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ジュリエットからの手紙

監督は、ゲイリー・ウィニック。
脚本は、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のホセ・リベーラと
ティム・サリヴァン。
撮影は、マルコ・ポンテコルヴォ。
音楽は、「幸せのちから」のアンドレア・グエラとジョン・フーリアン。
主演は、アマンダ・セイフライド。
共演は、クリストファー・イーガン、ガエル・ガルシア・ベルナル、
フランコ・ネロ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ。



「写真に写っているピール氏は2等水兵でお相手は看護婦さんだそうです、
 キスの瞬間は自発的な行動で真実の愛をお祝いしたと仰ってます」
「本人が言ったんだな?」
「ええ」
「古い写真だからね、君に事実確認を頼んだ、それは確実なんだね?」
「ええ、確実です」
「いいだろ、読者は真実の愛を信じたい、そうだろ?、
 そして君は仕事を終えることができて婚約者とヴェローナへ行ける」
「そのことなんですが・・、
 向こうでの見聞を書いてきてもよろしいでしょうか?」
「君はライターじゃないだろ?、書くことよりも楽しんできなさい」

ソフィ(アマンダ・セイフライド)は、ニューヨーカー誌のアシスタント。
誌面の記事を書く為の調査業務などをしている。婚約者ヴィクターは、
有能なシェフで自分の店のオープンを控えている。
2人は本場イタリアの食材の調達を兼ねた旅行でヨーロッパを訪れる──。

「こっちへ来て、とても素敵なの」
「ソフィ、モリーニさんと電話してて、
 彼が僕たちのために小旅行を用意してくれた」
「え?」
「ヴェネトで一番由緒ある美しいブドウ園に行んだ、──どう?」
「うーん」
「ソフィ行こうよ、ダメだよ行かなきゃ、
 由緒ある美しいブドウ園に行んだ、ロマンチックだろ?、
 そこへ行ってワインを飲まなきゃ、ほろ酔い気分になろう」

が、シェフのヴィクターは有能すぎるシェフだった。
レンタカーでFIAT500Cを借り、自ら運転し、オリーブオイルの製造元、
チーズの製造元を訪れ、「ネズミになってここに住みたい!」と言い、
まもなく開店する自分の店の為にワインや食材の仕入れに東へ西へと夢中。

「モリーニさんが森に招待してくれた120キロ先だ、
 最高のトリュフが採れるんだって」
「待って?、120キロ先って?」
「大丈夫だよマイル(192キロ)じゃないよ」
「ヴィクター、マッシュルームを見るために
 120キロ先に行くなんて理解できないわ」
「え?、ソフィ、マッシュルームじゃないよ、
 トリュフってのは、パスタの先に載せるやつさ」

ほったらかしになったソフィはヴィクターと別行動になってしまう。
ヴェローナには、「ロミオとジュリエット」のジュリエットの生家の
モデルになったといわれるカプレティ家の邸宅があり、
そこは、スペイン広場やフィラデルフィア美術館なみの一大観光名所。
あの「ロミオとジュリエット」の“ バルコニー ”も存在し、
世界中の女子であふれていた。さらにこの場所には、恋の悩みを綴った
ジュリエット宛の手紙が、世界中から年5000通も届いていた。

ジュリエットの家を訪れたソフィは、壁一面の“ ジュリエット・レター ”
に目を見張る。やがて、カゴを手にした女性が、手紙を集めて去ってゆく
と、好奇心にソフィはその後を追う。そこでは、“ ジュリエットの秘書 ”
と呼ばれる女性たちが集めた手紙に返事を書いていた。

「すごいわ、返事を書いているんだ」
「そう」
「皆さん、ジュリエットなの?」
「ジュリエットの“ 秘書 ”なの、
 ドナテラは結婚51年目、彼女の担当は夫の問題ね、
 フランチェスカは看護婦なの、病気と亡くなった人が担当よ、
 それに、マリア、12人の子供と29人の孫がいるの、
 彼女は好きなように書いてるわ」
「あなたもなの?」
「イザベラはかろうじて読めるものに答えるの── 
 “ 恋人と口論、壊れて心臓が張り裂けそう ”」
「誰かがやらなきゃ」

「母だわ、夕食でもどう?」
「ご馳走になりたいけど、他に用事があるの」
「それは侮辱だわ!、
 わたしはみんなに料理を作りたいの、街の人にもたっぷりとね!」
「ママ、おおげさよ、侮辱じゃないわ」
「フィアンセと会うんです」
「フィアンセ?、オオー!、フイアンセー!」
「はは」 「フイアンセ」 「ふふ」 「フィアンセよ」 
「では、コレ、ちょっとだけデザートが入ってるわ、
 フイアンセーに持って行って」
「ありがとうございます、それでは皆さん、チャオ」

