タイパク 主人公論と今後の展望

この漫画がすごい!を選ぶのは難しい、まず面白さという概念が主観的でありさらに種類がありその上同系統でも定量的な比較はできないと壁が多い。そう、漫画雑誌に漫画を載せるには新人賞-担当-編集会議という三つの門を通らねばならないように───

これに対して、現状評価数の多さという観点で見れば「続きはすごい気になるけどお金や票を落としたくない漫画」の第一位をひた走るのはタイムパラドクスゴーストライターというのは、ジャンプ読者なら賛同できるのではないだろうか?

ここではまずなぜこの作品はここまで注目を集めるのか?に対して期待値の振れ幅であるとの説明を与え、主人公が不快な理由も説明し、今後の展開がどうなるかについて予測とダメ出しをする。

振れ幅理論

本題に入るためにもこの評価はどういうことなのかを簡単に説明する。有名漫画の1話というものは既にオーラが違う、5000万部突破の名作漫画を想像してほしい、売れるべくして売れる作品の1話は既に名作なのだ。ここでの振れ幅とは面白いと超面白いの間だ。それに対して普通の漫画や打ち切り漫画の振れ幅はどうか?3話までは連載前に練られて出されるから大抵は「上手くいけば面白い」〜「普通、自分の趣味じゃない」くらいが振れ幅になるだろう。そして稀に1話からヤバいものもいる。

世間の抱く反応…は知らないが観測できる範囲で得られるタイパクの評価の特色は「上手くいけば面白い」〜「転んだらU19みたいになるぞ」と非常に振れ幅が大きい。まずはここについて考えてみよう。U19は倫理系最強の怪作だ。興味が向けば一度読んでみるといい。

物語期待度の上限

タイパクの上限が高いというのは何が理由か?この場合は作品の予想される展開が挑戦的かつ興味を引くものだからだろう。

人はげに貪欲で想像力がある。買う気のない宝くじを見てふと当たった時のことを考える人は多いのではないだろうか?

漫画においてのそれは、ある情報がその特定のタイミングで出るということをメタ的に見て先の展開を想像したり、キャラクターのモチーフになる要素などから全体像やオチを予測するなどである。

得られる情報を元に自分の想像しうる中で特に面白い物語を推測・期待するというのは自然な読者の反応なのだ

もっともこの面白さが実現されるかどうかはまた別の話で、展開の流れが期待に沿うか?取り扱う問題に対して意味のある解答を返すことができるか?というのは全てが作者の技量一つによる。

タイムパラドクスものはいくつもの名作を輩出しており一種の様式美と化している。多くの人はどうやって主人公が自分の垣間見た未来に繋がっていくのか考えている。

またこの作品は思うように夢に届かずもがき続ける人物が主人公に据えられている。その夢とは漫画家になって売れることなので自然に創作論なども取り扱っていく事になるだろう。咎を背負ったワナビーは様々な問題提起を自然と予感させる。

漫画という土俵での王道のテーマを縦軸に据えて横軸では時勢を掴んだトピックを選ぶ。それを展開する手段はそれジャンプでやる?という外連味に溢れている。

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それはどうかな?読者の辛抱が次のターンまでもったらの話だろ?トラップ発動

下限

フォントが自由に選べるならペンキが滲んだようなドロドロのフォントを題字にしただろう。

上限は要素や題材を用いて推定される。しかし下限の判定に使うのはそれと異なり、話運びや細かな伏線から推定される作者の技量だ。上限がハードルなら、下限は実際にジャンプをするまでの走り方や準備運動の様子、選手の経歴などに例えられる。

作品が面白そう!なのに対して、でも作者はこんな所がいい加減だから話運びがいい加減そうだぜ?という会話は二人のハードル設置位置が上下でズレているから起こるのだ。

大まかにヤバそうな所を整理してみよう。

1、そもそも盗作は重罪である…もちろんひとごろしだって重罪だがこれは漫画雑誌なのだ。漫画雑誌で漫画の盗作をするのは大罪と言わざるを得まい。パクリと違うのは被害者が存在し未来を奪われる。しかもこの漫画の場合それはまずバレることがない。フォローが厳しい。

