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都会から過疎のまちへ。ここで見つけた家族の幸せのかたち

今回ご紹介するのは、過疎のまちにやってきたとある家族のお話。

アメリカ留学やシンガポール勤務を経て、東京で日本酒の輸出の仕事をしていた松平成史(まつだいら・しげふみ)さん。妻の裕子さんもフランス留学やシンガポール勤務経験があり、海外でキャリアを積んできました。そんな華やかな職歴を持つ二人が東京で暮らすなかで見つめ直したのは、家族の幸せのかたち。

2018年11月、松平さん一家は当時4歳だった息子とともに人口約400人の福井市の殿下(でんが)地区に移り住みました。慣れ親しんだ都会を離れて今どんな暮らしをしているのか、そのリアルな声を伺いました。

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▲写真/内藤貞保

松平成史さん
福井市殿下地区出身。東京の大学に進学し、卒業後アメリカにMBA留学。その後、シンガポール勤務を経て東京の老舗酒問屋で日本酒の海外マーケティングに携わる。2018年、家族とともに地元福井にUターンし、自伐型林業に携わりながら、農家民宿の経営やラーメン屋などさまざまな仕事を手がけている。
松平裕子さん
茨城県出身。東京の大学を卒業後、着物の会社に就職。その後、フランス留学やシンガポール勤務を経て、大学時代に出会った成史さんと結婚。東京では人材育成会社に勤務していたが、2018年に成史さんとともに福井に移住。現在は地域おこし協力隊として越前海岸エリアの活性化にも携わっている。

何不自由なかった東京の暮らし

ーー成史さんは、実はこの殿下地区の出身なんですよね?

松平成史さん(以下、成史さん):そうです。高校まで福井にいましたが、大学くらいは外に出ようと思って東京の大学に進学しました。妻とも大学時代に知り合いました。

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ーーお二人とも海外勤務の経験があるなど華やかな経歴ですが、移住したのは田舎暮らしに興味があったからとかではなく?

成史さん:東京の生活は何不自由なかったですね。日本酒に関する仕事をしていたので、きき酒マイスターや国際きき酒師、ワインソムリエ等の資格を持っていたんです。「市場調査だ!」とかいって毎晩飲み歩いていたので、楽しかったですね(笑)。価値観が大きく変わったのは、やはり子どもの存在でした。

松平裕子さん(以下、裕子さん):子どもが生まれてからも夫婦ともにバリバリ働いていたので、保育園を探し始めたのですが、希望していた園には入ることができず、通えたのは駅とは反対方向にある第10希望のところだったんです。

ーー第10希望……都会の保育園事情は厳しいと聞きますが、すごい倍率なんですね。

裕子さん:朝は7時台に夫が自転車で園に連れて行き、夜は私が迎えに行くと協力しあっていたのですが、家に帰るといつも20時近くで。1歳になったばかりの息子をたたき起こして夜も夕飯を食べさせてお風呂に入れて無理やり寝かせる毎日で、子どもとゆっくりした時間も過ごせない生活が家族にとって本当に良いのか、真剣に悩んでいましたね。

成史さん:2人で子どもとの大事な時間をどう過ごすか、自分たちにとって何が大切かを考える、まさに松平家のモラトリアム時代でした。逆に子どもがいなかったら価値観は変わっていなかったし、地元にUターンすることもなかったと思います。

移住のハードルは「仕事」

ーー地元に帰る以外の選択肢もあったんですか?

成史さん:もちろんありました。妻の地元である茨城や、二人とも海外経験があるので「マレーシアもいいね」と話していたんです。でも、もともとは本家の長男で「いつかは福井に戻って家を守ろう」と心のどこかで思っていたし、地元に100ヘクタールの山があるのでその管理も気になっていました。「地元に戻るなら林業を生業にできないだろうか」と週末に埼玉で林業スクールに通い始めたんです。

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ーーこれまで積み上げてきたキャリアを手放して、いちから林業を始めるのはなかなか勇気がいることですよね。

成史さん:いくら実家に山があるといっても未経験から林業ですもんね(笑)。お酒の仕事は大好きだったので、移住してもこの仕事を手放したくはないと思っていました。幸い、輸入の仕事なら全国どこでもできる。林業を軸にお酒の仕事も続けられるんじゃないかなと少しずつイメージできるようになりました。

裕子さん:その頃、私はまだ移住に踏み切れなかったですね。子どもが小さい時に自然豊かな場所で育てられるのはいいなと思うものの、現実的なことを考えるとなかなか……。
特に移住で一番ハードルが高いのは仕事でした。自分にできることがあるのだろうかといろいろ悩んでいた時に「地域おこし協力隊」の話をいただいたんです。移住先でも仕事がある! と目の前が開けたようでした。

ーー地域おこし協力隊のどんなところがいいなと思ったんですか? 