「ヴェローナはどうだった?、ぼくなしでつまらなかったかい?」
「少しね──ね、わたしジュリエットの秘書に会ったの」
「ジュリエットの?」
「ええ、ジュリエットの秘書って呼ばれている女の人たちなの、
 ジュリエットの家に届けられるジュリエット宛の手紙に
 返事を書いてるの、すごいと思わない?、
 彼女たちは世界中から失恋した女の人たちの手紙に返事を書いてるのよ」
「ん?、袋の中身は?」
「知らない、
 それで、届けられる手紙にも、ジュリエットの家の庭の壁に
 張られている手紙にも、秘書がかごに入れて来て毎日区分けして、
 “ ジュリエット ”として返事を書いているのよ、素敵だと思わない?、
 全部に返事を書いているのよ、それが仕事なの愛情をもって」
「んー!?、ソフィ!、これすごいよ!、食べてみて!」

「ヴィクターは情熱的なのね」
「ええ、そう、ここに来てさらにイタリア人ぽくなったみたい」
「ソフィ!、イザベラのお母さんはすごい!、もう夢中になっちゃう!」
「そう?、恋しちゃった?」
「うんそう、──ね、イザベラのお母さんが秘密レシピを教えてくれるって」
「そうなの?、それで」
「これはすごいことなんだよ!、とにかくすごいことさ!、
 アマローネワインで作るリゾット!、300年前のレシピなんだ!、
 すごいだろ!?」
「いいけどガルダ湖は今日行かないの?」
「え・・、でもガルダ湖は50年前からずっとあるし、
 イザベラのお母さんがせっかく教えてくれるんだ・・」
「アンタ、ポール・ニューマンかい!?、
 料理をするなら見て覚えなきゃ!!」

ひょんなことから、ジュリエットの秘書の仕事を手伝うことになった
ソフィは、偶然にもジュリエットの家の壁の中に眠っていた
50年前の手紙を発見してしまう。

   ──彼のところに行けなかったのジュリエット、
     ロレンゾのところに行けなかったの、
     彼の眼は信頼に満ちていて、結婚しようと会うことを約束したの、
     でも、両親が認めなかった、それで木の下で会いましょうって
     約束して待ったけど、彼は来なかった、
   ──わたしはまだ、ヴェローナにいます、
     朝になったらロンドンに戻ることになります、
     お願い、ジュリエット、わたしどうすればいいの?、
     心臓が張り裂けそう、わたし帰るしかないのかな、 クレアより
      
「返事はあなたが書いてみたら?」

その手紙の差出人は、クレアというイギリスの女性。
50年前に訪れたここイタリアでロレンゾという青年と恋に落ちた彼女は、
両親の反対を恐れて1人で帰国してしまった。
ソフィは、そのクレアに向けてジュリエットの秘書として返事を書いた──。

「失礼します、こちらがジュリエットの秘書の方々ですか?」
「ええ、そうですよ」
「祖母のクレア・スミスに手紙を書いた方はどなた?」
「わたしです、本当に現れるなんて信じられない」
「今はこちらに滞在する予定です」
「まだ一週間もたたないのにビックリだわ」
「とても思いやりにあふれた手紙でした、
 ──でもどういうことになるか考えてみたのかな?」
「返事が欲しいと願っていたんじゃないかと」
「50年前はね、今じゃない」
「ごめんなさい・・、でも真の愛に有効期限はあるのかしら?」
「真の愛?、冗談じゃない、
 会いたくないって思うこともあるとも考えなかったのかい?」

「ちょっと!、わざわざ説教しにロンドンからやって来たの!?」
「違うさ、祖母が来なくていいように代わりに来ただけさ」
「クレアがここに来てるの!?、素晴らしいじゃない!、
 ロレンゾを探しに来たのね!?」
「素晴らしいだって?、
 ロレンゾが会いたくないとか忘れてるって思わないのかい?」
「・・・・。」
「ひどい病気とか死んでいてもそれでも嬉しいのかい?、
 ──そこまで考えたのかい?」
「ね、会いたいわ、クレアに会わせて」
「なんで君に会わせないといけないんだ?」

「すみませんクレアさん、ソフィーと言います、
 わたしが返事を書いたんです」
「手紙?、ジュリエットからの?」
「ええ」
「嬉しかったわ!、ありがとう」
「お孫さん、素敵な人で、あなたが会いたいんじゃないかって」
「ほんとに?、チャリーは『ロミオとジュリエット』に否定的なの」
「ふふ」
「ソフィさん、ワインでもご馳走させて、いいでしょ?、
 どこかいいところあるかしら?」

思いがけずにジュリエットからの手紙を受け取ったクレアは、
改めてロレンゾと会うためにロンドンからイタリアへとやってくる。
彼女の想いに感銘を受けたソフィと旅に反対するクレアの孫チャーリーと、3人の旅が始まる──。


初恋の思い出をめぐるイタリアの旅。

絵空事の寓話かと思いきや、過去への旅とは不思議なもの。
友人の結婚式に出席し、
想い出は想い出のままの方がよかったと思うこともあれば、
別の友人の結婚式で思いもよらぬ素晴らしい再会があることもある。

主演、アマンダ・セイフライド。
イギリス人、クレアにイギリスの大女優、ヴァネッサ・レッドグレーヴ。
イタリア人、ロレンゾにマカロニ・ウエスタンのスター、フランコ・ネロ。
光り輝くハリウッドのメロドラマ、“ ジュリエットからの手紙 ”。


いい映画です。



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