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54.福祉で商売

今日は、放課後等児童デイサービスと高齢者向け賃貸住宅の例を挙げて、福祉で商売することについてのお勉強をしてみようと思います。

現在の超少子高齢社会を支える福祉事業は、医療法人、社会福祉法人、営利企業と地域、自治体、国とで支え合う複雑な構造になっています。
 
国はと言えば、厚生労働省でやっている施設もあれば、国土交通省でやっているものもあります。
 
せっかく、こども家庭庁なんてものを作っても結局はまとまり切れず、これまで通りみたいな雰囲気が、まだ始まって間もないのに既にします。
 
そこで問題の1つとされるのが、施設による違いや特徴を理解しないで、就業している現場職員も少なくないということです。
 
背景としては福祉施設の増加が挙げられます。
 
近年は、営利企業による経営施設が増加しています。

社会福祉法人は居室数が横ばいの状態が続いています。
 
一方で、倒産や撤退に陥る施設の数が高止まりしています。
 
新規事業として介護事業を立ち上げても、利用者が集まらないことで経営難になり、運営会社が変わってしまうというケースもあります。
 
その為、福祉業界内での転職や異動が多発して経営側の理念やビジョン、ビジネス感覚の違いにぶち当たって戸惑う職員が出てきます。
 
そして、利用者やその家族も運営会社が変わったり、倒産によって、混乱に陥ります。
 
悪い表現を使うと“たらい回し”のような状態になります。
 
社会福祉法人や営利企業(株式会社、有限会社など)は、施設を運営するビジョンや目的自体は変わりませんが、経営上の大きな違いがあります。
 
株式会社は株主がいて、配当を支払っていく義務があるという点です。

その為には、開かれた経営を行って事業規模や生産性を上げて利益を出す必要があります。

事業所数を増やしたり、独自のサービスを行って事業を発展させる課題があります。
 
それに対して社会福祉法人は、その立場から資金を循環して地域社会の為に貢献するという理念があります。
 
従業員への待遇、利用者へのサービス向上を図る為に、ある程度の規模感を持ちつつも、理念を持つ法人として、事業規模を大きくするよりも地域での役割や繋がりに重点を置いています。

このように業態は似ていても制度の違いによる違いは出てきます。
 
サービス向上の新しい展開として、介護ロボット等の先進技術を取り入れていくDX化も課題になっています。
 
DXは、Digital Transformationの略で、デジタル技術による生活やビジネスの変革のことです。

この変革は福祉に限らず、様々な分野で進んでいます。

2000年の介護保険が始まった頃から、少しずつ、介護ロボットの活用や介護システムによって、記録をデジタル化させるなど…のこうした先進技術は、理念が明確な経営者に率いられている社会福祉法人が率先して導入してきました。
 
現場で働く人の負担を少なくするだけではなく、利用者にもより過ごしやすく、行き届くサービスになるので、とても良い流れだと思います。
 
どのようにして資金を潤滑に回していくかも経営の課題の1つです。
 
株式会社は資金調達の自由度が高く、M&A(Mergers and Acquisitionsの略で資本の移動を伴う企業の合併や買収のこと)や統合再編、事業拡大などがしやすい面があります。
 
サービスも他業種との連携で事業効率化を図るなど、柔軟性のある動きができます。
 
居室数1万室以上を運営するなど大規模な事業運営を行う株式会社が増える傾向にあり、事業規模を生かしてサービスの品質向上や差別化を図ったり、従業員に働きやすい環境を用意する株式会社が出てきています。
 
社会福祉法人は地域に根付いているのでM&Aに巻き込まれにくい反面、事業拡大が図りにくいので、効率化や大規模な資金調達が実施しずらく、DX化や新サービスの拡大期には人員や資金が不足がちになる特徴があります。

ただし、地域や利用者に密着した細やかな施設運営には大きな強みを有しています。
 
福祉施設で働く人たちも、施設を運営する法人の経営方針や理念の違いを理解した上で、自分と合った施設を選ぶことが悩みや戸惑いの軽減に繋がるのではないかと考えられます。
 
