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「花園の夢と未来」 ②課題 祈りと日常の同居目指し

 「まちと震災の記録を伝え、生命のいとなみの杜をつくり、人の絆をつむぐ」―。石巻南浜津波復興祈念公園の基本理念を踏まえたうえで、人が集まる場になるかどうかが最大の課題だ。

 市民活動拠点でこころの森を運営するNPО法人こころの森の古藤野靖代表の脳裏には、広島平和記念公園の光景がある。そこでは市民が芋煮会を催したり、吹奏楽の練習に励む学生など思い思いに過ごす和やかな空気が流れていた。平和への祈りを捧げ、戦争を繰り返さないことを念じる公園で、こうべを垂れる人々とささやかな日常が同居する。南浜の公園もそうあってほしいと願うが、開場して1年余り。未体験の市民は多い。

 古藤野さんが力説する。「どんなきっかけでもまず一度来てもらって、知ってもらえば次につながる。そこから始まることもあるはず」。震災直後に「がんばろう!石巻」看板を立ち上げ、現在、参加型運営協議会の会長を務める黒澤健一さんも「フェス的なものもやっていいと思う」。もちろんタイミングややり方次第の条件付き。協議会では、イベント実施も含めて市民活動拠点の運営に加わりたい団体には、いつでも門戸を開放している。「どんどん参加して公園を育ててほしい」(黒澤さん)とのスタンスだ。

 伝承館を主に学習、研修の一環で来訪する団体にも期待がかかる。コロナ禍で訪問する側、受け入れる側がともに神経をとがらせる状況は相変わらず。ただ、前向きにとらえられるデータがある。協議会伝承部会の中川政治会長が専務理事を務める公益社団法人3・11みらいサポートがまとめた「2021年度震災伝承調査」(速報値)。それによると岩手、宮城、福島の30の震災伝承施設の昨年の来場者数は、前年比約12%増を示した。コロナ前には及ばないが悪いデータではない。オンライン語り部の数字も急拡大したことが判明した。

 手ごたえを感じた中川会長は「うまく人を呼び込んで交流人口を増やすことができる」と前向き。現在、協議会の公式サイトを立ち上げる計画で、中身を吟味中だ。制作中のサイトはかゆいところに手が届く優れもの。今後、大きな武器になりそうだ。【本庄雅之】




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