西部

Save The Western

アリゾナ州トゥームストーン。
陽が西に傾き始めてからもう随分と経つ。
タンブルウィードを転がす風が酒場のスイングドアを揺らしてゆく。

大通りの左右には大勢の見物人。
まぁここではよくある決闘ってやつを観に来てる。
当事者でなきゃ俺だって観に行く。

背中合わせに立ち、10歩歩いたら振り返って敵を殺る。
実にシンプルだ。牧場のときはそうもいかなかったけどな。

一歩。

三歩。
この辺で振り返って殺っちまえばいいと考える奴はいても
実行する奴はいない。死ぬまで腰抜け呼ばわりで墓石にも刻まれちまう。

五歩。
腰のバントラインSPに手をかける。
こいつはあの「ピースメーカー」の特注モデルで、信頼に値する相棒だ。

十歩。
振り返り、撃つ。
もちろん当たらない。
そういう格好いいモンじゃねぇんだ。

相手が迫ってくる。
撃ってこないのかだと?
そりゃそうさ。奴の得物は銃じゃねェ。

――カタナだからだ。

俺か?俺の名はワイアット・アープ。保安官さ。

【シーン1-2へ】

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