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カンボジア中央銀行のデジタル通貨とリブラの緊張関係

カンボジア中央銀行は法定デジタル通貨の実用版を発行する世界でも最初の国家の一つである。その製品には日本企業の英知と、未来を見通すカンボジアの叡智が詰まっている。

目黒雅叙園

10月上旬に目黒雅叙園でブロックチェーン関連の大きなイベントが開催された。秋晴れでお庭の緑がよく映える。慶事に訪れる方も多い。

リブラの日本代表も登壇した華やかなイベントの会場において、筆者がもっとも楽しみにしていたのは、アメリカやヨーロッパからの参加者ではなく、ソラミツの宮沢和正さんとの再会であった。

鎌倉の面白法人カヤックや、飯塚のチェイントープなどの地域密着型企業が登壇した地域通貨に関するセッションを堪能したのちに、ロビーのカフェに陣取って、宮沢さんからゆっくりとお話を伺うことができた。そこで話してくださったのは、カンボジアでの活躍の中身と、日本企業がこれまで考えてきた知恵をすべて振り絞って実現したといってよい考え抜かれた製品の凄味であった。

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カンボジアの通貨

カンボジアの銀行ATMでお金を引き出す際には、現地紙幣またはドル紙幣のいずれかを選んで受け取るのであるが、なにも選ばなければドル紙幣が出てくることもある。なにもしなければ自国通貨は消えてしまうかもしれない。メコン川の流域諸国には、そうした緊張感がある。

そこに登場したのが民間デジタル通貨のリブラである。大国にとっては、目障りな存在ではあっても、取るに足らない規模のものに過ぎない。だが、メコン川流域の後発国にとっては、インターネットのお金が自国通貨に代わる決済手段に昇格してしまうかもしれないという危機感がある。

そうした国際情勢を背景として、いち早く先手を打って法定デジタル通貨の導入を決定したのが、カンボジアの中央銀行であった。

デジタルの三権分立

法定デジタル通貨の導入はいくつもの国や地域で検討されているが、実現には二の足を踏むところが多い。その理由として挙げられるものとして、技術的な信頼性への不安よりも、むしろ国家に購買情報と行動情報が集まり過ぎることへの懸念がある。

カンボジアは、この難問に対して、国家の三権分立に対応したデジタルの権限の分掌を明確にするという手法で回答した。おそらく、中央銀行がこの難問にはっきりとした解を提示したのは、カンボジアが最初ではなかろうか。

この一点をとっても分かるように、カンボジアの中央銀行はデジタル国家がどうあるべきかを深く考察しており、それに応えようとする日本企業がアイデア段階にあった構想を技術で丁寧に実現していくという理想的な協働関係にあったことが窺われる。

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CBDCのお手本

周回遅れといっても過言ではなかったカンボジアは、法定デジタル通貨の発行によって一躍、世界の注目を集めることになった。宮沢さんから教えていただいたカンボジアのストーリーは、幸運にも拙著の一節として盛り込むことができた。なぜメコン流域国の中央銀行がデジタル通貨を発行することになったのか、どのような困難があって、どうやって乗り越えたのか。法定デジタル通貨を発行する計画のない国にとっても、知っておいて損はないお話をたっぷりと聞かせてもらった。

筆者にとっては、リブラが世界に巻き起こした変革の余波を受け止めて文字にする、とても大切な一節となった。短期間で書き上げた本であったが、この大切なお話をご紹介できたことを幸運に思っている。

第4章 ビットコイン、リブラ、CBDC
第7節 カンボジアが最先端になる日
 メコン川流域の発展 / 今そこにある危機 / トークン型の貨幣性 / 仮名性のコントロール / デジタル三権分立 / 金融エンジニアの育成 中央銀行の二つの使命 / 銀行間ブロックチェーン

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電子マネーをつくった人々

宮沢さんは電子マネーの創世記を彩った立役者である。その活躍については、以前にnoteの記事で6回にわたってご紹介した。ご本人いわく池井戸潤の小説のような波乱万丈の展開が待ち受けている。宮沢さんの著書とあわせて、休日の手軽な読み物になれば嬉しい。

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