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Accidents Will?

【ハップ、起きていますか】

「……今起きたよ」

 身体が浮き上がるほどの衝撃で叩き起こされたハップは、その精悍な顔に不機嫌さを浮かばせつつも、ゆっくりとその場から起き上がっていく。

「で、さっきの揺れはなんだ? 彗星でもぶつかってきたか? それとも妙な宇宙生物にでも出くわしたか」

 星々の海を行く『フォーチュン号』は宇宙船としては小型ながら様々な改造が施された特別な船であり、よほどのことがない限り寝ている人間がベッドから転がり落ちるような衝撃が船内に発生することはない。

 逆に言えば衝撃でベッドから転がり落ちた自分が、部屋に重力制御をかけていたために頭を床に打ち付ける羽目になった問題が発生したということであり、ハップは指で額を揉みながら船の管理AIであるウィルに説明を促す。

【揺れの原因は彗星でも宇宙生物でもありません。そもそも私の操縦がその程度で乱れるとお思いですか?】

「思ってないから聞いたんだ。いいからさっさと状況を教えろ」

【了解しました。外の様子をお見せします】

 すぐさま船外カメラが捉えた映像が部屋に投影され、ハップの視界に宇宙の暗さと星々の光が広がっていく。光度が調整されると足元から前方に向けてフォーチュン号の船体が映し出され、通常ならこれで船が順調に宇宙空間を進んでいる光景を見ることが出来る。

 しかし現在投影されている映像の中のフォーチュン号はどう見ても順調な航海中とは言い難く、特に問題が発生している船首の状況を確認したハップは目を疑ってしまう。

「あー……ウィル、お前まともな航路を選んでたよな?」

【はい。衛星エウロパから衛星タイタンに向けて最適な航路を進んでいました】

「ならなんで俺達の船が、別の船に突き刺さってるんだ?」

【解析中ですが、これは交通事故かと】

 確かにそうとしか言い様のない事態ではあったが、それでもハップは思わず天を仰ぎながら叫んだ。

「……このだだっ広い宇宙で交通事故だと!?」

<<<to be continued>>>

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