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石巻日日新聞

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石巻市・東松島市・女川町の話題を掲載している夕刊紙「石巻日日新聞」のnote版マガジンです。とっておきの地域情報と過去記事などのアーカイブ。無料と有料記事があります。ぜひぜひフォ… もっと読む
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#連載

「花園の夢と未来」 ⑤提言 市民の声 反映させよう

 ある日の石巻南浜津波復興祈念公園。西側のアスファルトの遊歩道では、石巻高校陸上部の3人が、黙々とトレーニングに励んでいた。車が通る心配がなく、障害物がないので安心して走ることができるという。  別の日は「スマイル・ウォーク虹」のメンバー10人ほどが「がんばろう!石巻」の看板前で体操をしていた。フィンランド発のポールを使って歩く運動のサークル。代表の齊藤裕子さんは「震災で亡くなった人に思いをはせながら、命のありがたみを感じてみんなで楽しんでいます」。  南浜の公園は、東京

「花園の夢と未来」 ④展望 人も育て運動も拡大

 石巻南浜津波復興祈念公園に植えられた約40種類の木々が、森の様相を呈するまで少なくともあと10年はかかるだろうか。市民活動拠点で、こころの森を運営する古藤野靖さんが、東日本大震災で被災した母校の門脇小学校の校庭で苗を育て始めたのが原点。「木が成長したら、その下にアジサイとか花が咲く木を植えたい。遊歩道も作って、そこを歩けるようにしたい」と夢を描く。  それには人を育てることも大切。今年、新卒で迎え入れた平塚美紀さん(22)は、宮城大学事業構想学群地域創生学類で学んだ新戦力

「花園の夢と未来」 ③対応 人を呼び込んでこそ

 公園に人を呼び込むのに、お祭りほど刺激的なものはない。8日、石巻南浜津波復興祈念公園の四丁目北広場では第2回青空マーケットが開催され、約6千人が楽しんだ。  「石巻最大級の食フェス」と題し、NPО法人こころの森などが主催した。昨年10月の第1回の倍にあたる73店舗が出店。飲食のほか古着、雑貨、花などバラエティーに富んだ店が並び、黄金週間の最後を盛り上げた。  大街道南の櫻井弘一さん(59)は「こういうイベントはやっぱりワクワクしていい」。東日本大震災で知人を亡くしたとい

「花園の夢と未来」 ②課題 祈りと日常の同居目指し

 「まちと震災の記録を伝え、生命のいとなみの杜をつくり、人の絆をつむぐ」―。石巻南浜津波復興祈念公園の基本理念を踏まえたうえで、人が集まる場になるかどうかが最大の課題だ。  市民活動拠点でこころの森を運営するNPО法人こころの森の古藤野靖代表の脳裏には、広島平和記念公園の光景がある。そこでは市民が芋煮会を催したり、吹奏楽の練習に励む学生など思い思いに過ごす和やかな空気が流れていた。平和への祈りを捧げ、戦争を繰り返さないことを念じる公園で、こうべを垂れる人々とささやかな日常が

「堤防と水辺空間」 ⑤提言 住民の行動、協働、発想力

 昭和の石巻、特に旧北上川沿いの中心地市街地は商業で目覚ましい発展を遂げたが、モータリゼーション(自動車社会化)進展に伴う都市構造の郊外拡大や200海里漁業水域設定などで商業機能が衰退し、人口も徐々に減少。平成以降は大型商業施設の進出で、経済の中心は中里や蛇田地区(新市街地)に移った。欲しい物は大抵手に入る新市街地の利便性にかなわないことは、認めざるを得ない。  (株)街づくりまんぼうの苅谷智大さん(36)も「川と共に歴史を紡いできた中心市街地は、石巻人にとってかけがえのな

「堤防と水辺空間」③対応 楽しみ方は工夫次第

 「石巻かわまちオープンパーク」と呼ばれ、親しまれる中央の堤防一体空間では、市から運営委託を受ける㈱街づくりまんぼうを中心に、人を呼び込むさまざまなイベントや仕掛けが繰り広げられている。このご時世ではコロナ感染対策を講じた上で、が前提となる。  昨年10月には、地域内外のバンド6組が集まり、河川堤防の上で演奏を繰り広げる「わいわい音楽会」を実施。来場者はもちろん、出演者も「こんなに良いロケーションで演奏ができて最高」と満足気に語っていた。いしのまき元気市場やかわまち交流セン

「堤防と水辺空間」①現状 にぎわい創造に地域の声反映

 石巻市の沿岸部は東日本大震災の津波で被災したが、「活力ある街の再生を」と行政や有識者、住民が協議を重ね、災害に強い新しいまちづくりに奮闘してきた。その一つが旧北上川河口部に整備された河川堤防。川と共に歴史を紡いできた石巻の復興の象徴でもあり、特に中心市街地にはにぎわいと憩いの場となる「堤防一体空間(通称・石巻かわまちオープンパーク)」も完成した。  河川堤防は津波や高潮、洪水から地域を守る重要な防御線として平成25年から国が整備し、両岸計約15キロ(曾波神大橋近くまで)に

