石巻市追悼行_サムネイル事

形違えど思い変わらず 2市1町追悼行事縮小 それぞれの場所で祈る

 平成23年の東日本大震災から9年となった11日、石巻地方の各地で午後2時46分の発生時刻に合わせた犠牲者への黙とうがささげられた。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ対策で自治体主催の追悼行事が縮小、短縮となったほか、民間も多くが自粛。それでも形にこだわらず、思い思いの場所で祈りをささげ、復興と記憶の伝承を誓った。【熊谷利勝、山口紘史、横井康彦】 

【石巻市】 式典中止 献花で哀悼

 石巻市の追悼式は、ビッグバンで規模を縮小して献花のみ行われた。訪れた人は白いカーネーションを手向け、目を閉じて亡き人の面影を思い浮かべた。
 ビッグバンでは午後1―4時に受け付け、市によると450人が献花した。発災時刻には行政、議会関係者や市民約80人が黙とうし、亀山紘市長に続いて順番に献花台に歩を進めた。亀山市長は取材に「形よりも気持ちが大事だが、教訓を伝えるためにも式を続けたい」とし、市民に寄り添う姿勢を示した。

石巻市追悼行事

手向ける花にさまざまな思いを込めた(石巻市)


 献花者のうち、大川小で5年生と2年生の孫を亡くした針岡の女性(72)は「遺族の慰霊祭が中止になったので初めて来た。心の中の面影は変わらないが、よその子を見ると孫もその年頃になっていただろうと思い、会いたくなる」と心の内を語った。献花場は同会場を含む7カ所に設けられ、計1914人が追悼した。

【東松島市】 県内唯一の式典挙行

 東松島市は県内で唯一、式典形式の追悼式を行い、会場の市民体育館に約350人が参列した。全員にマスク着用と手指のアルコール消毒を求めたほか、席間隔を例年より広く確保。来賓あいさつを省いて時間短縮するなど新型コロナウイルス対策を徹底した。
 渥美巖市長は「震災を後世に語り継ぎ、風化させないことが責務」と式辞。遺族を代表し、夫を亡くした同市あおいの雫石かほるさん(71)が「復興が進み、以前の生活に戻った感はあるが、今も心に不安を抱えている人もいる。一日も早く落ち着いた生活ができることを祈る」と述べ、花を手向けた。

※洋トリミング 東松島市追悼行事 (41)

遺族代表の言葉を述べる雫石さん(東松島市)


 一般参列者も次々と献花。津波で義妹を亡くした相沢のぞみさん(32)は「生きていれば母親になっていた年頃。優しい子なので、天国から見守ってくれていると思う。献花できてよかった」と話していた。

【女川町】慰霊碑前で海へ合掌

 女川町では追悼式の式典を中止とし、役場に設置された震災慰霊碑前と町総合体育館の2カ所に献花場所を設けた。慰霊碑前では遺族らが石に刻まれた故人の名前のそばで献花し、手を合わせた。
 午後2時半過ぎに行政無線で須田善明町長が「震災がなければ、多くの方が同じ時を過ごすことができていた。それぞれの場所で追悼の祈りをささげてほしい」と呼び掛けた。発災時刻に合わせてサイレンが鳴り、慰霊碑前やシーパルピア女川から海に向け静かに合掌する人の姿があった。

女川追悼行事

故人の名が刻まれた慰霊碑前で献花(女川町)


 大原地区に住んでいた母親の佐々木えつ子さん(享年60)や親せき5人を亡くした千葉美恵さん(39)は「震災前まで、母親と毎日電話で話していた。もう9年も話していないのかと思うと時間の早さが際立ち、変わらない寂しさに何とも言えない気持ちになる」と慰霊碑を見つめていた。

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