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「堤防と水辺空間」 ④展望 まち盛り上げる機運を

 好景観の堤防空間ができたことと、それを地域活性に生かすこと、その展開に地域の参画とアイデアが欠かせないことは重ねて強調してきた。「また来たい」と思える場所なら観光客も市民も自然に集まる。空間のエリアマネジメントを行う㈱街づくりまんぼうは、面白い発想を持った人に積極的に堤防空間を活用してもらえるよう呼び掛け、特に若い世代の参画を歓迎している。

 若者の自由な発想で居心地の良さと楽しさを追求した例に、石巻専修大学経営学部の庄子真岐教授ゼミの取り組みがある。ゼミ生たちは竹灯籠の光でまちの復興を内外に発信する「竹こもれびナイト」と題した催しを先月、堤防空間とかわまち交流センターで主催。屋内外に500基の竹灯籠を飾り、堤防空間には竹製の大型オブジェも多数置いた。川辺ではたこ揚げ体験や移動販売車も出店するなど、親子で楽しめる場の創造を意識した。

堤防での長居を考えた「こたつ」。大学生のアイデアだ

 特筆すべきは堤防空間にたき火やこたつを設置したアイデア。「寒空でも来場者が長居できるように」との発案で、石巻観光協会の阿部勝浩常務も「ありそうでなかった考え。冬場の集客に使える」と舌を巻いた。

 ゼミ長の佐々木優衣さん(21)は「堤防に足を運んだ人が幸せを感じられるよう内容を仲間と話し合い、『また来たい』と思える企画を詰め込んだ」と話す。石巻観光ボランティア協会の齋藤敏子会長も竹灯籠の光の演出を賞賛し、「冬にこの堤防をイルミネーションでいっぱいにして点灯してもいいね」と展望した。

 だが、こうした催しが開かれるのは大抵休日で、平日の人はまばら。観光地的に人を集めるには「いつ来ても楽しい」と思える日常的なにぎわいが重要であり、それができれば、市街地の飲食店などにも客足が流れるだろう。

 齋藤会長は「駅から商店街を経由して堤防まで歩く道のりにも日ごろから活気がほしいところ。観光客にとってはまちなかのにぎわいも一つの魅力になる。だからこそ地域一体でまちを盛り上げる気持ちが大切だ」と語った。

 堤防空間は地域活性の大きな武器になるが、当然それだけでは理想的なまちづくりは望めない。そこを活用する人と地域住民の活気がかみ合わなければ継続的に人を呼び込むことはできない。逆に言えば、まち一体で盛り上げる機運があれば、市街地活性の近道になるだろう。【山口紘史】


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