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「老舗の底力と創意工夫」 ①現状 地盤沈下前に踏ん張る

新型コロナウイルスによるパンデミックは、東日本大震災の被災地にも容赦ない。収束の気配を漂わせたと思ったら、今度は「オミクロン株」という脅威が現れた。

 コロナ以前から人口流出、少子高齢化という地方都市の問題に直面してきた石巻では、地盤沈下が一層進みそうな気配だ。8月16日に立町商店街から「白松がモナカ本舗」が撤退したニュースは、石巻市民に少なからずショックを与えた。昭和46年の開店からちょうど50年。仙台市に本社を構える昭和7年創業の老舗の退場は、街なかから大きな灯りが消えた印象だ。

 長年店舗を貸してきた不動産賃貸業・秋田屋=石巻市立町=の5代目社長浅野太一郎さん(42)は「その時が来たかと思った。町にも大きい損失」と肩を落とす。贈答文化が廃れてきたことや商店街の活力低下にコロナが追い打ちをかけた形だ。

 コロナは、ほかのテナントにも影響を与え、秋田屋では飲食店の家賃を半分にするなど「痛み分け」でしのいでいるという。

 立町商店街と隣り合わせで、ランドマーク的な存在だった楽器店「サルコヤ」=石巻市中央=は昨年3月に閉店。今でも目立つ黄色いビルが郷愁を誘う。その向かいの旧商工会議所の跡地も更地になったままだ。

 浅野さんは、その更地が「せめてコンクリートの広場になっていれば」という。定期的な朝市やマルシェなどで人を呼び込めるのでは、というのだ。もちろんコロナ対策を講じたうえで。

 創業91年目の酒屋「四釜商店」=石巻市穀町=の4代目社長四釜壮俊さん(53)も「アクセスのいいところに広場がない」と嘆く。この2年中止を余儀なくされている日本酒ファンとの交流会を野外で開く構想を持っているが、適当な場所が見当たらない。

 コロナ禍の世界に覆われてほぼ2年。それぞれが壁にぶつかりながらも石巻の老舗は知恵を絞って、しぶとく生き抜いている。

 「俺の代で潰したらご先祖様に申し訳ないと常々思っている。毎日仏壇に手を合わせてますよ」と冗談交じりに話すのは、料理屋「松竹」=石巻市中央=の14代目社長阿部久利さん(49)。江戸時代から長く旅館を営んできたが、時代の波に洗われ、昭和51年以降料理の世界に専念してきた。

 震災当時と比べて今回のダメージをどう受け止めているのだろうか。「あの時は痛めつけられたけど、やれば結果がついてきた。今は手足が縛られて、なんか頑張れない」のが実感という。が、しっかり手は打ってきた。




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