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新手法「採りっきり栽培」拡大 東松島産アスパラガス 挑戦3年目 産地化前進

 高収益作物として知られるアスパラガスの栽培が、東松島市を中心に広がりを見せている。通常は収穫まで2―3年かかり、病害虫対策など手間もかかるが、明治大学が開発した1年で収穫する新しい手法「採りっきり栽培」を広げるため、県ではアスパラガス研究会を立ち上げ、東松島市で農業者を対象にした栽培講習会を開いている。産地化に向けた取り組みは3年目を迎えており、地域の新しい特産品として期待されている。

 アスパラガスは北海道が一大産地で、4月初めから8月ごろまでが市場に最も出回る時期。県内ではこれまで注目されてこなかったが、県東部地方振興事務所の石巻農業改良普及センターでは、令和2年度から生産力向上を目的する「アスパラガス研究会」を立ち上げ、栽培管理勉強会を開催している。

 アスパラガスは春に収穫する露地栽培が一般的で国産需要が高く収益も見込めるが、本格的な栽培まで時間を要し、手間も多い。そうした中、平成28年に明治大学が新しい安定生産方法「採りっきり栽培」を開発し、定植してから1年での収穫が可能になった。

今年収穫したアスパラはJAの直売所とフレスコキクチで販売している

 東松島市矢本の(株)パスカファーム立沼(佐藤正社長)では、研究会の発足当初からアスパラガスの「採りっきり栽培」による露地栽培を始め、3年目を迎えた。約5アールの農地では、6月末まで収穫と出荷が続くという。

 冬場に苗を作り、4月に定植すると翌年には収穫できる。通常は全て取り切らず、翌年また同じ株で収穫を行うが、「採りっきり栽培」では全て取り、そこにまた新たな苗を植えるサイクルを繰り返していく。

 佐藤社長は「手入れは手間だが、朝採りして新鮮な作物をその日に販売できる利点は大きい」と話す。市場からの引き合いもあり単価も高いほか、高鮮度で消費者からの評判も上々という。

 同社ではアスパラガスの苗も販売し、地域で生産拡大も担う。現在は市内で約20人が栽培をしている。しかし収穫時期はちょうどコメ農家にとって繁忙期と重なるため、いかに両立できるかが課題という。佐藤社長は「地場産アスパラガスは地域ニーズも高い。特産化はまだまだこれからだが、新しい栽培方法が根付き、一大産地になることを期待したい」と話していた。

 同センターではJAなどと協力し、今後もアスパラガスの栽培普及に向けた勉強会を開催。特産化を視野に入れ、来年度までに石巻地方で1㌶の作付けを目指す考えだ。【渡邊裕紀】





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