「ONE TAP SPORTSの無料提供」に思うこと

<コロナが生んだ屈曲点>

連休前に、一本のプレスリリースを出した。

スポーツチーム・医療従事者向けに「ONE TAP SPORTS」のコロナウィルス対応体調チェック機能を今年12月末まで無料で提供するというものだ。
https://eu-phoria.jp/news/pressrelease/getover-covid19

UNIVAS (大学スポーツ協会)からも、日本全国の加盟大学の運動部を対象としたプレスリリースを出していただいた。

ユーフォリアでは、3月上旬から、Jリーグクラブやプロ野球球団など、プロチーム・リーグを中心とした当座の緊急対応として体調チェック機能の無料提供をおこなっていた。

これを、日本全国のすべてのスポーツチームおよび医療従事者を対象として、一気に今年の年末まで延長拡大する。

体外的な発表に先立って、社内でこの方針を示してからの10日間ほどは、社内各チームがそれぞれに火事場のような騒ぎだった。

・HRチームは、ユーザーサポートを担当する学生インターン(その多くは自らもトップレベルの学生アスリートである)を大量にインタビューして採用し
・ユーザーサポートチームは、学生インターンに連日のオンライントレーニングを実施し
・エンジニアチームは、サーバー強化と申込み導線をつくり
・マーケ・PRチームは、関係各所とのプレスリリースの調整と、メディアへのアウトリーチを行った。

足元のトレッドミルが急に高速で回り始めたような状況の中で、同時に通常の業務もこなしながら、各チームがリモートでつながりながら、それぞれに全速力で走っていた。

今回のリリース後、連休を挟んで多くのチームで「ONE TAP SPORTS」によるリモート体調チェックの導入が進んでいる。

あらゆるグラフには、明らかにコロナを契機として大きな屈曲点が存在している。

これまでに、どれだけ我々がコンディションを可視化することの重要性や、リスクの高い状態の時にアラートを発する機能の必要性を訴えても、緩やかにしか伸びていかなかったグラフの傾きが、急速に角度を増している。

平時であれば、5年〜10年はかかるはずだった変化が、この数ヶ月間に凝縮して起きている。

今後、コロナウィルスが収束したとしても、一旦このリモート体調管理を経験したことの記憶は消えないし、おそらくもう元に戻ることはないだろう。


<何のためにビジネスをするのか>

今回の発表にまつわる意思決定は、あらためて我々は何のためにビジネスをしているのか、を考える機会でもあった。

当たり前のことだが、今回の無料提供が、キャッシュを生むことはない。
当面の間は、むしろ費用の増大だけが確実に見込まれている。

それでも、「我々にはこれをやる義と責任がある」と今回の方針を打ち出した時に、社内から疑問の声は上がらなかった。

「絶対やりましょう」「やり切るしかないでしょ」
という声が多かった。

「スポーツの力を活かし、スポーツの力を通じて、未来をつくる」
というのがユーフォリアのミッションだ。

ミッションとは「使命」であり、文字通り何のためにユーフォリアという組織体の「命を使うのか」という問いへの答えでもある。

連休中に日経新聞運動面に掲載していただいた記事の中で、
https://r.nikkei.com/article/DGKKZO58785590V00C20A5UU8000?unlock=1&s=3
「アスリートのために開発したシステムが社会の危機の克服にも役立つことを示したい」という発言が引用されている。

我々は、それこそが、「スポーツの力を活かし、スポーツの力を通じて、未来をつくる」ことだと考えている。

究極的に突き詰めて考えれば、すべてのことは手段である。

プロダクトを開発して世に広げていくことも、キャッシュフローを稼ぐことも、起業したということも、仲間たちがこの船に集まってきてくれたということも、すべては手段であり、最終的な目的ではありえない。

最終的な目的は、未来をつくることだ。
これからやってくる未来を生きる人たちの幸福。
若者たち・子供たちの未来の幸福をつくることだ。

そのためにこそスポーツは存在し、そのために我々は存在している。

物語はハッピーエンドに終わるかどうかは分からない。
毎日たくさんの出来事が起きているし、もしかしたら終わりそのものがないのかもしれない。

それでも、今回の危機にあってユーフォリアのメンバーが示してくれた思いと、その全力と、共有された大義を見て、僕は心の底から頼もしいと思ったし、心の底から感謝と尊敬の念を抱いた。

もう随分と昔の夏に、たった2人でつくったユーフォリアという組織体の命が、多くの仲間たちの中で赤々と燃えながら、使われていることの幸福を、噛み締めた。

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