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1on1における両者のスタンスを整える工夫

1on1を導入している企業がここ最近になり増えてきました。RELATIONSでも2015年から1on1をスタートしております。当初は目的を定義しないまま進め、1on1が絶滅の危機に瀕したこともあるのですが、その後見事復活し、人事施策のど真ん中で機能してくれております。全社での1on1実施率(Wistantで計測)も90%をキープし、更には、斜め1on1という会社公式外のペアが自然増殖しています。

組織づくりのコンサルティングで1on1の定着支援もしておりますが、その中で感じるのは、1on1を積極的に活用し、エンゲージメント向上や業績向上に繋げているマネージャーの方もいらっしゃる一方で、中々意味を見いだせず会社の仕組みだからといって乗っかっているだけの人もいるということです。

1on1をされている皆さんも、隔週に1回30分の時間を確保し、仮に5人のメンバーと1on1をすると、月間に最低で5時間程度の時間を割くことになります。この5時間がメンター、メンティーにとって最良の時間になるためにはどうすればいいのでしょうか。

1on1に絶対的な正解はないのですが、より良い時間にするために1つ試してみてほしいことが、1on1の両者のスタンスを整えることです。ペアが同じ方向を向いたり、お互いの価値観やスタンスを理解できると関係性が変容し、1on1の価値が変わります。スタンスを工夫するための方法について自分の考えを少し書いてみたいと思います。

釈迦に説法かもですが、まずは1on1の目的から確認です。

1on1の目的とは

ご存知の方も多いかと思いますが、1on1とは、メンター(多くの場合は上司・マネージャー)とメンティ(部下・メンバー)が1対1で対話をする場のことです。

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その目的は、精神支援・内省支援・業務支援を通じての「個人のパフォーマンス向上」です。マネージャーが部下に対し一方的にレビューをするのではなく、あくまでもメンバー個人のパフォーマンスを上げるための場となります。

詳細はこちらを参照

1on1の取り組みスタンスを整えるための工夫

1on1は、人事主導でペア設定がされるか、組織図上の上司部下でペア設定されるというのが一般的ではないでしょうか。メンター・メンティー側からすれば、勝手に決められた感もあるように思います。また、普段から接する人だからこそ惰性で1on1が始まり、なれあい1on1になってしまう危険性がはらんでいるように思います。ペア設定の方法や最初の1on1で少し工夫すると1on1のスタンスに変化をもたらせるのではないかと思っております。大きく分けると3つです。

1on1の取り組みスタンスを整えるための工夫
1.ペアの目的をすり合わせる
2.1on1におけるお互いの在り方をすり合わせる
3.1on1のペア設定方法

1.ペアの目的をすり合わせる

メンター・メンティー間が本当にこの時間が必要だと感じるためには、そもそものペアの目的をすり合わせるのが効果的だと思います。会社の1on1の目的もありますが、ペアの目的もそれに照らし合わせて設定するとお互いの認識も揃い1on1の意味が明確になります。明文化までしなくてもお互いが同じ認識で合意していることが大事だと思います。

質問例
「この1on1をどんな時間として活用したい?」
「この1on1を通じてどんな成長につなげていきたい?」
「この四半期でどういう状態になっていたい?」

というような問いから少しずつ掘り下げて、メンティーとして本当に大事にしたいことを掴み取り、お互いで合意することが重要だと思います。その際には、全社目標や個人目標、WillCanMust、会社のバリューなども活用できるかもしれません。

2.1on1におけるお互いの在り方をすり合わせる

2つ目ですが、1on1への在り方についてお互いですり合わせておくと1on1自体はよりよいものになるのではないかと考えております。この点は私自身も足りていなかったなと感じており、今年の1on1から改善をしていこうと思っています。

そのきっかけになったのは、年末に読んだ「1兆ドルコーチ」という本です。内容は、ビル・キャンベルという方のコーチングのノウハウや考え方をまとめた本です。Googleのラリー・ペイジエリック・シュミット、Appleのスティーブ・ジョブスなどシリコンバレーの錚々たるビジョナリーのコーチをされていた方です。