改めて、医療や介護などの福祉事業の運営母体について見てみます。

特に多いのが、社会福祉法人、医療法人、株式会社です。
 
その大きな違いは2つあります。

1つは“営利”か“非営利”かです。
 
もう1つは“事業目的”です。
 
株式会社は、営利組織です。

利益を最大限にすることを目的に事業を行い、その利益を関係者に配当することが会社運営の目的の1つです。
 
その為に、事業や人材配置の効率化を常に考えて組織運営を行います。
 
一方で、医療法人や社会福祉法人は非営利団体と呼ばれます。
 
人命や介護サービス、地域貢献などの事業は、かけがえのない命や健康、安全を守ることが事業目的になります。
 
営利を目的として、その度が過ぎると、充分なサービスに繋がらない場合もあります。
 
その為、特に医療事業の経営主体は非営利団体が担うことと定められています。
 
事業目的の違いは、その名前にも表れています。
 
社会福祉法人であれば福祉を目的とした事業を営み、医療法人であれば医療を目的としています。
 
一方で、株式会社の事業目的は自由です。

経営者のアイディアや思想、理念に基づき、様々な事業を行うことができます。

社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立されるもので“社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人”と定義されます(社会福祉法第22条)。
 
社会福祉法人の設立には、事務所がある都道府県(政令指定都市や中核都市の場合は市)の認可が必要です。
 
社会福祉事業の内容も定められていて、第一種社会福祉事業には“特別養護老人ホーム”、“児童養護施設”、“障害者支援施設”、“救護施設”などが含まれています。
 
第二種社会福祉事業は“保育所”、“訪問介護”、“デイサービス”、“ショートステイ”などが含まれます。
 
また、社会福祉法人は公益事業として、子育て支援事業、入浴、排せつ、食事等の支援事業、介護予防事業、有料老人ホームや老人保健施設の経営などを行うことが認められています。

社会福祉法人が多く経営しているのは、老人福祉施設、障がい者支援施設、婦人保護施設、保育所などの児童福祉施設などです。
 
老人福祉施設の90%以上、障がい者支援施設の75%以上、婦人保護施設の65%以上、児童福祉施設の50%以上が社会福祉法人による運営となっています。
 
社会福祉法人には、地域の多様な福祉ニーズにきめ細かく対応するだけではなく、社会的な支援が必要な人に対して継続的にサービスを提供していくことが求められています。
 
その為、社会福祉法人が行う社会福祉事業は、特に継続性と安定性が重要視されています。
 
医療法人は、医療法の規定に基づいて設立される法人です。
 
医療法の39条には“病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団”と定義付けられています。
 
社団は人の集まりを基盤とした組織で、財団は財産を運営する為に作られる法人ですが、医療法人では両方を設立できます。
 
ちなみに、一般的には医療法人という場合は医療法人社団を指していることが多いようです。

医療法人は、都道府県の認可を受けて設立します。

医療法人が運営するのは基本的に病院や診療所、介護老人保健施設などです。
 
最近では、社会福祉施設の運営を行うところも増えています。
 
介護予防の為のリハビリテーションや通所介護などの他、社会復帰を目的とした福祉サービスなどを行う医療法人も増えています。
 
株式会社は、一般の企業と同じく営利を目的の1つとする運営組織です。
 
資本金や定款などを作成して登記手続きをすることで、誰にでも設立できます。
 
福祉分野への参入は比較的新しいですが、事業の目的が幅広く、自由に設定できるので、これまでの施設とは異なる視点のサービスで人気を集めている施設も多ことが特徴です。
 
株式会社が運営している施設は、介護付き有料老人ホーム、デイサービス、サービス付高齢者向け住宅、グループホーム、訪問介護、デイケアなどで、老人福祉施設が2%程度、その他の社会福祉施設が70%以上となっています。
 