裕子さん:もともと着物の会社で働いていた時に、後継者不足から職人の技術が失われていくのを目の当たりにしていたんです。殿下にも地元に伝わる伝承料理などの文化があることを知ったので、次世代につなぐことをやってみたいと思いました。最後まで移住することに迷いはありましたが、まずは山村留学のつもりでやってみようと吹っ切れましたね。

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地域に見守る子育て

ーー殿下での暮らしはどうですか?

成史さん:今は祖父母が昔住んでいた空き家に家族3人で暮らしています。子どもとの時間は圧倒的に増えましたね。東京では通勤時間だけで何時間もかかっていましたが、ここでは18時に仕事が終わったら即家! ですから(笑)。

裕子さん:夜になると真っ暗で、シカやイノシシもいるのはびっくりしましたが、自然は本当に豊かな場所で癒されています。息子も小学校に進学し、あたたかい環境のなかでのびのびと育てられるのはよかったですね。1学年2人ですが、縦割りの環境で目が行き届くので、勉強が遅れることはまずないです。

成史さん:同級生の子どもも自分たちの子どもと同じ。地域の大人たちがみんな知っているので、困った時は助け合えるのもいいなと思っています。

意外に忙しい田舎暮らし

ーー実際に、移住後「仕事」の面ではいかがでしたか?

裕子さん:地域おこし協力隊としてこのエリアの情報を発信したり、五目ご飯を油桐(あぶらぎり)の葉で巻いた伝承料理「葉ずし」を地元のお母さんたちと一緒につくって販売したりしています。農家民宿もやっているのですが、これまでアメリカ、台湾、香港、東ティモールなど、海外からの訪日客も受け入れました。田舎なのに東京よりグローバルじゃないかと思うこともありますね。

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▲地元のお母さんたちと「葉ずし」づくり

成史さん
:僕も意外に忙しいですね(笑)。林業を中心に、日本酒の仕事だけでなくいろんな仕事が増えていきました。古民家を再生したり、ワインカレッジに通ったり、平日は子どもたちの部活で卓球も教えています。冬はラーメン屋もやるようになりました。

ーーラーメン屋!?

成史さん:殿下で暮らすようになってから野菜や米はもらえるし、間伐材の薪で暖房代もほとんどかかりません。しかも海が近いから魚も獲れる。あとは肉さえ自分たちで獲れたら完全に自給自足ができるんじゃないかと思って地元の猟師に弟子入りしたんです。すると、地元で捕獲したイノシシの骨はほとんどが廃棄されることを知りました。イノシシって骨からすごくいい出汁が出るので、これでラーメンを出そうと思ったんですよ。

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▲松平さんが冬季限定で営業するイノシシラーメンの「福亥軒」は県外からも訪れるほど話題に

過疎化が進む地元への思い

ーー完全自給自足できる日も近いですね。それにしても松平さん夫妻の行動力の源は何なのでしょう?

成史さん:それは殿下に対する思いでしょうね。久しぶりに帰ってきて感じたのは、地元がすっかり過疎化していたということ。昔は800人くらいいたのが半分になっていたんです。日本全体が少子高齢化ということもあって、地元が諦めモードになっているのをなんとかしたいという気持ちはありますね。そのために自分にできることや求められることがあるならなんでもやってみよう! それが僕のモチベーションになっています。

裕子さん:私は殿下出身ではありませんが、地域おこし協力隊として活動しているなかで、もっと地域の人と関わりたい、もっと地域の人に喜んでもらえるようなことをしたいという思いが強くなってきました。

最近は越前海岸沿岸部の若手を中心に結成された「越前海岸盛り上げ隊」にも参加しているのですが、地域ことを真剣に考えている仲間がいるのは心強いですし、みんなと一緒ならチャレンジしがいもありますよね。

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▲写真/越前海岸盛り上げ隊

ーーこれから松平さんが実現したいことはありますか?

裕子さん:家族の幸せのために殿下にやってきましたが、暮らしているなかで、地域全体が大きな家族のようにも感じています。私たちもそうですし、何よりも地域の人たちみんなが前向きに暮らしていくのが一番。これからも、地域の人が笑顔になれるお手伝いができればと思っています。

成史さん:これまで「山が荒れているなら林業をしよう」「空き家が多いなら住めるように再生しよう」「捨てられるイノシシの骨があるならラーメンをつくろう」といったように、どの活動も地元の人たちとのコミュニケーションのなかから生まれてきたように思います。いろんなことに巻き込まれながらも、地元の人たちの声に耳をすませながら自分にできることを見つけていきたいですね。

写真(一部):こしの国里山再生の会、越前海岸盛り上げ隊、内藤貞保

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