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「新規就農と施設園芸」 ④展望 スマート農業の可能性

 発展目覚ましい情報通信技術を使った「スマート農業」も進んでいる。石巻市北上町で次世代施設園芸に取り組む㈱デ・リーフデ北上、東松島市赤井でイチゴなどを栽培する㈱イグナルファームなど大規模な施設園芸で活用され、ハウスの温度や湿度など環境を自動制御するシステムで省力化を図っている。

 同市赤井では、産業用太陽光発電などを手掛ける企業が震災後の耕作放棄地にハウスを建て、メロンの水耕栽培に挑戦しており、施設園芸は異業種から農業へ参加しようという動きも見られている。

 個人でスマート農業に挑む人も増え、石巻市北村の星名大地さん(43)もその一人。令和2年に「㈱DannyFarm」を立ち上げ、ナスを栽培するハウスにIoT(モノの情報通信)技術を取り入れた。

 温度や湿度、水やりが全て数値化され、手元のスマートフォンで確認、制御できる。ハウスを離れていても状況が分かり、自動制御のほかに手動で数値を変えることも可能なため、栽培に適した環境を維持しやすい。

 遠隔制御で生まれたゆとりは、他の作業に充てられるため、マンパワーの不足を機械が補ってくれる形だ。ただ設備そのものに癖があり、それを把握するのに情報の蓄積は不可欠。星名さんは「土耕でのスマート農業は土の状態まで制御できない。こればかりは自分の目で見て、何が適切かを経験していくしかない」と話す。

 約5千万円の設備投資。県のモデル事業で支援を受けたが、それでも2千万円以上は自ら賄った。星名さんは「戦渦の影響で資材が高騰しているため、今やろうとすれば倍の費用が掛かる」という。スマート農業とはいえ、経験や設備投資などでハードルは高い。

 若い農業者の中には、中古のハウスを購入して施設園芸を始める人もいるという。高齢でハウスを維持しきれなくなった農家が手放すためだ。「石巻市では新規就農に対する補助が他地域に比べて少ない。初期費用の掛かる農業では、格差を感じてしまう」と話す。

 スマート農業は農家の負担軽減につながるが、燃油や資材、電力などかかる費用も大きい。就農を目指すならやはり大きな投資が必須になってくる。


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