「老舗の底力と創意工夫」 ⑤提言 連携強化と柔軟対応を

 老舗個々の創意工夫とともに、それぞれのオーナーが異口同音に発したのは「連携」。酒屋の四釜商店の社長四釜壮俊さんが取り組む「港町プロジェクト」は、石巻のほか、塩釜、気仙沼、名取と4つの港町と7つの蔵元がコラボした商品展開。塩釜の相原酒店の発案で、お互い苦境を乗り切るアイデアとしてまとまった。うち飲み需要にもマッチして現在、プロジェクトは第3弾まで進んでいる。  四釜さんは「売り上げは大きくなくても何かやっていることが大事。大きな事は市長に考えてもらって、うちらはできることを

「老舗の底力と創意工夫」 ④展望 新しいプランで現状突破

 コロナ禍で団体客が見込めなくなった日本料理店「大もりや」では、年明けにも新メニューで攻めの姿勢に転じる。原点だったそば、うどんに立ち返り、究極のそばで勝負する。  「太麺の田舎そばではなく、いろんなそばの実を試して、一番香りのいい細麺そばのしゃぶしゃぶを提供したい」。5代目社長の大森信治郎さんが秘策を明かした。都内の店の視察を済ませ、研究は仕上げの段階だ。  さらに、仲間の提案を受けて石巻地方の特産品、穴子を大々的に売り出す計画もある。水揚げ日本一になったこともあり、首

「老舗の底力と創意工夫」 ②課題 お客は自分でつかまえる

 いしのまき元気いちば=石巻市中央=の向かいに店を構える料理屋「松竹」は、8月から店先にテークアウト専門の窓口を設けた。「コロナ禍で離れたお客が戻ってくるのは難しい」と考えたからだ。集客という課題は、自ら客に近づくことで解決しようと動いた。  売り上げ的には「まだまだ」というが、震災後、仕出しや総菜作りでいち早く復活を遂げたノウハウや味には自負がある。これからの構想にもつながるテークアウトは、店の一つの柱になりうる。  14代目社長の阿部久利さんが、亡くなった父から店を引

「老舗の底力と創意工夫」 ①現状 地盤沈下前に踏ん張る

新型コロナウイルスによるパンデミックは、東日本大震災の被災地にも容赦ない。収束の気配を漂わせたと思ったら、今度は「オミクロン株」という脅威が現れた。  コロナ以前から人口流出、少子高齢化という地方都市の問題に直面してきた石巻では、地盤沈下が一層進みそうな気配だ。8月16日に立町商店街から「白松がモナカ本舗」が撤退したニュースは、石巻市民に少なからずショックを与えた。昭和46年の開店からちょうど50年。仙台市に本社を構える昭和7年創業の老舗の退場は、街なかから大きな灯りが消え

「未来につなぐ芸術文化」 ⑤提言 人を巻き込む環境と手法

【全5回連載5/5】  「震災後、地域の芸術文化は一度立ち止まった。当時はさすがにそれどころじゃなかった。だが復旧が徐々に進み出した時、地域から芸術文化を求める声が出始めた」と語るのは矢本コーラス愛好会の遠藤文明代表(62)。  震災後、多くの著名アーティストが被災地に駆け付け、音楽やアートを通して地域に元気を与えた。住民もまた、仮設住宅集会所などで創作活動に没頭したり、歌を歌って互いを励まし合ったり、つらい時を乗り越えた。  「芸術文化の存在と、それを通した人のつなが

「未来につなぐ芸術文化」④展望 徐々に戻った笑顔と活気

【全5回連載4/5】  小康状態の新型コロナウイルス感染症。10月以降、県内1日あたりの感染者は1桁、またはゼロが続く。ワクチン接種の広まりと感染防止に対する意識の高まりが影響していると考えられる。徐々に人を集めた催し事も復活し始め、コロナ前のようなにぎわいを取り戻しつつある。  石巻地方でも市、町民文化祭が催され、このうち東松島市民文化祭は展示・音楽・舞踊の3部門を会場と日程を分けて実施。大曲市民センターで開かれた舞踊の部のステージでは日本舞踊やキッズダンスなどが繰り広

「未来につなぐ芸術文化」③対応 開催か否か 主催側の苦悩

【全5回連載3/5】  コロナ禍の芸術文化振興で苦しんだのは活動団体だけではない。文化祭などイベントを主催する側も、難しい対応を迫られた。  子どもたちに発表機会を与えることを目的に、地域有志が毎年開いている「東松島ダンスフェスティバル」は感染対策を講じ、今年2月の開催を見込んだが、直前で地域の感染状況が悪化したことを受け、断念した。  副実行委員長の高橋勝利さん(38)は「規模縮小も考えたが、万が一を思えば決行はできなかった。加えて『こんな時期にイベントなんて』という