は各自調達する必要があるものの、参加者は2泊分の宿泊費1万5千円で参加できた。参加にはボランティア保険への加入が必須であり、私は石巻市社協で年度末まで有効な保険(670円)を申し込んだ。

 持ち物リストをもらい、事前に作業着店やホームセンターを回った。購入したのは長袖のシャツ、ズボン、丈夫なゴム手袋、冷やせるタオル、安全メガネ、貴重品を収納するウエストバッグ。雨具、長靴も動きやすいものに買い替え、釘の踏み抜きを防ぐ靴の中敷きも用意し、締めて1万円以上の出費になった。

 ほかにマスク、帽子、健康保険証などを準備。これらと着替えを日帰り登山向けリュックサックに詰め込む。ヘルメットはなくてもよい話だった。入らなかったデジタル一眼レフカメラや長靴は手持ちにした。慣れた人はキャリーケース。被災地でガラガラ転がすのは想像できなかったが、宿泊先に置くことを考えればそれでよかった。

 活動当日の志賀町は晴れて最高気温28・4度。雨具は使わなかった。現地は震災の時のようなほこりっぽさはなく、目を保護する安全メガネも必要なかった。

助手席の松谷さん撮影の志賀町内

 どこでどんな作業をするのかは、当日、ボランティアセンターに行くまで分からない。持ち物リストに運転免許証はなかったが、車の運転が必要で、私と数人が民家と災害ごみの仮置き場を往復するドライバーになった。

 「事前準備は必要なこともあるが、気合は入れすぎない方がいい」と言うのは、志賀町で行動を共にした石巻市泉町の松谷将明さん(54)。震災時のボランティア経験がある〝先輩〟だ。

 「感謝を伝えたい」「恩返ししたい」はこちらの都合。やる気が空回りし、自己判断で相手が望む以上のことをしては迷惑になるという。経験者は皆、「相手の話を聞くことが大事」と口をそろえる。「がれき」も元はその家の人にとって大事な物であったりして、言葉に気をつけることを教わった。

 「(被災地が)気になったのなら、さらっと参加してみる事も大事」と松谷さん。結局、現地では、自分ができる範囲で望まれたことをするだけなので、もっと軽い気持ちでボランティアを始めていい。なにせ、新聞記者でもできたのだから。

 関心があれば、石巻市社協が年に数回開く災害ボランティア講座を受講するのも一つ。また、災害ボランティアとして登録することで、バスを運行する際に募集案内が届く。個人で動くのは大変であり、こうした機会を活用すると良い。
 助け合いが次の助け合いにつながりますように。回れ、支援の輪。


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