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復興バス旅 石巻発未来行き㊤

中心部巡るツアーを体験

 大津波が襲い、沿岸部に甚大な被害をもたらした東日本大震災から12年8カ月。最大被災地とされる石巻市は9日、国の復興交付金など復興財源を活用した新しい街の基盤整備が完了したとして、関係者を招いて支援に感謝を示す「復興事業(基盤整備)完結式典」を開いた。市民が参加できる記念イベントも開催され、音声解説付きの「復興めぐりバス」が中心部の2コースを定時運行。無料で乗れたこのバスで、車窓から被災地の今を見た。

 石巻駅前から1号車の始発便に乗る。20人乗りマイクロバスはすでに多くの席が埋まっており、最後部席の窓際に腰を下ろした。駅前を出発したバスは北に向かい、開北橋を通って国道398号石巻バイパスを西に進む。程なく事前に収録された音声アナウンスが、最初の停車地であるマルホンまきあーとテラス到着を告げる。

 開成地区の同テラスは、震災後使用不能になって解体された文化センターと市民会館の代替として、建設された複合文化施設。大小のホールや博物館があり、車内放送は「新たな文化芸術活動の中心としての役割を果たすシンボルとなっています」などと紹介した。

トンネルを抜けるとそこは渡波の市街地。このコースの一番のハイライトだ

 バスは平成30年度に開通した同バイパス大瓜工区を東進し、稲井中学校手前の交差点から令和3年にできた渡波稲井線を南下。山に向かってぐんぐん登り、長さ698㍍のトンネルを抜け切ると、海を背にした渡波地区の市街地の風景がぱーっと眼下に広がった。

 山で隔てられた両地区の行き来がしやすくなったのは、復興のたまもの。避難道でもある。しかし、昨年の津波注意報時には車の渋滞で機能不全に陥っており、「徒歩避難」の原則と絡めても災害時の活用が課題だ。

 並行する石巻線を偶然、1両の列車が走る。コロナ後は1両編成も珍しくない。道は震災で移転を余儀なくされた人の移転先として、水田地帯に整備された新市街地のさくら町を経て国道398号に突き当たる。国道沿いの旧市立女子商業高校と渡波中学校跡地では今年、パークゴルフができる健康づくりパークの整備工事が着工。復興財源を活用した震災後の基盤整備は完結を見たが、他の財源を使った建設事業は今後も続く。

市立女子商業高校などの跡地では健康づくりパークの整備が始まっていた

 国道から門脇流留線を通り、湊中央線に入る。いずれも堤防の機能を持たせた高盛り土の道路。これより陸側は人が住める可住区域、海側は非可住の産業用地となった。車内放送では長さがギネス世界記録となった新しい魚市場の紹介があった。

 日和大橋の上流に昨年開通した石巻かわみなと大橋を越え、伝承施設の石巻南浜津波復興祈念公園と震災遺構門脇小学校、中央地区で地場産品を扱う観光交流施設のいしのまき元気いちば前に停車。車内放送は「買い物はいかがですか」と告げた。石巻駅に戻り、停車時間を含め片道約2時間の旅となった。

 バスは4号車まであり、乗車した奇数車は渡波方面に行く東回りのAコース、偶数車は蛇田方面を通る西回りのBコース。それぞれ始発の場所が石巻駅、まきあーと、南浜祈念公園・門脇小、元気いちばとなり、各停車場所に30分間隔で後発便が来た。カメラのレンズ越しに車窓を眺めたせいか、軽いバス酔いを我慢し、Bコースに向かう。(続く)【熊谷利勝】

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