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色恋沙汰って戦いだ!

「……なんて?」
「だから俺か」「この私か」
「「どちらと結婚する?」」
突然の申し出に、女は困惑の表情で目の前の男達を見た。
彼らのことはよく知っている、世界でも指折りの探検家と運び屋にして、昔からの大事な友人達。
何度も命懸けの経験を共にした、心から信頼出来る相手。

その二人が今、まるで役者のように様になる姿で一輪の花を持って跪き、告白してきているのだ。結婚しよう、と。
「アタシと? 嘘でしょ!?」
だから女は疑問を口にした。仕方がないだろう、本当に理解出来ないのだ。なにせ一夜を共にする相手に困ったことがない二人が、傭兵の自分と結婚?

「言っておくが冗談じゃねえ」「私達は真剣だ」
「えぇー……」
周りから見れば鋼鉄の男と長命種族の男が、馬鹿みたいに真剣な雰囲気で獣人の女に求婚している。
歴戦の女傭兵――クロムにとって、この光景は殺し合い以上に緊張する出来事はいくらでもあると知った、最初の瞬間であった。

【続く】

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