2、主人公の倫理観…主人公については後に詳しく説明する。ここでは筆者が主人公をカスだと思っている程度に認識してもらえれば良い。そりゃ1があるから倫理はヤバいんじゃないの?と思いがちだがそんな同情を引くようなパーソナリティだったら苦労はない。

3、台詞が冗長すぎる…これは正確にいうとメリハリがないと言うことだ。ハンターハンターだってキャラは長文でめちゃくちゃ思案するがそう言うシーンとそうでないシンプルに収まるシーンのメリハリがよくついており、また斜め読みしても話の大筋が分かるようになっている。オマケに駄文である。語彙のある人は一人しかいないジャンプ編集部大丈夫か?

4、ギャグ調。真剣な話をしてる時や主人公が反省してる時に非常に顔がウザい。これは珍しく作画側の問題だろう。クロスアカウントと言い人を不快にさせてやまないこの顔はなんなんだ。グッチョ(ジョジョ第六部)かな?
不思議なのは絶望顔もかなり上手な点だ。他人と向き合ってる時は非常に苦しそうな顔をする。多分ずっと絶望顔だと非常に暗くなるので色々と中和する努力をしているのだろうが今度は罪の重さと釣り合いが取れなくなっている。
シリアスなシーンなのに主人公がギャグ顔でしょうもないこと考えている様を見てこいつは悲壮なキャラだと思う人はいまい。

1と2は2話感想でも言ったように作者の意図した主人公像と展開がコンフリクトを起こして不快感を排出する可能性がある。3と4は編集何やってんだ?というミスだろう。主人公のサイコが計算だろうがそうでなかろうが単純に摩擦係数を高めてしまうのでよろしくない。

主人公像とその受け止められ方

まず佐々木哲平が真の主人公なのか?という問題があり…次に主人公としてどのように振る舞うかがあり…最後に物語の終わり方を論じる。

まず彼は主人公なのか?これはそうであるとしか言えない。主人公を降格になる人間がジャンプで表紙を飾り、一話で未来を予感させるモノローグを語り、3話に至るまでの視点と台詞をほとんど有して置いて降格などは有り得ない。それをやらかして許されるのは高橋邦子作品のようなそうなると分かっている作品か、Webに自主掲載する完走が確定した作品…とどちらも商業関係ではない。商業でこれに似たことをやるとシン(種死)やテイルズの真の仲間じゃないあの人みたいになる。

面白そうだけど誰もやってないアイデアというのは往々にして失敗すると分かる賢人が選択していないからそうなのだ。

人物像は先に言ったようにワナビーである。ワナビーは否定的な意味を強調するためのワードというより、このワードに抱く感想がおおよそ主人公への評価に一致するから用いている。

ワナビーの適用される分野というのは需要に対し供給が過多で才能一つで戦わねばならない業界である、システムエンジニアを志す理系をワナビーとはあまり言わない。ワナビーはそういった業界に挑み現実と夢との折り合いがつくまで努力を重ねる。

ここで思うのだが大抵の人は折り合いをつけた後か、どこか希望があり真の困難に直面する前であって、主人公のように退路が絞られながら耐え忍ぶにまでなったワナビーというのは少数派ではないだろうか?折り合いがついた後なら主人公は引き際を弁えず自身を客観視できていないバカなわけだし、つく前でもやはり醜くもがく哲平のようにはなりたくないとは思っても共感は難しいのではないだろうか?

次に立ち振る舞いに注目してみよう。まず大まかな性質を上げると非常に小物で配慮が狭い所や、自分の悪事に目を向けて元を絶つことで罪を注ごうとする所など誰しも思い当たる節があるような人の弱さをよく表したキャラだ。これは意図してこういう性質なのか、物語を思った方に進めるためにこうなっているのかの断言ができない。

罪状にも注目する。これの重み付けは読者に自由で可変性がある部分だが、一般人読者ならともかく漫画化志望の設定な主人公の認識としては正直言って甘すぎる。そういう奴なんだ、と認めてしまえば主人公の人格評定はFになってしまい興味の対象はラベルに書く蔑称に移るだろう。

