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次代への軌跡「新文化創造」②現状 演劇を市民の娯楽に

 石巻市内で活動する市民劇団「スイミーはまだ旅の途中」は、平成26年に行われた公演がきっかけとなり、27年1月に発足した。現在は30人ほどが所属する。代表の町屋知子さん(30)は、22年に青森県から石巻市に移住した。被災後も趣味で演劇を続けている。

 町屋さんは「演劇が週末に見られるというような気軽に芸術文化を楽しめる街になってくれれば」と話す。稽古場とするのは、地域の公民館や集会所、市かわまち交流センターなど、安価で使える場所を使う。

 市内には複数の市民劇団があり、28年からは各団体協力で「いしのまき演劇祭」がスタートした。同市中央の旧観慶丸商店やイロリ、住吉町にあるクリエイティブハブなど、市内の小規模スペースを活用し、期間中の毎週末、演劇を届けるといったイベントだ。

 小さな空間ゆえ、1カ所当たりの収容人数は10―20人だが、期間中は延べ500人ほどが足を運び、舞台上で繰り広げられる芝居を楽しんだ。すでに6年も続く行事で、徐々に認知も広まってきた。

 町屋さんは「私たちのような小さな団体は、大きな施設で公演してもたくさんの人を呼び込むことは難しい。小規模施設は小回りが利き、経費も少なくて済む」と話す。市内にはマルホンまきあーとテラスといった新しく大きな複合文化施設があるが、やはり周辺に駅がないなどアクセス性がネックという。

 「中、高校生などを巻き込もうにも、まきあーとまでのアクセスは主に徒歩や自転車になる。それではさすがに遠すぎるので、駅があって徒歩でもたどり着ける中心市街地のほうが利便性は高い」と町屋さん。

 石巻市内では音楽イベントの「トリコローレ音楽祭」があり、オープンな場所で奏でられる音楽は誰もが気軽に参加し、聞き入ることができる。16年から続く音楽祭は、すでに市民に定着した恒例のイベントだ。

 演劇祭も目指すのは多くの人が参加し、多くの人が楽しむイベント。まずは興味を持つ人たちを増やしていくことが当面の目標という。演劇体験やワークショップを通じて地道に盛り上げ、少しずつでも週末に芝居が見られるという環境構築を目指していく。

 今、このまちなかで何ができるか。演劇界隈の若い役者たちは可能性を探りながら文化の発信に熱い思いを込める。【渡邊裕紀】

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執筆担当者:渡邊裕紀記者
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