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台湾にキャッシュレスは定着するか(5)名刺と財布

台湾の学会にて

台湾の学会で懇親会に参加すると、日本の研究者と台湾の研究者の間で挨拶を交わし、握手をして、名刺を交換する。日本でもよく見られる光景である。懇親会には、中国大陸からやって来た研究者も数多く参加している。だが彼らは、名刺を交換しない。

台湾の教授曰く

台湾の大学教授が言うには、大陸の人たちは、多分、だれも名刺を持っていないよと。中華テーブルの円卓で隣り合わせとなった、大陸の若手研究者と挨拶を交わすが、名刺を出す素振りを見せない。名も知らぬ人たちと、淡々と会話を交わす。

日本の教授曰く

そこに、大陸の大学とも交流のある日本の研究者がやって来て、スマホを取り出す。大陸の人たちと交流したければ、ウィーチャットで名刺交換するといいですよ。そう言いながら、スマホのウィーチャットアプリを立ち上げ、彼らに示しながら話しかける。

ウィーチャット名刺

ウィーチャットで名刺交換しませんか。そう持ちかけられた大陸の研究者は俄然元気になり、スマホを取り出して交換しようと笑顔で応える。スマホでQRコードを示し、相手のスマホで読み取る。受け取った名刺情報を確かめ満面の笑みを見せる。会話が弾む。

アプリなければ透明人間

ウィーチャットのアプリで名刺を交換できる相手であれば、国籍を問わず、すぐに打ち解ける。アプリを持たない相手とは、たとえ隣合わせに座っていても他人である。アプリなければ交流なし。この円卓に限っていうならば、そんな距離感が見られた。

ペーパー名刺レス

近頃、大陸では、大規模なイベントに参加しても、名刺を一枚も交換しなかったと聞く。どの程度までペーパー名刺レスが進んでいるのかは、現地をよく知る専門家の方の記事を待つとして、ここ台湾にも、変化の波が押し寄せているのだろうか。

台湾の名刺文化

だが、台湾の人たちは、誰もが紙媒体の名刺を取り出していた。フルカラーのアートポストに箔押しといった、工芸品としても美しい名刺を取り出す人もいた。この円卓に限らず、台湾の各地において、紙名刺の文化が守られていることが実感される。

財布なければ名刺なし

お財布アプリと、名刺アプリが統合されて、信用スコアが蓄積されていく。大陸が完全なるデジタル社会へと移行した時、財布と名刺は信用の名の下に一体化していく。こうした変化の流れは、少なくとも現時点では、台湾には押し寄せていないようだ。