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人間の絵師は「構造」を学んでいくべき――AI絵を加筆して付加価値を持たせる方法

響音カゲ

響音カゲです。

AI絵がバズりまくってるのを見て、正直萎えてる絵師、結構いると思います。私のフォロワーでも何気なくAIの絵を上げたら1000いいねとか行ってる人がいました。

絵に関する評価や人間の知見ってSNSを通じて急速に変わっていっている感じがしていて、単なる塗りの綺麗なだけの絵の価値が少しずつ下がってきているように思えます(すでに伸びている人はネームバリューがあるし、そういう人は大抵塗りが綺麗なだけでなくて線画から何から何まで作り込まれていることが多い)

それでは、これからは絵を上手くなる価値は低くなっていくんでしょうか?

私はそんなことはないと思っています。

今回は、私がAIの絵で作ったポスターを交えてお話ししましょうか。

AIには一貫性がない

AIの絵は確かに塗りが綺麗ですが、上の記事でも言及されているように、細かい部分を見ていくとおかしなところがたくさん見つかります。

ぱっと見て分かるところであれば、

  • 線や髪の毛が溶けている

  • 塗りが妙に曖昧な箇所がある

  • 変なノイズが乗っている

  • 文字がおかしい

  • 目の左右の塗りが同じじゃない

  • 明らかに立体構造や奥行き、前後感を無視している

  • 光源や物理法則を無視している

みたいな部分があります。

また、大局的な観点では、

  • 細かい部分に説得力がない

  • 絵に意図が感じられない

  • 絵に一貫性がない

など、ここまで塗りのクオリティが高いのであれば作り込まれているはずの部分が作り込まれていない、みたいなことも多々あります。(まあ、これは一部の絵師にはかなり刺さりますが……)

これはあくまで「本質を理解できていない」ことが表面化しているに過ぎません。人間は、構造を理解して描いているから、めちゃくちゃ塗りが綺麗なのにうっかり手足がぐにゃぐにゃに溶けちゃいました、みたいなミスはしません。

AIに描かせた絵ってプロンプト以上のことはしてくれないので、それっぽい絵を出してはくれますがそこに意図まで持って描いてくれません。例えば、剣持刀也ならいつも竹刀袋背負ってるけど、動いたときにこれがどういう角度になるのか、とかって部分はAIはちゃんと理解して描けないから、ガチャになっちゃうとかね。

SNSに上がってくる絵って厳選された一角でしかないので、やはり勘違いしてしまうがちなんだと思います。

AIの絵でポスターを作る

で、上にも載せましたが、私は今回はAIの絵でVR JMoF用のポスターを作りました。テーマはにゃんが着ぐるみを持っている感じにしたい、と明確にあったので、AIで出せそうな構図を考えて横顔にしました。日陰工房はなりたい自分になることを応援している工房なので、そんな感じの雰囲気を伝えられるよう狙っています。

この考える過程が、AIにはできないところです。

その絵をなぜ出したいのか、どういう絵にしたら他の人に伝わるのか、みたいなコンセプトに関するセンスってAIにはないものです。作ろうと思ったその人にしかないセンスです。

AIはコンセプトに基づいた絵を生成するのは得意だけど、コンセプト自体を考えるのは下手くそです。


さて、絵を何枚か生成していたらそれっぽいのが出ました。

あとは手に持たせる着ぐるみの絵も生成させます。

というわけでこれをいじっていきます。

  • にゃんの模様を塗る。

  • にゃんの目が後ろを向いているので、着ぐるみの方を向かせる。

  • 服の模様の色がにゃんの色と微妙に被ってるので、バランス的な意味でちょっと色を変える。

  • 目はガッツリ描き込む。ポスターなので、目には力を込める。ここは意図や画力が出るところ。

  • 白いオオカミさんは切り抜いてヘッドとして生首にする。

  • にゃんはヘッドを持っているようにしたいので、にゃんの手を描き足す。AIも手は苦手なので、手を描けるぐらいの画力は必要。

  • 余白を伸ばす。

  • キャッチコピーを入れる。「なりたいボクに、なる。」

  • 下に情報を入れる。

これで出来上がりです。正味3時間ぐらいだったと思います。

イチから描いてたら絶対間に合いません。

AIをうまく使いこなすために必要なのは構成力

私の作ったポスターも、結局やっていることはAIで作った素材をコラージュしているだけです。

このポスターの構成要素のうち、AIに描けるようになったのは雰囲気やキャラクターのシルエット、塗り、それらしさ。
コンセプトアート等の分野についてはAIに太刀打ちできる人間は大幅に減ったと思います。

しかし、AIに考えられないのは構造です。いわゆる一貫性なども構造から生まれるものの一つです。人体の設計、骨格や筋肉の構造などを人間は文献から学ぶことができますが、AIは表面的にしか学習できないため、どれだけの量を学習させたとしても構造を理解したとは言えません。その証拠がキメラのような手足が生成されることや溶けた髪の毛、太さの違う線画です。

