見出し画像

僕たちは希望という名の列車に乗った

1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、
祖父の墓参りで列車に乗って訪れた西ベルリンの映画館で、
「ジャングルの裸女」という映画を観る。
が、映画が始まる前、ニュース映像が流れた。
それは、ハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュースだった。

「どうだったベルリンは?」  「映画は観たか?」
「トップレス映画を見た」
「ぼくも見たい、全部見えるのか?」
「そんなものを見たら堕落するぞ」
「それよりもっとすごいものを観た」

クラスの中心的な存在であるテオとクルトは、
レナやクラスの女の子たちも誘い、パウルの叔父の家に行った。
パウルの叔父は、人里離れた湖のそばに住み、
アメリカ・西ドイツが運営する西側ラジオ放送を聴いていた。

「聴かせてくださいよ」
「いいだろう」

──ソ連の支配に反発したハンガリーで民衆が蜂起
──プスカシュをはじめ、数千人が死亡しました


「ハンガリーのために黙祷しよう、死んだ同志のために」

テオとクルトは、級友たちに呼びかけて授業中に2分間の黙祷を実行した。
それは自由を求めるハンガリー市民に共感した彼らの純粋な哀悼だったが、
ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは
“ 社会主義国家への反逆 ”と見なされる行為だった。

「なんだこれは!!」
「クルト!、なぜ黙っている!」 「レナ!、なぜお前も黙っている!?」
「エリック、お前もか!?」
「これは、、追悼の意です」
「追悼だと!?」


テオとクルトは、クラスのほとんどの生徒を誘い、
またパウルの叔父の家に行った。

──10月29日には警察、軍隊、市民による国民防衛隊が結成
──ナジ・イムレがソ連に停戦を呼びかけ、ソ連軍は撤退を開始した

「ハンガリーの勝利だ!、自由に万歳!」
「万歳!」  「万歳!」  「自由に!」  「万歳!」

テオとクルト、クラスの生徒たちは酒を飲み、
西側ラジオ放送から流れるアメリカの曲でダンスを踊った。


この2分間の黙祷が教育庁に知られることになる。
校長は、テオに、「わたしは同志のおかげで校長になれた」と言い。
労働者階級育ちのテオに、進学コースはエリートコースだと言い、
その特権の意味を理解するよう説明した。
「いい農民は、秋にミミズが這い出すのを見て嵐に備える」と言った。


テオは、クルト、クラスの生徒たちに、
校長が、自分にアドバイスをしてくれたと話す。
パウルの叔父は、「君たちは自分たちの意思で黙祷を行った」と言い、
これは、「自由思想だ」と言い、
国家からすると驚異で反逆罪と捉えられると言った。

テオは、これはサッカー選手、プスカシュへの哀悼にしようと話した。
クルトは、「嘘をつくのか?、俺たちはハンガリーに追悼したんだ」
と言ったが、テオはスポーツへの哀悼にし、政治意思はなかったようにする
と説明した。意見は対立したが、最後は無記名の多数決で決めた。


やがて教育庁のケスラー女史が現れた。
ケスラー女史は、まずエリックだけを呼んで取り調べた。
その後、テオを呼んだ。

「今回の沈黙の意味はなに?、たんなる学校への反抗ならいいのだけど」
「実は、サッカー選手のプスカシュが亡くなったと聞いて、それで、、」
「サッカー選手への哀悼?、はは、サッカーが好きなクラスなのね?」
「そうです」

ケスラー女史は、クラス全員をひとりひとり取り調べ、帰って行った。


テオとクルトは、クラスのほとんどの生徒を誘い、
またパウルの叔父の家に行った。

──11月4日、ソ連軍は、ハンガリーに再介入
──街は市街戦と化し、ナジ・イムレは追放された

「なんだと!?」
「アメリカは?、西側は何もしないのか?」


翌日、ケスラー女史が再び現れ、テオを呼び出した。

「あなたに朗報よ、プスカシュは生きている、
 亡くなったと言ったのは誤報よ、西側ラジオ放送のね、
 ──どこで西側ラジオ放送を聴いたの?、
 ──エリックがあなたが首謀者だと話したわ」


さらにその次の日、ランゲ国民教育大臣までが現れる。
ランゲ国民教育大臣は、校長に「出て行け」と言い、
自ら教壇に立ち、生徒たちに一週間以内に首謀者を告げるよう宣告する。
首謀者が告げられない場合、「進学クラスは廃止にする」と言った。

生徒たちは、人生そのものに関わる重大な選択を迫られる。
仲間を密告してエリートへの階段を上がるのか、それとも信念を貫いて
大学進学を諦め、労働者として生きる道を選ぶのか──。


ベルリンの壁の向こう側、社会主義国家、ソ連統制下の物語。
閉塞した社会は、SNSで行った悪ふざけを、
ここぞとばかり正論で人の人生を追い込む現代と似ていなくなくもない。


いい映画です。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

よろしければ、作品の自費出版の費用にさせていただきます。

(。・_・)♪
17
普段は会社員をしています。映画のコラムみたいなもの、素人小説などを書いてみます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。