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スロウ・ウェスト


1870年頃、新大陸、アメリカに渡ったローズを追いかけ、
キャベンディッシュもまたアメリカに渡った。

新大陸でキャベンディッシュを待ち受けていたものは驚異の大自然、
そして、法のなしえない世界だった。



インディアンが走ってって来た。
キャベンディッシュが驚き、インディアンも驚いたが、
インディアンはキャベンディッシュの横を走り抜け、去って行った。
インディアンを追って銃を持った3人の男がやって来た。
ボスのような男は軍服を着ていた。
「奴を追え」
子分のような男二人は、キャベンディッシュの横を走り抜け、
インディアンを追いかけた。
「お前は何者だ?」
「イギリスから来た、スコットランド人だ」
そこに男が現れた。男はボスのような軍服の男に銃を向けた。
「銃をおろせ」
キャベンディッシュは男に銃を向けた。
男は、キャベンディッシュに歩み寄り、銃を奪った。
男は、ボスのような軍服の男にキャベンディッシュから奪った銃で撃った。
──が、銃は弾が入っていなかった。
「ははは」
しかし、男は、自分の銃で撃った。ボスのような軍服の男は死んだ。
「なんてことを!、軍服を着ていた!」
「着ていただけだ、この銃、油をさしとけ」
男は、そう言って、銃をキャベンディッシュに返した。
男は、ボスのような男の財布を奪い、ブーツもぬがして自分のものにした。
男の名はサイラスと言った。

「キャベンディッシュだ、貴族の息子だ」
「用心棒になってやろう、前金でドルで50ドル、終わったら50ドルだ」

キャベンディッシュはサイラスと共に旅をすることになった。

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草原。3人の黒人の男たちがパンジョーなど楽器を演奏していた。
楽しそうに。誰もいないところで。
キャベンディッシュはフランス語で挨拶した。
黒人たちはフランス語で会話を返した。

「交易所だ、テーブルで飯が食えるぞ」

交易所。
「ここではまず銃を預けてくれ、それがルールだ」
サイラスは銃を預けた。ウィスキーをすすめられたが食事だけを頼んだ。
キャベンディッシュは服を試着した。
キャベンディッシュが買おうとした服には血がついていた。
そこに、ある夫婦が訪れた。
亭主はなまった英語で「お金ください!」と言い、銃を店主に向けた。
奥方は亭主に引き金を引くよう言った。露西亜語か独逸語だった。
「お金ください!」となかなか引き金を引けない亭主。
店主は「ここで金を使える場所はここだけしかない、考え直せ」と言った。
隙を見て店主が亭主を撃ち殺した。瞬間に奥方が店主を撃ち殺した。
奥方は震えながらサイラスに銃を向ける。
「落ち着け、銃をおろせ」と言うサイラス。
奥方は震えながら銃をおろそうとはしなかった。
試着室のキャベンディッシュが、奥方を撃った。奥方は死んだ。
「食料を持って行け」
缶詰をいっぱい抱え、交易所を出るキャベンディッシュとサイラス。
交易所の外では、夫婦の二人の子供たちが立っていた。


映画は、この後、ベイン一味というのが登場する。
ベイン一味は賞金稼ぎ。自らも賞金首のような集団ですが、
本人たちは、「世の中には自ら賞金首になりたがる奴がいる」と、
賞金首になることに否定的。
ベイン一味は、別に誰かれ構わず人を殺すということもなく旅を続け、
賞金首を狙っているが、過去に
“ 別に誰かれ構わず人を殺すということをしたことがない ”
という訳でもない。孤児を拾って旅に同行させるなど、
余裕なのか新たなる悪党の新芽なのか、拡がりを持つ集団。

ブルーグラスのルーツ。アメリカの開拓時代。
米国南東部、に移住したアイルランド系やスコットランド系移民の音楽、
アフリカから奴隷として連れてこられた黒人達の音楽などが融合した音楽。
オールドタイム(マウンテンミュージック)が生まれた時代。
キャベンディッシュ、3人の黒人の男たち、ある夫婦、
そしてローズといった移民たち。
インディアン、殺された軍服の男、サイラス、ベイン一味アメリカ人たち。
移民とアメリカ人との間に存在するものは、法でも人情でもなく、
“ 銃 ”による威嚇と抵抗による“ 銃 ”によりもたらされる秩序。

そして映画の最後は西部劇らしく銃撃戦。映画は感傷を残し、完結する。


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