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「花園の夢と未来」 ⑤提言 市民の声 反映させよう

 ある日の石巻南浜津波復興祈念公園。西側のアスファルトの遊歩道では、石巻高校陸上部の3人が、黙々とトレーニングに励んでいた。車が通る心配がなく、障害物がないので安心して走ることができるという。

 別の日は「スマイル・ウォーク虹」のメンバー10人ほどが「がんばろう!石巻」の看板前で体操をしていた。フィンランド発のポールを使って歩く運動のサークル。代表の齊藤裕子さんは「震災で亡くなった人に思いをはせながら、命のありがたみを感じてみんなで楽しんでいます」。

 南浜の公園は、東京の明治神宮や広島平和記念公園のように大都市の中心部にあるわけではなく、気軽に立ち寄るのは難しい。それでも少しずつ認知が広がり、石巻市内や近郊から訪れる人は増えているようだ。

 問題は、みやぎ東日本大震災津波伝承館である。建物がガラス張りであることの弊害など使い勝手の悪さが指摘されてきた。一部改善されたが、まだ不十分との声もある。

 今年から運営業務に携わる公益社団法人3・11みらいサポートの中川政治専務理事は、さまざまな制約を踏まえたうえで「変えられるものは変えていきたい」と意欲的だ。新たな取り組みも模索中で、語り部が公園内を案内しながら回るツアーを実施できないか。語り部の育成も必要ではないか。追悼、伝承に係わる課題は山積みだ。

 市民活動拠点を運営する参加型運営協議会の伝承部会長でもある中川さんらが主導して立ち上げた伝承館の公式サイトが秀逸だ。教育旅行、企業研修、個人・家族向けなどメニューが細かく、石巻圏の見どころを絡めた内容は集客力を発揮しそう。どんどんバージョンアップしてほしい。

 4月にオープンした震災遺構、門脇小学校や民営の震災伝承施設MEET門脇との連携も必要だろう。本来グランドデザインされるべきことが置き去りにされてきた感が否めない。

 今後は、規制に縛られず否定ありきではなく、一つ一つ真摯に検討し、モアベターを目指してほしい。何より市民が声を上げ続けた先に、命を紡む花と森の公園が整っていくのではないだろうか。





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