今回のポスターも構図やバランスに関してはいじっているし、手に持たせるという部分に関しては自力で描いています。誰が見てどう思うかという部分は私がコントロールしているわけです。コラージュする素材をどのように生成させて、どのように組み合わせるかという工程は私という主体が考えています。

そして、そのバックグラウンドには意図があります。

例えば、上のツイートのような、絵に対して大域、中域、詳細で書き込みとストーリーを作るという絵の解説がありましたが、これができるのは人間が作品に対して何らかの一貫性を持って構造化できているからです。このような構造化はコンピューターは表面的にしかできていません。彼らのキャラクターのバックグラウンドを考えて、そうだったらこれがないとおかしいだろう、というような必然性はAIには考えられないため、結局のところ表面的な表現をなぞることしかAIにはできないのです。

今のAIには、着ぐるみを手に持ったキャラクターを描かせることすらできません。着ぐるみを手に持ったキャラクターの絵なんて、世の中にはまずないからです。未知の絵を描かせるときに、その描写を表面的に説明しなければいけないのです。そして、それが伝わらない絵はAIにはどう頑張ったって描けません。

描写が人間に対してどのような感情を生み出させるのかというのをコントロールしているのが絵描きですし、細部に渡るまでどういう意図を持って相手にどう感じさせるかというのを考えているのが絵描きです。線の一本まで意図を持ってこだわろうとするところまではAIは達せていませんし、当分の間は難しいでしょう。

反面、塗りや仕上げの技術に関しては、それらしく見えることが重要になります。その物質が持っている特性や雰囲気を掴めれば、それはそれらしく見えるので、そこに「アルミニウムは元素番号の元素で、光沢の反射率は何%で……」という知識が活かされる余地はあまりありません。キラキラ光っている薄い折れ曲がったフィルムがあれば、それはアルミホイルに見えるので、それは表面的な表現をなぞるだけでもそれらしく見えてしまうのです。

絵のシルエットは両方に関わってくる要素でしょう。それらしく見えることとも、絵の全体の設計にも関わってきます。この部分をAIだけに任せるのはまだ難しいです。

いずれにしても、コラージュという方法で意図を持たせているのは、絵描きがpixivからいい感じの背景素材を探して拾ってきて自分の絵に合成するようなものの延長線上にあると考えます。

コラージュすることで、AIが生成した「それっぽいキャラクター」にストーリーをもたせ、意図をもたせ、キャラクターの中に一貫性を作っています。そして、この一貫性を作品と呼べるレベルにまで作ることは今のAIではまだ難しいのです。

バズる絵の要素に、「それらしい雰囲気の絵」というのがありましたが、これからは「ストーリーテリングと説得力」に変わっていくでしょう。絵の中に一貫性をもたせ、構造化し、緻密に一つ一つのオブジェクトに意図と意味を持たせて絵の世界観を作る。ただ雰囲気をなぞってそれらしさを出すのではなく、一つ一つが持つ必然性を観る人に、そして描いた本人が納得した上で作品から感じさせるようにする。これが、これからのイラストレーターに求められる本質となるのではないでしょうか。

この記事にある構造というのが今後のキーワードになると思っています。

こういう一貫性を作り出すための構図力や構成力、違和感に対する目を鍛えるために、今後もやっぱりデッサンとかスケッチとかの訓練をしたり、美術鑑賞をしてセンスを磨いていく鍛錬は必要になるんでしょうね……。

AI絵のコラージュと写真はよく似ている

私は写真も撮影者が創作したものという意見を強く持っていて、その理由は写真が持つ創作性はフレーミング、使ったカメラ、レンズ、角度、選んだ被写体、時間、空間の使いかた、などから決まるからです。同じものを撮ったら区別できるところはそこになるはずですし、創作性のないものを撮ると創作性が生まれることからも想像できると思います。

写真も、結局は構造をどう置くか、という点に創作性の1つの重きが置かれており、絵もAIが塗りやら雰囲気やらを出せるようになったのなら、構造がより重要になるだけの話だと思います。

AI絵のコラージュと写真ってかなり共通点があると思っていて、どのように平面空間の中にものを置いて構成するか? という創作物だからです。

よく美大の入試課題で構成の課題があるんですけど、これは紙一枚を折ったりしていい感じの立体構造を作るというものです。三次元空間でこれをやるのと二次元空間でこれをやるのと、AI絵は大差ないと思うんですよ。

これから、AI絵も精度が上がっていくと思いますが、そこに構造を含められるようになるのはまだ先だと思っています。既存のものの表面を模倣するだけでは、人間が感じる一貫性を機械が作り出すことはできない。逆に、そういう一貫性のないような絵は誰にでも作れるようになるってことなんだと思います。

まとめ

AI絵にどうやって価値を持たせるのか? という点について、人間が構造を付けてやるという方法について解説しました。

今後はこういう感じでAI絵を作品に転用する、みたいなお仕事が急激に増えていくんじゃないでしょうか。

それでは。

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