そこで現在、注目というか…問題とされているのが、放課後等児童デイサービスとサービス付き高齢者向け住宅の乱立…そして倒産です。
 
もちろん、受け皿が必要なのはわかるのですが、箱ができただけでは意味がないというよりは…、意味がないだけならまだ良いのですが、社会にとって悪い影響が生じてしまうこともあります。
 
少子高齢化の勢いが止まらず、出生数も減少し続けている日本ですが、女性の社会進出を背景に保育園や病児保育施設は増加しています。
 
その状況の中で特に増えているのが、身体、知的、精神等の障害を持つ子どもや発達に特性のある子どもの為の放課後等デイサービスです。
 
放課後等デイサービスは、2012年の法改正を機に多くの民間企業がこの事業に参入したことで施設数が一気に増えました。

参入する企業が増えた経緯は、この事業自体が新しい事業だったこともあって競合となる事業者も少なく、施設をオープンすればすぐに利用者が集まり儲かる見込みがあった…という理由が挙げられます。

2012年の制度開始時の利用者数は5.1万人程度でしたが、2020年には20万人を超えて約4倍になっています。
 
従来は未就学児と就学児が共に通っていましたが、2012年の児童福祉法改正によって未就学児の為の“児童発達支援”と、学校に通っている6~18歳の児童の為の放課後等デイサービスに分かれました。
 
日本でも“発達障害”という概念が浸透してくるにつれて、発達障害と診断される子どもの割合、絶対数が増加しています。
 
それに伴って、放課後等デイサービスを利用する子どもも増えているという状態です。
 
スタッフは、管理者と児童発達支援管理責任者(個別支援を策定する者)、そして指導員のおおよそ5~10人で構成されます。
 
指導員は“児童指導員または保育士、障害福祉サービスの経験者”と定められています。
 
職員の半数以上が児童指導員または保育士であることが条件です。
 
また、障害福祉サービスの経験者は高等学校等卒業者で、2年以上障害福祉サービスの実務を経験していなければなりません。
 
障がい児10名までは職員2人以上で、そのうちの1人は常勤であることが定められています。

サービスを利用する障がい児が10名以上であれば、5名以下が増えるごとに1人を加配することが必要になります。
 
児童発達支援管理責任者が作成する個別支援計画により、自立支援や日常生活の充実の為の活動が実施されています。
 
利益率も10%程度と、他の福祉サービスと比べて群を抜いて安定しています。

その為、放課後等デイサービスを行う施設が急激に増加しました。
 
制度が開始された2012年には2540施設でしたが、2019年には13000施設以上と5倍になりました。
 
障害のある子どもたちの放課後の居場所を作ることで、仕事をしている家庭のサポートに寄与することから“障がい児の学童”と言われることもあります。
 
そして、2021年の時点では15000箇所以上になっています。
 
今もどんどん新設されています。
 
生活力向上の為の様々なプログラムが行われていて、トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。

本来は主として担当すべきNPO法人や社会福祉法人の割合には変化がありません。
 
対照的に、収益事業を目的とした多くの株式会社が新規参入しています。
 
放課後等デイサービスの運用ですが、学校がある日は14~17時又は18時までと3時間程度の営業、平日の祝日や学校が休暇の場合は1日単位での営業(6時間程度)を行っているところが多いようです。
 
