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福島県沖地震から1カ月 石巻地方で爪痕深く 一部公共施設で休館続く

罹災証明申請1163件

 石巻市、東松島市などで最大震度6弱を観測した福島県沖地震から16日で1カ月となった。今も公共施設の利用休止が生じ、商業施設も休業、部分営業が続くなど深い爪痕を残した。住家の罹災証明書の申請は2市で計1163件となっている。

 石巻市は、14日現在で罹災証明書発行にかかる773件の申請を受け付けた。地区別は旧市435件、河南196件、桃生95件、河北31件、牡鹿13件、雄勝2件、北上1件。発行済み315件の内訳は半壊4件、準半壊6件、一部損壊305件。県まとめ(8日現在)では、市内ではけが人は4人という。

 公共施設では、おしかホエールランド=鮎川浜=で鯨の骨格標本などが被害。復旧のめどは立たず休館が続いている。国指定名勝の齋藤氏庭園=前谷地=も休園中で、倒れた複数の石灯籠を元に戻し、近く再開予定だ。

 市道は4カ所で通行止めとなり、落石のあった佐須は復旧作業が進む。広渕は2カ所の橋に段差ができた。漁港や農地、水路でも被害が報告されているものの、荷揚げや生産ができなくなるほどではないという。

 商業施設にも被害が出ており、イオンモール石巻=茜平=2階の未来屋書店も休業が続いている。店担当者は「5月中旬の再開を目途にしているが、まだ未確定」と話していた。

書籍整理は進んだが天井は被災当時のまま(東松島市図書館)

 東松島市は骨折など人的被害3人、住宅被害に伴う罹災証明の申請は11日現在で390件。発行済み256件の内訳は準半壊13件、一部損壊243件。公共施設は道路が57路線91カ所、建物は小中学校、図書館、コミュニティセンターや地区センターなどでひびやゆがみが確認された。

 産業は大曲地区で農地の液状化や揚水機場の一部が損壊。農地海岸では護岸ブロックの段差、堤防や潮受水路の沈下も見られ、漁業施設でも物揚げ場にすき間が生じた。

 今も復旧が続く図書館は、つり天井が湾曲し、一部が落下。本棚も壊れ、13万冊あった書籍の9割が落下した。生涯学習課は「東日本大震災時に匹敵する規模」という。外観から被害はつかめないため、市報で被害状況が示されるまで「いつ再開するのか」との問合せが相次いだ。

 14日の臨時議会で復旧費も付き、修復工事が進めば再開のめども立つ。冨士原郁子館長は「1カ月かけて図書整理を進め、ある程度棚に本を戻すことができた。ただし天井の修繕などはこれから。安全が確保されるまでもうしばし時間を」と理解を求めていた。

 女川町内では、女川温泉ゆぽっぽでガラスの破損などが確認されたほか、一部地域で道路の亀裂や民家のブロック塀が崩れた。町では、罹災、被災証明は発行していない。ゆぽっぽについては、改修工事を経て8月半ばごろの再開を目指すという。【取材班】


「自分の身守る」浸透せず 福島県沖地震の行動
3人に1人家具押さえ

 福島県沖地震(3月16日)の行動を分析した民間調査機関のまとめでは、深夜帯の発生で回答者の9割が自宅におり、地震の最中は家具を押さえたり、様子を見たり、家族や周りの人に声を掛けた人の割合が高かった。安全な場所で身を守った人は16.1%にとどまり、まず自分の身を守る行動が十分に浸透していないことが浮き彫りとなった。

 調査は(株)サーベイリサーチセンターが実施し、東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授が監修した。調査は宮城、福島、東京の1都2県でインターネットを通じ、各500人(年代、男女別に各50人)から回答が得られた。

 調査では昨年2月13日にあった福島県沖地震との比較も示しており、石巻市は前回、今回とも観測は震度6弱だった。前回は「その場で様子をみた」人が多かったが、今回はこの割合が減り、逆に3人に1人が家具などを押さえたりしていた。何度も地震を経験している地域でも家具の固定化が進まず、身を守る行動が浸透していないことも分かった。

 浸水リスクのある地域では約8割が「津波が来るかもしれないと思った」と回答。避難行動は自宅などその時いた場所が9割を占め、佐藤准教授は「津波注意報の予想高さが1メートル以下の発表にとどまったのが大きな原因」と分析した。

 自宅への被害は①高いところの物が落下した(49.3%)②家の壁にひびが入ったりはがれ落ちた(22.7%)③家の中のタンスや本棚が倒れた(23.4%)が上位。ライフラインの停止は宮城、福島両県はガス、停電、断水のいずれも発生しているが、東京都は停電に集中した。

 備えが役立ったものは懐中電灯が圧倒的に多く、次いでペットボトル飲料、モバイルバッテリー、風呂水(くみ置き、残り湯)、スマートフォン・携帯電話が上位。備えの不足は水・飲料、明かり、非常用電源、トイレ、食料となった。

 一方、災害への備えでは①食料・飲料などの備蓄②車のガソリンのこまめな給油③携帯ラジオ、懐中電灯などの用意④地震保険への加入⑤非常持ち出し品の用意⑥家具の固定⑦ハザードマップでの危険確認⑧風呂にいつも水を入れておく⑨家族との連絡方法や落ち合う場所⑩マスク、消毒用品、体温計などを持ち出す用意―となった。

 自由記述では「備えの必要性を改めて感じたが、何をどの程度備え、対策や行動の具体化など分からない点もあった」「震災意識の希薄化や油断も見られた」「コロナ禍での避難の難しさ」を感じた人もいた。【外処健一】




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