安心安全な旅へ工夫必須 新システム 課題山積 通信環境、代替案にも着目
今月15-16日のМaaS(マース)実証実験「海街めぐり」モデルツアーは、トンガ諸島の海底火山爆発による津波注意報発表で1日目だけでやむなく中断された。それでも旅行実施前に船便のチケットを予約、決済を済ませて現地へ向かうという新たなシステムを試行できた。今後の課題を整理してみた。
まず、スマートフォンにアプリを取り込んでの予約・決済。これは画面の指示に従えば、それほど困難ではなかった。不明な点はスタッフにアドバイスを仰いだが、間違って購入したチケットをキャンセルして買い直す作業も無事完了。だが、スマホ慣れしていない高齢者には難しそうだ。
決済にクレジットカードの番号が必須。カードを持っていない人は使えない。これはネックになりそうだ。
また、石巻中央桟橋から田代島行きの船に乗る前に、スマホの画面をかざしてチェックされたが、紙の乗船券も渡された。船内ではさみを入れるというアナログ方式とのダブルスタンダード。モデルツアーの参加者を除けば、紙乗船券での方式なので、「混乱を招かないように」とのことだった。
デジタル方式に統一されれば便利この上ないが、JRやJALといった大手と違って地方の交通機関が、今後デジタルに全面移行できるかどうかは不透明だ。システム構築には多額の投資が必要だし、会社側が利点を感じなければ導入には二の足を踏むだろう。今回対象となった田代島、網地島、金華山に就航する船会社は3社。統一システムでなければ「便利」は共有できない。
また、田代島から鮎川浜へ向かう際、Wi-Fiがうまくつながらず画面表示できなかったツアー参加者もいた。JTB・Jネット東北の半田奈美さんは「紙の乗船券もあったので大丈夫だったが、つながらないと便利ではなくなる」。この問題はシステムの根幹にかかわる重要事項になる。
さらに船便は天候に左右されるケースもある。同行した石巻観光協会常務の阿部勝浩さんが「悪天候で欠航した時にどうするか。代替案を常に用意しておかないといけない」と言った15日夜、火山爆発情報が伝わり、現実のものになった。
ツアーのスタッフのほか、石巻市観光課から参加していた鈴木義彦課長も率先して情報収集にあたって善後策に万全を期した。鈴木課長は「田代島は石巻の人でも行ったことのない人が結構いる。身近なところにいいところがあるんだということを知ってもらいたい。鮎川の食も、ここで食べる価値がある。今回はコロナ収束後の準備段階ということですけど」とツアーのもう一つの狙いを強調した。
安心安全な旅行ができる日に備えて、関係各所の水面下の工夫はこれからが佳境だ。【本庄雅之】
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