2021年1月16日のロイヤルホストで


閉めきれていなかったカーテンから刺す光で目が醒める。
うつろうつろしながら、頭上のiPhoneを探して時計を確認、10時54分。


明日の朝はパンを焼いて〜コーヒーがりがりして〜と希望を抱いていた昨夜の自分に教えてあげたい。君はそれを成さないぞ、と。


Twitterを開くと今日は最高の吉日!とトレンドが伝えている。
フゥン、と鼻から息を吹いたあとに、胃の重さがうずく。
心当たりがある。昨深夜に食べたファミリーマートのでっかいおっとっとだ。背徳感も相まって、あれはおいしかった。


のそっと起き上がって、ちょっと早めのランチ〜といきたい所だが、今日は絶対自炊したくない!と自炊筋が拒絶反応を起こしたのと同時にひらめいた。「そうだ、ロイヤルホスト、行こう」


ロイヤル様の敷居をまたぐ為に、シャワーを浴び、身をつくろい、出かける準備をする。今日は携帯を持たずに、お気に入りのお財布、本だけ持って出かける自分を想像する。
ベッドの上のiPhoneの黒い画面がこちらを見ている。

ベージュのトレンチのポケットにそれを忍ばせ、鍵を閉めて家を出る。


財布はあるがお札が切れている事を思い出し、近所のファミリーマートに立ち寄る。クレジットカード、コード決済、電子マネーなど、あらゆる支払いに対応してくれるロイヤル様だが、こちらだって甘えるわけにはいかない。
即金でぽんっと、お札や小銭のかすかな重さを、お店に残して帰りたいのだ。


ファミリーマートの先の信号を渡り、向こう側へ。
てくてく歩くとロボットが並んでいるみたいなマンションが見えてきて、その脇にロイヤルホストが建っている。


自動でぴゅっと液体が出てくるマシーンで手を清めて(私はこのタイプのマシーンが大好き)窓際の席へ。ひとたび開くと、七色に輝く食の海へダイブしてしまうメニューを眺める。注文は決まっているのだけど、眺める。別席では何を食されているのかなあ、と横目で見たりしながらもさらに眺める。

すきな時間。

よし、と腹をくくって
「食いしんぼうのシェフサラダ ブランチセット」(食いしんぼうのシェフサラダにオニオングラタンスープ、ガーリックトースト(ハーフ))と「冷製コンソメジュレ&フラン仕立て~いくら・蟹・海老~」を注文する。


最初に現れたるは冷製ジュレ、お皿の上に敷かれたレースのペーパーナプキンが可憐な冷製ジュレ。脚付きのグラスに冷水、そのまた上にガラスのココット、そして冷製ジュレ。まあるいスプーンですくってぱくり、はaa、おいしい。いくら、ジュレ、フランを絶妙な配分ですくい上げていく喜び。


「食いしんぼうのシェフサラダ ブランチセットです。」という声と共に最強チームで満たされるテーブル。

オニオングラタンスープのフタを開ける時のわくわく感、サラダに添えられた唐揚げ、ポテトにまでドレッシングをどばーっとかける時のかすかな戸惑い、ガーリックトーストの焼き目が水玉模様になっているのも可愛い。
さっとソテーされた海老はしっぽから丸ごと、肉厚なアボカドはベーコンと一緒に口に運ぶ。

おいしい。

スープ⇒サラダ⇒トースト⇒サラダ⇒スープ⇒トーストを数周繰り返し、ただの食べる身体と化していたその瞬間。

隣席でお食事をされていたファミリーのご子息が一言「ねえ、パフェって栄養あるの?」と放つ。
すかさず「ある、あるよ!!!」と脳内で叫んでしまった為に、ご両親の模範解答を聞き逃すという失態。


パフェによる栄養、ぜひあやかりたい。
と考えつつも、目先のシェフサラダセットをもくもくと口に運ぶ。
2021年1月16日のロイヤルホストで。

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