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【潜入取材】〝萌え〟非日常を体験 矢本駅前にメイドカフェ 石巻地方初出店・地域盛り上げ

 「お帰りなさいませ、ご主人様」―。勇気を出して店に入ると、フリフリの衣装に身を包んだメイドが甘い声で優しく出迎えた。ドリンクを注文すれば〝おいしくなる〟呪文をかけ、オムライスにはケチャップで似顔絵も描く。かわいらしく対応するメイドと会話を楽しみ、帰りは「いってらっしゃいませ、ご主人様」と送り出す徹底ぶり。石巻地方では初となるメイド喫茶が東松島市の矢本駅前に誕生した。

 「メイドカフェ萌キュン」(木村尚弘代表)は、昨年11月末に開店した石巻地方初のメイド喫茶。東京秋葉原を中心に全国に広がったコスプレ系飲食店の一つであり、漫画やアニメなどのサブカルチャーを取り入れ、店員はメイド(給仕)服のコスプレをして接客をするのが特徴だ。

 「東松島にメイド喫茶ができた」との情報が広がり、取材をしてほしいとの依頼も石巻日日新聞社に寄せられた。そこで「萌キュン」に潜入取材を試みた。

 店の扉を開けると女性4人が「お帰りなさいませ、ご主人様」と声をそろえ、笑顔で迎えてくれた。客は、この店の主(あるじ)になる設定。「入店=主の帰宅」「帰り際=主の外出」となるそうだ。

 アニメソングが流れる店内は、バーカウンターとテーブル席で構成。席に着くとメイドから一通りメニューの説明があり、ひとまずコーラ飲料とオムライスを注文。すぐに飲料が運ばれてきた。

 「では今からおいしくなる魔法の呪文を唱えるので、一緒にお願いします!」。言われるがまま私は自分の胸の前に両手でハートを作り、いつもより少し高い声で「おいしくな~れ萌え萌えキュン」と唱えた。

 顔から火が噴き出そうな言葉だが、不思議にこの店内では悪い気はしない。オムライスに似顔絵を描いてくれるサービスもあり、腕前は相当のものだ。

メイドカフェ 萌キュン

メイド服に身を包んだ女性たちが「ご主人様」の気分を味わわせてくれる(撮影時のみマスクを外しています)

 それぞれのメイドにキャラクターの設定があるのも興味深い。魔界からきた少女、インターネットから飛び出してきた妖精、矢本に不時着した宇宙人など細かな背景を踏まえて自己紹介。メイドたちの話しによれば、年齢は人間界換算で20歳代という。

 異世界空間に存在する「タシロ・アイランド」出身、たしろさんは秋葉原で経験を積んだベテラン。「コロナの影響で古里に戻ってきたとき、募集を見つけてすぐに応募した。楽しく話をして、元気を届けられる仕事であり、毎日が充実」と話していた。

 木村代表は市内で飲食店を経営していたが、「地域を盛り上げる新たな挑戦をしたい」とし、メイド喫茶経営の経験がある知人からノウハウを学んで開店にこぎ着けた。現在、約20人のメイドがシフト制で働く。

 木村代表は「秋葉原のような本格的なサービスを提供する店でありつつ、本場より低料金で楽しめる。誰でも気軽に足を運び、何気ない会話を楽しんでもらえれば」と話す。

 時間とともに抵抗感も薄れ、気付けば会話が弾んでいた。帰り支度、いやここは出支度というべきか。飲食代と入園料(入場料)、初回割引も入って1時間1700円ほど。秋葉原では、同じ内容で3千円を超える店もあるらしく安価は魅力だ。

 「いってらっしゃいませ、ご主人様」。徹底した接客にプロ魂を感じた。潜入の様子は動画投稿サイト「YouTube」の石巻日日新聞公式ページで公開中。【山口紘史】



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