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トピックス(小説・作品)

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素敵なクリエイターさんたちのノート(小説・作品)をまとめています。
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2021年5月の記事一覧

ロンドンの休日 #2 〜あの名作と出逢える美術館『テート・ブリテン』へ〜

建物の外観も素敵な Tate Britain(テート・ブリテン)。 ロンドンの美術館は 無料と聞いてはいたものの (美術館や展覧会によっては そうでないものもあります。) 実際にこう大きく掲げられた FREE FOR ALLの文字をみると 美術館が、 人々にひらかれた場所で あることをつよく感じます。 (2018年4月18日撮影。) ナショナル・ギャラリーの イギリス美術専門の 分館であった名残りから 今もその宝庫となっています。 ラファエル前派の ダンテ・ゲイ

Breath

深く、深く、深く         息をする。             意識して遅く           生きていく、それは         終わらない 浅く、浅く、浅く 生きるをする 無意識に早まる 相反する、それは 終われない 深く吸った息は             浅く生きた先は   消えてしまい           暗闇のなか くらくらするめまい             ちかちかするひかり 届かない             逃げるように、目を

《眩しく透き通る.》

 祖母はずるい。そこが人には可愛く映るから、もっとずるいのだ。  わが家では伝統のトランプ遊びがある。子どもの頃、祖母の家へ遊びにいくと祖父母、母、わたしでいつもしていたそのゲームを、彼女の家で日々を過ごすようになったこの頃もよくしている。朝昼晩と食事のあとにはトランプをすることが習慣になっているほどだ。札を配るのが、祖母の役目であることもいつも変わらない。  その時にかならず起こるのが、彼女による小さな「不正」だ。裏返しの束をこっそりめくり、強いカードを自分のところへ置

短編小説「ーーあと、5分だけ」

 ちいちゃんはちっちゃいから、ちいちゃん、ってお名前にしたのよ。  ママはちいちゃんのほっぺたに、自分のほっぺたをくっつけて笑った。 ママのほっぺはつるつるで、それでいてとっても柔らかくって、ちいちゃんはママが大好きだった。  でも、ちいちゃんはもうこんなに大きくなったから、ちいちゃんじゃなくて、おっきいちゃん、かな?  パパがちいちゃんの反対側のほっぺたに、自分のほっぺたをくっつけて笑う。パパのほっぺはおひげでざらざらしていて、タバコの匂いがぷうんとして、ちいちゃんは

ロンドンの休日 #1 〜世界一ロマンチックな街角で甘やかなティータイムを〜

先日、 『チャーリーとチョコレート工場』 について書いたせいか 妙にイギリスが 恋しくなってしまったのです。 一日も早く自由に 海外旅行できる日が 来ることを願いつつ、 2018年のロンドンへの旅について 少しずつ綴っていきたいと思います。 まずは、 パステルピンクが 乙女心をくすぐる ケーキ屋さん Peggy Porschen(ペギーポーション) のことを。 季節のお花で彩られた このお店がまえ。 「可愛い〜」と 心ときめかせてしまうのは わたしだけではないは

掌編小説:その箱

 日曜日の朝、紅茶を淹れると私は机に向かって言葉を書いた。死んでしまったあの子の言葉を。手のひらの半分もない、ごく小さな紙切れに私は言葉を認める。「おはよう」、「明日は体育があるんだ」、「これ、プリントだって」、「お母さん、今日って何曜日だっけ?」。  昼食にラビオリを温めた。仕事の電話があった。皿を洗って、戸棚にしまい、取り出したタンブラーに買ってきた水をついだ。砂糖漬けのレモン数枚を小皿に出して、タンブラーと一緒に運んだ。  席に戻るとまず書き損じた紙片を集めた。うまく

《キッス、お月さま.》

 投げキッス。それは、93歳の祖母のトレードマークだ。  ドキュメンタリー番組に一緒に出演した時にもそれを披露し、観てくださった彼女の同年代の友人からは「投げキッスなさるなんて、まだお若いですね」とお手紙をいただき、わたしの友人からは「何回みてもおばあちゃんの投げキッスがいい」とLINEをもらった。  看護師さん、リハビリをしてくださる理学療法士さん、訪問入浴の方々と平日たくさんの方にお世話になっている祖母。ありがとうとお礼を何度も言った後、皆さんとさよならする時にはやは

