アイン・ジャールート
大戦集結以降、汚染された大地で暮らすことを余儀なくされた人々にとって、戦争の残滓である自律巨大兵器の徘徊は災害と同じで、ただ自分に被害が及ばぬことを祈りながら過ぎ去るのを待つしかない存在であった。
もし祈りが届かなければ……。
「はぁ……はぁ……!」
――巨大兵器が蹂躙する街の中で、生き残った少年は必死に逃げていた。家族の乗ったバスは踏み潰され、彼も今ドローン兵器に追われている。
虫の羽音のような飛行音と共に近づいてくるドローンは素早く、子供の速さではどうあがいても逃げ切ることなど不可能だ。
それでも諦めない少年であったが、ドローンに搭載されたガトリングの照準は無慈悲で、あとコンマ数秒で彼の命を。
BATATATA!
奪おうとした直前、少年の背後に鋼鉄の戦士が降り立ち、手にした銃でドローンを撃墜した。
『無事か』
「……え?」
理解が追いつかない少年は、ただ呆然と鋼鉄の戦士――人型機動兵器を見上げるのだった。
【一章に続く】
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