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ヤギ40匹引き取り飼育 牡鹿観光・阿部社長ら厚意で 動物愛護法違反逮捕の男から

 41匹のヤギを劣悪環境で飼育し続けたとして動物愛護法違反の疑いで9月に逮捕、起訴された住所不定無職の池田直樹被告(55)。ヤギは行き場を失い、この状況を見かねた石巻市門脇の不動産建設会社㈱牡鹿観光の阿部忠昭社長(76)と同市北村の酪農家菅原庄治さん(65)は、全てのヤギを引き取った。阿部社長は逮捕に至った被告の背景をあわれみながら「被告の分までヤギに愛情を注ぎ、大切に育てたい」と語る。【山口紘史】

 愛媛県松山市出身の池田被告は、東日本大震災後に亘理町で復興ボランティアとして活動。津波をかぶった土地の雑草をヤギに食べさせ除去し、仮設住宅や保育所では住民とヤギのふれあい交流も催してきた。ヤギは当初3匹だったが、約9年間で41匹にまで増えた。

 そして今年9月、亘理署などは動物愛護法違反の疑いで、池田容疑者を逮捕した。同署によると、約80平方メートルのビニールハウスで41頭のヤギと約40匹の犬を飼育。ハウス内は約1メートルの高さでふん尿がたまり、狂犬病予防注射も怠っていた疑いもある。県保健所が何度も改善を求めたが、従わなかったという。

動物愛護法違反逮捕の男からヤギ引き取り飼育 牡鹿観光阿部社長

自社の太陽光発電用地でヤギを育てる阿部社長

 一方、かねてからの動物好きの阿部社長は同市北村に所有する自社の太陽光発電用地「天空の森」(約4万平方メートル)で雑草除去のために約20頭のヤギを飼育。知人で酪農家の菅原さんが飼育方法など助言をしている。

 逮捕の報道を聞いた2人は、留置場で同被告と面会し、ヤギを全て引き取ることを提案した。手放すことに難色を示した被告だったが、最後は承諾。阿部社長が16匹、菅原さんは25匹、犬は別の人が引き取ったという。

 「彼は逮捕前まで軽トラックで車上生活をしており、急激に増えた動物の管理費を工面しきれなかったのだろう」と阿部社長。「動物を飼うことは責任が伴う。劣悪環境で飼育したことは目に余る」としながらも、「実際に彼の言葉を聞き、ヤギをわが子のように思っていることも感じられた」と話した。

 引き取ったヤギは天空の森で放し飼いしており、起伏に富んだ広大な敷地の中には寝床になる温かな小屋も数カ所あり、ストレスとは無縁の環境。餌やりも阿部社長が毎日欠かさず行う。

動物愛護法違反逮捕の男からヤギ引き取り飼育 牡鹿観光阿部社長 (29)

勢いよくエサを食べるヤギたち

 先住のヤギたちは気にもしていないようだが、新入りたちはまだ警戒心を解いていない様子。阿部社長は「時間をかけゆっくりと慣れさせていきたい」と見守る。

 後日、被告から2人に手紙が届いた。そこには面会に来てくれたことや、ヤギを引き取ってくれたことへの感謝がつづられ、「軽トラではなく、留置場の布団で寝る生活に慣れてきた」という一文も記されていた。

 自宅の牧舎で牛やニワトリとともに飼育している菅原さんは「彼はヤギを〝家族〟と言った。きっと子を泣く泣く手放す親のような気持ちだったはず。良い環境を提供するため、責任を持って育てたい」と話していた。


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