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「老舗の底力と創意工夫」 ④展望 新しいプランで現状突破

 コロナ禍で団体客が見込めなくなった日本料理店「大もりや」では、年明けにも新メニューで攻めの姿勢に転じる。原点だったそば、うどんに立ち返り、究極のそばで勝負する。

 「太麺の田舎そばではなく、いろんなそばの実を試して、一番香りのいい細麺そばのしゃぶしゃぶを提供したい」。5代目社長の大森信治郎さんが秘策を明かした。都内の店の視察を済ませ、研究は仕上げの段階だ。

 さらに、仲間の提案を受けて石巻地方の特産品、穴子を大々的に売り出す計画もある。水揚げ日本一になったこともあり、首都圏の有名すし店や料亭などで石巻産の穴子が重宝されているのは、水産関係者の間ではよく知られている。地元でほおっておく手はないというわけだ。

 うなぎより安く、てんぷらや白焼きなど食べ方も多彩。飲食店の連携で、石巻の新たな特産グルメに育てば集客も見込めそうだ。

 もう一つ、先をにらんだプランがある。休眠状態になってしまった3階のホールの使い道だ。知り合いの仙台のジャズクラブのマスターに相談したところ意気投合。バンドのライブを模索している。エンタメと食事を楽しんでもらい、まちの活性化につながれば、言うことなしだ。

 不動産賃貸の秋田屋の5代目社長浅野太一郎さんは、これまで目を向けてこなかった仙台圏まで守備範囲を広げようか検討中だ。「コロナ禍だからと言って、今ある物件を売ればいいという話でもないし、こんな状況で売れるわけがない」。目下、コンサルタントと策を練っているが、実は全く異業種にも興味を示している。

 それが「ひなびた居酒屋」だ。秋田市を訪れた際、年配の亭主が一人で営む、いかにもぶっきらぼうだが居心地のいい昔ながらの居酒屋を体験。「この世界観が石巻に合うんじゃないか」とひらめいたという。

 石巻は酒が豊富だし、肴(さかな)は文句なし。あるようでなかった気軽な立ち飲み屋があれば、話題になりそうだ。

 夢の構想は、経営的に起死回生の策と言えなくても、新しいイメージは打ち出せる。さらに、最近注目されている空き家のリノベーションにも大きな関心を寄せる。この分野で注目を浴びる(株)巻組をライバル視するわけではなく、自社所有の物件にチャレンジングな申し出があれば、いつでも相談に乗るつもりだ。

 立町の自宅奥にある蔵も、来年には再稼働させる考え。展示会などに利用してもらえば、人の流れを産み、商店街への呼び水にもなる。【本庄雅之】


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