インド

ぼくはインドカレー

 ぼくはインドカレーの化身さ!

 来日して7か月、ようやく自分のお店を持てたんだ!
 あべのハルカスの最上階で今日も日本人どもを接客だ!

 「インドカレーの化身が作る本格インドカレー?」
 チャラ男がメニューを見てニヤニヤ笑う!
 「なにそれおっかしー!」
 チャラ女が追従!
 
 注文を聞くぼくにチャラ男は苦笑いを浮かべる。
 「なに?アンタがインドカレーの化身?どっからどこまでがカレーでどっからどこまでがライスなワケ?」
 床と平行にした掌を上下させながらぼくに絡む。

 「ぼくはインドカレーの化身なのでお米は使われてナイデス」
 「なにそれカレーじゃないじゃん!」
 「ウケるー!」

 カレーライスとインドカレーの違いもわからないなんて...
 ぼくは注文のバターチキンカレーを辛さ2000倍にして彼らの胃腸を破壊したんだ。

 そんな出来事も忘れたある日... 
 サーベル!イノキ!タイガージェットシン♪
 入口のチャイムが鳴った。

 「イラッシャイマセ」
 店の玄関に立っていたのは、着物ヤマトナデシコ美女だった。
 「あの...わたしコシヒカリの化身なんですけど、どうしてもインドカレーが食べたくて...」
 恥ずかしそうに告げるその姿にぼくは一目惚れしてしまったのさ。
 
 やはり時代はライスだね。
 もうインドとかどうだっていい。
 こうしてぼくの店は本格的インドカレー店から本格的カリーライス店になった。
 彼女もお店を手伝ってくれるようになり、ゆくゆくは...という
そんなある日...
 
 サーベル!イノキ!ショウナイヘイヤ♪
 来店チャイムに振り向いたぼくはびびった。
 そこにはサリーをまとったインド人女性!
 「ナジーム!説明してもらうわよ!」
 君は...ニューデリースパイス学院の同級生...シェーラ!

 「あなたにインドの誇りを思い出させるためにご両親から頼まれたのよ!私、しばらく一緒に住むから!」

 うわー、たいへんなことになっちゃったぞ。

【続く】

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