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県漁協「海洋放出は断固反対」 福島第一原発処理水 阻止求め知事に要望書

 東京電力福島第一原子力発電所で発生する放射性物質を含んだ処理水を巡り、県漁業協同組合(丹野一雄経営管理委員会会長)は15日、県庁と県議会を訪れて「海洋放出断固阻止」を国に求める要望書を村井嘉浩知事、石川光次郎議長に提出した。海洋放出されれば、東日本大震災から立ち直ってきた地元水産界への風評被害が懸念され、丹野会長らは「絶対に受け入れられない」と強調。村井知事も「力を合わせて取り組み、国に意見を伝える」と答えた。【渡邊裕紀】

風評被害の再燃懸念

 震災後は福島沖の海域で規制値を超す放射性物質が検出され、一時7魚種の出荷制限や出荷自粛、現在も韓国の禁輸措置があり、今年は新型コロナウイルスの影響で魚価低迷も重なった。これらを踏まえ、要望書では再び風評被害が起きるとし、処理水の海洋放出阻止を訴えた。

 今年はコウナゴなど春漁の不調、ホヤへの貝毒発生も追い打ちをかけており、放射性物質を含む「ALPS(アルプス)処理水」の海洋放出は漁業者にさらなる痛手となる。丹野会長は「震災から9年かけ努力してきたことが水の泡になる。二度と風評被害がないように海洋放出は断固反対する」と要望書を手渡した。

原発事故処理水 海洋放出阻止へ県に要望書提出 (15)a

丹野会長が村井知事に要望書を手渡した

 村井知事は「国にALPS処理水について説明を求め、水産関係者の皆さんが納得いくように県民の代表として、声をしっかり伝えていく」と語った。県議会は、今年3月に国に対しALPS処理水の自然界放出に反対する意見書を提出しており、石川議長は「処理水放出は県水産業に大きな影響を与える。議論を重ね、国に働きかけたい」と述べた。

 福島第一原発事故で発生した放射性物質を含む汚染水は、ALPS(多核種除去設備)で処理し、トリチウム以外の62種類の放射性物質を取り除く浄化処理が行われている。5月21日現在、1千基を超える貯蔵タンクがあり、約120万トンの処理水が貯蔵され、今も増え続けている。

 国は有識者による小委員会で、ALPS処理水は基準を満たした上での海洋放出、高温水蒸気での大気放出が現実的であり、海洋放出がより確実に実施できるとの報告書を公表した。これに対し宮城県、福島県、茨城県などの沿岸漁業者は風評被害が強まるとし、断固反対を表明している。


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