「できない」と認める、でも「挑む」

みなさん、こんばんは。綺羅です。 今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。 今日は、ひとりお茶会を実施しました。 課題で費やした3週間分の日数と時間は、想定以上に出来る事が制限されてしまったので、この1ヶ月をどう過ごし使うかが、来月の課題になりそうです。 まずは、課題の合間にみつけた様々な話題を、記事にしていくことを、考えたいと思います。 本日は、自分の「できない」を表明したく思います。 正確に表現するならば、「今月中にする!」と決めていたことが、「こ

《本棚、夢.》

 今も大切に本棚におさめている一冊がある。ページは図書館の何度も貸し出されている本のそれのように黄色みがかり、表紙の角もすっかり色をなくしてしまっている。  その作品が映画化されると聞いた時には、愛してやまないストーリーが選ばれたことへの誇らしさと、多くの人のものになってしまう物悲しさが交差した。16年も前の出来事なのに、この複雑な心持ちは昨日のことのように思い出される。  『チャーリーとチョコレート工場』は、当時通っていた小学校の教科書だった。ニューヨーク郊外にあるその

【自分のための企画】ひとりお茶会 5月

みなさん、こんばんは。綺羅です。 今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。 昨日は、自分がnoteを開始して以来、非常に恥ずかしい状態を記事にして掲載したのですが、思いの外、励ましのお言葉をいただけて、画面の目の前で泣いていました。 自分が「恥ずかしい」と感じて、それから、どう行動したかを記録し、自分の今後の振り返りに使えると思い、3行日記をつけることにしました。 改めてですが、有料記事執筆を応援いただけること、心より感謝申し上げます。 さて、今日はまだ

空想の5センチ上

知っていますか この世の全ての出来事は あなたが生まれた時に 作られたものです 本当は歴史なんて無かったんだ あなたを信じ込ませるために 誰かが書いたシナリオです 毎日起こる事は全て 架空の出来事で あなたの目の前でのみ 演じられているだけなんです あなたが死んだら みんな動きを止めて 暗闇に帰ります それが今あなたが見ている 世界の真実です これは絶対に秘密ですよ くれぐれも人には言わない様に あ、その顔はどうやら 信じていない顔ですね まあ良いでしょう その方が幸せです

きっと。

かきかけのことばたち、いっぱい。 いいたいこと、いわなきゃならないこと、あとから、あとから。 あふれ、こぼれ、もれてくる。 あなたにどうしてもいいたいことがあったの。 きのうにおいてきたことばたち。 あのこにつたえなきゃいけないことばがあったの。 もうおもいだせない、いつか。 あしたはきっといえるだろうか。 あしたはきっとかたちになるか。 こころのしたのほう、しずかに。 つのって、つまれて、やまとなる。 ぐるぐるにかきまわして、ひっくりかえしてもみつからない、ほんとう。

《おそうめん.》

 もわっと纏わりつく空気。その中で、今年初のおそうめんを食べた。  茹でたのは、我が家の食事担当をしているわたしだ。ザルにあげる時、右手の薬指を小さくやけどしたのは、麺のおさまりきらない小ぶりなそれを使ってしまったからだった。  恥ずかしながら、日々三度のごはんをつくる中でめったにしない「失敗」を、簡単なはずのおそうめんでするというのは今回が初めてではない。  ちょうど一年前。祖母とふたりで過ごしていた日のこと。二人前を小さなお鍋に入れたせいで、そこからはみ出た部分に火

シンプルじゃなくて本質でありたい

おしゃれ、というのが昨年の秋からずっと私の重要な課題だった気がする。 「おしゃれになる」という事よりも、「おしゃれであることはどういうことか、なんのためか、その意味と意義、そして私がおしゃれであることと私が心地よくあることとは」みたいな、包括的なおしゃれに対する思考という感じだ。 今までおしゃれって出たとこ勝負というか、運がほとんどのように思っていた。 生まれた場所が都会じゃなかったとか。 顔がおしゃれじゃない、体型がおしゃれじゃない、というボディサイズの話だったり。(肉体

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