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Case1 無敵、剣豪将軍!

 直垂姿の男は林の中にいた。
 畳に無数に突き立てられた日本刀の林の中に。
 否、男を囲んでいるのはそれだけではない。
 小刻みなステップを繰り返す黒人のヘビー級ボクサー。
 二丁拳銃の銃口を向けるカウボーイガンマン。
 緑色に光るエネルギー剣を構えた剣士などなど数十名。
 その全員が男を囲む日本刀の林を更に囲んで、圧倒的な殺気を円の中心、すなわち男へと向けているのだ。

 だが男に動じる様子は微塵もない。
 BLAM!BLAM!
 ガンマンの放った銃弾を手にした二振りの刀で弾き返す!
 跳弾がボクサーとブラジリアン柔術家の眉間直撃!死亡!

 男は刀の刃をまじまじと見やるとおもむろに投擲!
 400m先の崖上に潜んでいた狙撃手の喉を貫通!死亡!

 男が畳からまた一振りを引き抜き八相に構えると、そこへエネルギー剣士が斬りかかる!
 エネルギー剣は刀による物理防御が不可能だ!
 だが男の斬撃が速い!
 すれ違った直後、剣士の手首から先が斬り飛ばされ、刀身を失ったエネルギー剣の柄が畳の上を空しく転がる。
 振り向きざま真一文字の横一閃。
 手首に続いて首が宙を舞う!死亡!

 

 「えーっと、あれは」
 僕の疑念に先輩は『そんなことも知らないのか』みたいな顔で答えた。
 「足利義輝だよ、学校で習ったでしょ」
 「いや僕の知ってる足利義輝はガンマンと戦ってないです」
 「強すぎたの」
 「強すぎた?」
 「この世界は1565年6月17日で止まってる。誰もアイツを暗殺できないから歴史が進まないんだよね」
 団子のように串刺しにされた戦闘サイボーグの首が3つ、足元へ転がってきたが構わず先輩は話を続ける。
 「賞金稼ぎどもが束になっても敵わないんで、ウチにお鉢が回ってきたってわけ。それじゃ行こうか新人君」

 先輩は最新モデルの追尾レーザーライフルを構えて飛び出し、僕はその後を追う。

 次の瞬間、先輩の体が腰の位置で2つに分かれた。

 【続く】
 
 
 
  

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