報酬体系は、1単位10円で介護保険と同じ“基本単位制”です。
 
基本単位に加えて、有資格者がいればその分加算されます。
 
送迎加算などを含めると、地域差はありますが…1日で最低10000円という非常に高額な報酬単価になります。
 
放課後等デイサービスの定員は、報酬の効率化から1日10名程度で設定されています。

また、欠席等の保証もあり、利用児童が体調不良などで欠席した場合や短時間(30分以下)の利用になった場合には、欠席時対応加算として940円が支給されます。
 
定員をある程度オーバーすると基本報酬が3割減額になり経営が成立しないので、1日利用を10~11名にコントロールして実績報告をしているようです。
 
利用者側の負担額は1割であり、また所得によってその上限が定められているので、報酬の9割以上が国からの支給になります。
 
報酬額が11000円として、月に22日稼働し、1日利用が10名とした場合、月間の報酬は11000×22×10=242万円です。
 
支出としては人件費が150万円、家賃などが30万円、その他雑費として30万円とすると、32万円程度の収益になります。
 
初期投資も1000万円程度と低額であることも、参入のしやすさに繋がっています。
 
報酬単価が時給制ではなく1日あたりの設定となっているので、収益を上げようと思えば、短いサービス提供時間で1名あたり1日約1万円以上という、非常に高額な報酬を得ることができます。
 
その為、本来の利用者である児童の支援よりも、営利を追求する事業者が後を絶たない悪循環が発生してしまいました。
 
これに対して、これまでも全国各地での違法な営利追及に対して、多くの行政処分が実施されてきました。
 
サービスの質の低下を指摘された例もあります。
 
本来であれば個別支援を行うサービスにも関わらず、子ども達に対して、一律にアニメDVDを連日見せるなど…サービス内容の不適合性を指摘された例も処分されています。
 
競合他社が多数生じた為に児童確保も頭打ちになり、次第に経営に難色を示す法人も出てきています。
 
地域によっては総量規制を実施するなど、歯止めがかかるようになってきました。
 
競合が増えると、生き残る為に他社に負けない良質のサービスの提供等の差別化が不可欠になります。
 
そんな多くの方に利用されている放課後等デイサービスですが、近年運営が困難になり潰れてしまう事象も発生しています。

儲かる事業ということもあり営利目的に走り、テレビを見せるだけで専門的なケアをしない事業所や、不正請求をする事業所といったように…ずさんな運営をする事業所が増えてしまいました。

放課後等デイサービスを長期的に安定した経営をする為には、利用契約を増やすだけではなく、余裕をもった人員配置を心がけて、質の高いサービスを提供することが必要でしたが、それを考慮しないで運営していた事業者が一気に閉所に追い込まれる形になってしまいました。
 
そんな中でも健全に運営していた事業所もあったのですが、そういった事業者側としては、少しでも障がい児の居場所を確保して、安心して生活し、自立できる場所を確保しようという気持ちで事業を行っていたにも関わらず、それとは裏腹に収支上の問題で事業を継続したくても続けられないという“経営問題”に発展してしまったという事例もあります。

このような経緯から、放課後等デイサービスでは、ただ施設をオープンするだけでは利用者は集まらず、利用者のニーズをしっかりと把握して、それに応えられる質の高いサービスを提供できる事業所だけが生き残れる時代になりつつあります。
 
他の事業所とサービス面などで差別化ができていなければ、利用者は流れて稼働率を上げることも難しくなります。
 
そうなると、通常の活動の中だけでは単価はなかなか上がりません。
 
その結果、契約数を増やすことばかりを考えて上辺だけを整えて、保護者や学校との連携が取れなくなっていたり、施設内での怪我やトラブルが増加したりなど…サービスの質が落ちて利用者が集まらないという悪循環に陥ってしまいます。
 
その他に人材不足も大きな課題になっています。
 
仕事の大変さはもちろん、労働条件も見合わないといった問題もあるので、給料を上げたり、人手を厚くして休みを作りやすい状況を作るといった対策もあるのですが、潰れる事業所以上に新しい事業所が増え続けている為、そもそも職員を確保出来ずに継続できないというケースもあります。
 
また、報酬の加算を増やそうと思っても、看護師や理学療法士など専門性の高い職員の確保や、設備や備品などの整備、プログラムの構築などの投資が必要になるなど…事業継続への問題は非常に多い状況にあります。
 
放課後等デイサービスは福祉事業であり、ボランティアではありません。

事業を営んでいく上ではビジネス的な視点は大切で、事業を黒字化させて稼働率を高く維持していく為の方策を考えるなど、経営者としての手腕が試されるようになっていて、一昔前のような、競合が少ないからやれば儲かるだろう…という事業ではなくなってきています。

