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暮れゆく令和4年 あすへ延びる〝命の道〟 「ありがとう」があふれる社会に

 東日本大震災では被災各地で交通渋滞が起き、車列ごと津波に流され、たくさんの尊い命が奪われた。車社会を襲った国内初の大津波災害だった。一方、脇道を抜け、勾配によって救われた命もあった。道路1本を隔てて運命が分かれた箇所がいつくも存在した。

 復興が進む中、高盛土構造の道路が被災地を縫うように延び、堤防の役割を持たせる多重防御が整った。いつしか、こうした復興道路は「命の道」と呼ばれるようになった。今年3月、石巻市の沿岸部を通る都市計画道路の門脇流留線が全線開通し、南光湊線の一部である石巻かわみなと大橋も開通。東西沿岸部が高盛土道路でつながった。

 平成24年の事業着手から10年かけ、ついに石巻市と東松島市を結ぶ地域交流と物流、災害時の避難、救難ルートが完成した。それは復興で強靭(きょうじん)化された街の中を走る動脈にも見えた。

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 きょうも西の空に日が沈み、街がオレンジ色に染まる。この瞬間に立ち会えただけで幸せに感じる。美しさははかなく、夕日を見て切なさを覚えるのはそのせいか。夕焼けは一日の終わりを告げ、夜のとばりが降りるころには心地よい眠りにいざなう。次に目を覚ました時には新しい朝が広がっている。

 コロナ禍の生活が常態化し、基本的な対策は続いているが、いずれ収束に向かう。その日は必ず来る。でもそれはコロナ以前に戻ることではない。苦難を経験する中、私たちは人とのかかわり、寄り添いの大切さに気づいた。

 日常は誰かの〝おかげさま〟で支えられている。何事も「当たり前」ではなく、ありがたいと感じる優しい心が「ありがとう」の言葉を引き出す。迎えるあしたも、ありがとうであふれる1日でありますように。【外処健一】





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