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「牛タン自販機」石巻進出 低価格で専門店の味

 冷凍牛タン、焼肉の自動販売機が13日、石巻市内に初めて登場した。14日午前7時から稼働する。コロナ禍で注目を集める非対面の販売形式であり、この牛タン自販機は仙台市で拡大しているが、販売代理店である㈱かね久=仙台市若林区卸町=の遠藤伸太郎社長は石巻市出身。「どうしても古里に設置したかった」と話す。その原動力は震災直後に行ったアンケートだった。

きっかけは10年前のアンケート

 食品加工、卸販売の(株)バリューライフ=仙台市若林区=が展開する事業。コロナ禍で泉区の居酒屋「牛たん伝説和顔(わげん)」が休業に追い込まれ、新たな販売手法を探る中で自販機での非対面に着目した。販売代理店は食料品総合卸売業のかね久が担い、設置台数を増やしている。

note用牛タン自販機設置 (17)

牛タンのほか、ハラミやホルモンなどメニューも充実

 今夏、第1号を設置したところ、SNSで注目の的。かね久前では飛ぶように売れ、遠藤社長は「専門店の味が低価格で楽しめるとあり、リピーターがとても多い」と話す。

 仙台市に設置が進む中、目を向けたのは市外。16、17台目は親交のある味噌醤油醸造販売元、山形屋商店(山形政大社長)=石巻市門脇町=の店舗前と同市双葉町のコイン洗車場前の2カ所に置くことが決まった。門脇町は周囲に店がなく、買い物難民が多い。「気軽に食料品が買えるようにしたい」という山形社長の思いと一致した。

牛タン自販機

自販機が設置された(カーピカランド双葉前)

 商品は「極芯牛たんうま塩」「極芯牛たんうま味噌」が各125グラム入りで各1千円、「牛たん切り落とし塩檸檬(れもん)味」(240グラム)、「牛たん切り落としねぎ塩味」(同)、「牛ホルモンねぎ塩味」(260グラム)、「牛ハラミ塩」(220グラム)が各500円の計6種類。3社連携でそれぞれの強みを生かし、石巻市までの流通コストを下げることで販売価格も仙台市と同額料金とした。

 企業努力で価格を据え置いても石巻に置きたい理由があった。遠藤さんは震災直後、渡波地区の4カ所で炊き出しを行い、記述式で食べたいもののアンケートを取った。1位はダントツで牛タン。逆に食べたくないものの上位はパン、おにぎりだった。

 遠藤さんは「パンなどは支援物資で毎日のように届いたころ。逆にやや高価な牛タンを食べたいという声が多かった」と話す。石巻でいつでも牛タンが食べられる。そんな日常を思い描く中、震災10年目でついに実現させることができた。【外処健一】



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