「1兆ドルコーチ」の中でビル・キャンベルが、マネージャー(メンター)、メンバー(メンティー)として大事にすべき在り方を記載している一文を抜粋してみます。

<マネージャーに求められる在り方>
「あらゆるマネージャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功だ」
<メンバーに求められる在り方>
「コーチャブルであること」
コーチャブルとは、「正直さ」「謙虚さ」「あきらめず努力をいとわない姿勢」「つねに学ぼうとする意欲」のこと。

「1兆ドルコーチ」は、コーチングの話なので、今の1on1ペアの話にそのまま当てはめると違和感もあるかもしれません。しかし、1on1がうまくいくための示唆に富んでいるのではないかと思います。このようなスタンスを持つペアだったら、パフォーマンス向上にもつながっていくのだと思います。

先程の目的のすり合わせが前提にあれば、どのような在り方で臨むのかというのは言語化しやすくなっているかと思います。「1兆ドルコーチ」を参考にしてもいいですし、独自の哲学から紡ぎ出してもいいと思います。お互いがどのような在り方で臨むかを言語化すると通常の1on1もより引き締まるのではないかと思います。

私自身もこの辺をトライしていくので、またnoteでもまとめてみたいと思います。

3.1on1のペア設定方法

最後はペアの設定方法です。1on1はメンティー自身が自律駆動になるとより効果が出てきます。メンティー自身が自らのパフォーマンス向上のために勝手に動き始める訳ですから、より効果は高くなります。自律駆動型へと促進していく一つの方法として、ペア設定の方法を変えていくことが一つの施策として考えられます。弊社では、メンティー自身にメンターを選ぶ権利を付与しています。この領域だけは、会社の方針もあるのですぐに実施するのは難しいかもしれませんが。

実際の運用に入る前に少し前提からお話します。RELATIONSでは、今年からピープルマネジメントとワークマネジメントを切り分けました。エンジニア組織でも最近実施されているVPoE、VPoPのような考え方です。ピープルマネジメントとは、簡単に言えば、人の力を最大限引き出すマネジメントのことです。一方、ワークマネジメントは、仕事の目標設定や計画、管理などが主体のマネジメントのことです。

多くの組織ではこれらの機能をすべて一人のマネージャーに任せていることが多いかと思います。弊社ではこれが組織課題として歪になっている状況でした。人は誰しも得手不得手があります。不得意な領域や興味・関心が薄い領域を任せられるとうまく機能しません。役割を切り分けて、1on1も得意な人が実施すればいいですし、一定の基準を満たせば誰もがピープルマネジメントを担えばいいということにしました。そうすると、1on1そのものも機能しやすくなりますし、組織として学習していく動機にもつながります。画一的に組織設計するのではなく、得意な人が得意な領域を担うという体制に変更しました。

弊社では、上記を整えた上で、運用をスタートしております。実際の流れとしては、会社側でピープルマネジメントを担う人を選定します。その後、メンティーがピープルマネジメントを担って欲しい人をその中から複数選んでもらって、最終的に人数バランスが調整されてペアが決定するという流れになります。

これは今年から始めた取り組みなので中長期的な効果検証はこれからですが、1on1を私もやってみた所感としては、メンター側は「自分は選ばれた」という感覚が芽生え、メンティー側は「自分が選んだ」という認識になります。この関係性の変化が1on1へ及ぼす影響は想像以上に大きいなと実感をしております。

まとめ

1on1をより良くしていくための特効薬は存在しませんが、1対1へ向き合うスタンス、そしてそこから生まれる関係性というものが1on1へ及ぼす影響は大きいと個人的には思います。

1on1は会社が主導の取り組みになるので、どうしてもやらされ感が先行してしまいます。しかし、そのまま放置して惰性で進めれば、折角の時間が無駄になります。メンター、メンティー、会社側の創意工夫によってもっともっと皆にとってより良い時間へと昇華していくことができたら素敵だなと私は思います。

RELATIONSでもこれからいろいろと1on1については研究していきますので、都度発信させていただきます。


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