そして罪を自覚してどうするかだが、罪の十字架を背負うらしい。信念を通す手段を選ばないダークヒーローも、大義のためにあえて罪を犯す殉教者も、自分の罪はちゃんと認識しており異なるのはそれをどう受け止めるかで彼らには葛藤が常にあるのだが主人公にはあまりそういうものが見られない。見られても大抵顔はギャグだったり、なにかを言い訳にしている時だ。

主人公をどう受け止めるかだが、ちぐはぐな状態に納得のいく筋を与えるならサイコパスだろう。または哲平さんだけでなく作者の認識も甘いとすれば自己合理化部分の悪影響をすっ飛ばせるので悲劇の殉教者である。主人公に強く感情移入をすると、背景設定などがきわだち悲劇の主人公に見えると思われる。

余談だが、ここで面白いところはどの意見も同じ一連の演出を同じように受け止めてこうも意見が異なっている点だろう。演出の恣意性の有無によって認識が変わったり、主人公への共感度に応じて主人公の悲劇性を強調する演出は真逆の効果を発生させているのだ。故に意見がずれている場合噛み合わない。

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下限であげた3と4の欠点や主人公の移入のし難さが偏りを生む原因であると考える。

長期連載を目指す上での弊害

先ほどの主人公像を踏まえて物語の主人公に対する処遇についても考えてみよう。まずは交代ルート、これは時すでに時間切れと言わざるを得まい。そういうことをするなら1話の中盤か2話を使って交代するくらいがいいと思う。

次に類似型として主人公が報いを受けるパターンだ。報いをなるべく早く受ける必要性としてはサクセスストーリーなら主人公の資格に関わる火急の要件で一般キャラの贖罪とは訳が違う。主人公がヘイトを稼ぎ続ける訳にはいかないし、成長を描くにはまず負債を払わなければいけない。

もう一つは夜神月などのように上手く行っても結局は破滅するパターンだ。しかしこれを少年誌でやるにはまず主人公は明確に悪いことをしているもののある側面ではいい行いであり犯罪行為にはある種のカタルシスが介在していて初めて最後まで読みたい作品になると言えよう。

ヘイトを稼ぐつもりだとしてタチが悪いのは主人公に関する期待が下がり続けている点だろう。1話ではうやむやの盗作だったからしょうがないと言えば2話では罪を自認した上で十字架とか言い出し、3話では盗作を謝る前に原作者から逃亡した挙句2話でもやった空っぽ論で開き直ったら何故か許された。もはや笑いを取るためにわざと漢字クイズを間違えるひな壇3段目の芸人のようなわざとらしさである。というかわざとじゃない場合が怖すぎる。

主観によってきたので最後に客観的な欠点を述べるとテンポがよろしくない。3話かけてやった事は主人公が盗作で連載決定したまででほとんど進んでいない。罪状と主人公の境遇のインパクトがあれば1話で同じことをしたって多少走り気味でも差し支えなかっただろう。いや盗作に関する懸念が高速で取り除かれるという点では非常に早いのだが。デスノートで言えば3話でLが「キラが正しい!」って言いにくるようなものだ。

主人公追い詰められている説

これは盗作云々は上手くいっているがそれとは別に主人公は追い詰められているという指摘で、主人公破滅パターンの展開を支持する材料になっている。

まず主人公は自分の作品を一切評価されていないにもかかわらず、ジャンプで他人の作品を丸写しして連載をする必要がある。それもいつまで続くかわからないが盗作された当の本人に託された手前途中で逃げることもできない。

加えて真の天才だと思っていた盗作被害者は自分と同じテーマなんてなにも持ってない空っぽ人間であるという。つまりそこに存在するのは歴然とした「才覚の差」なのだ。よしんば作品が軌道に乗って生活が安定したとして衣食住が足りた時次に求める精神の幸福について主人公は避けようのない大きな挫折を味あわざるを得ない…というわけだ。


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100%勝つ気で作者の2人には頑張ってほしい。

みんなも読んでみてね。つづきがきっときになるよ。






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