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犬が親友!

 犬。 

 イヌ科イヌ属に分類される哺乳類の一種。

 人間が古来より付き合っている動物であり、初めて人類以外で友となった存在。

 様々な種類が存在し、与えられる役割も多種多様。今や社会の中で犬がいない生活は考えられないといっても過言ではないだろう。

「というわけで」

 しかし今、目の前にいる犬から長々と語られた説明を聞いた上でなお、雨夜冬次は頭を抱えたくなる気持ちに襲われていた。

「冬次、しばらく俺を家で飼ってくれ! 相棒の頼みなんだからいいだろっ!」

 なぜなら、目の目で人語を口にするゴールデン・レトリーバーが、彼の親友デイタイム・ウィリアムズであると宣言していたからである。

「……僕なんか悪い薬でもやったっけな……」

「おい現実逃避するな相棒! お前がヤクなんかしねぇ奴ってのは俺が保証するぜ!」

「人の言葉を話す犬が僕の親友だなんて状況が事実なら、ラリって幻覚見てるって言われたほうがまだ納得出来るよ!」

  昨日の昼に別れた時はまだまともな人間の姿だったデイタイムを見ている以上、この喋るゴールデン・レトリバーが自分の親友だとはどうしても信じられない冬夜は、デイタイム本人しか答えを知り得ない質問をぶつけていく。

「お前がウィルだっていうなら聞くけど、僕とあいつが出会ったきっかけは?」

「虐められてた静音を助けようと盛大な喧嘩をおっ始めたお前に俺が巻き込まれた」

「いやそっちが勝手に乱入してきたよな?」

「そうとも言う!」

 この底抜けに明るく後先を考えていないような話し方で出会った時のエピソードだけでなく、彼らにとって大事なもう一人の親友の名前も口にしたことから、冬次はいよいよ目の前にいる犬が親友であると認めざるを得なくなり、溜め息と共にベッドから身を起こしつつさらに質問を重ねた。

「お前がウィルってことは分かったよ、遺憾だけどね。それで……なにがあったのさ?」

「あー、実は昨日行ったバイトなんだけどよ!」

【続】


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