そんな状況の中、2021年度には法改正が行われました。
 
この改正では、塾などの機能や預かり中心の事業所があることを問題視する部分があります。

また、区分に関する概念が大幅に変更されたことから、重要事項説明書や契約書の再締結が必要になるなど、新たな対応に追われてしまい、ますます経営が厳しくなる事業者が増えました。

しかし、現状は更なる悪循環を生んでいて、最近では利益にこだわるあまりに利用者や職員を水増しして不正請求をするといったことが横行してしまって問題視されています。

こういった事業所は、指定取り消しや営業停止などの行政処分を受けることになります。
 
障害を持つ子ども達の行き場をなくしてしまわない為にも、各自治体には営利法人や新規事業所の重点的な実地指導が求められたり、事業者には業務全体を定期的に見直して適切なサービスを提供できるように心がけることが求められています。
 
そして、2024年度に行われる法改正が今話題になっています。
 
その内容は放課後等デイサービスが“総合支援型”と“特定プログラム特化型”に2類型化されるというものです。
 
潰れる事業所が多くなっている中で、ニーズは高まる一方です。
 
事業所の数、利用者の数ともに増加傾向にあるのが実態です。

それに伴い、習い事のような特定のプログラムに偏ったサービスを行う事業所が増えてきています。
 
その状況を変える為に、運動や認知、コミュニケーションなど多様な面で児童の発達を促す“総合支援型”と、理学療法士によるリハビリなどの専門性の高い“特定プログラム特化型”に2類型化させ、それでいて、テレビを見せるだけなどの単なる預かりや、塾やピアノなどの習い事のような支援は公費の支給対象から外すということが厚生労働省の方針になっています。
 
“総合支援型”と“特定プログラム特化型”の分類はどう分けるのか…ということは、まだ“検討”段階です。
 
更に、それらに属さない塾やピアノなどの習い事だけを行う支援は公費の支給対象から外すとありますが、専門性がないことをどのように認定するのか…そういった問題もまだ“検討”段階でこれからハッキリします。

この2024年の法改正が行われれば、今後は更に、質の高いサービスを提供できる事業所だけが残ると予測されています。
 
また、人材不足が懸念されてはいますが、職業としての将来性は高いことが予想されます。
 
その理由として、少子高齢化により児童数が少なくなりますが、児童指導員という仕事は人と密接に関わるのでAIにはできないことも多く、仕事を機械に取られるという不安が少ないです。

また、福祉に携わる職業は世の中になくてはならない存在になりつつあるにも関わらず、低賃金やそれによる人手不足が社会的に問題視されていることを受けて、政府としても今後はより一層踏み込んだ何かしらの対策をとる可能性もあります。
 
様々な仕事が自動化されていき、多くの職種が無くなると言われる今後の世の中において、AIよりも人が求められる仕事はそれだけで希少価値は高くなります。
 
今後そういった職種を目指す人たちが増えることも想定されるので、利用者だけではなく、職業先としても重要な事業であるということが言えます。
 
3年おきに行われる法改正によって事業所としてのあり方やサービスの質、報酬内容が大きく変わることで潰れる事業所が増えていますが、障害などを持つ子どもの増加や働く女性が増えているという背景を考えると、放課後等デイサービスの需要は今後も高まると考えられます。
 
今後も事業所の数は増え続けていくと思われます。
 
ただ増えただけでは意味がなく、質の高いサービスを行える事業所を増やす為に法改正はされています。
 
不正をしている事業者やサービスの質が悪い事業所は、残念ながら消えていきます。
 
それでも、世間の需要は依然として高いので新たな事業所が増えます。
 
このようなサイクルを繰り返して、少しずつ良い事業所の割合を増やしていくということが、結果として利用者の為にできることなのかもしれません。
 
一番に考えなければいけないのは、こういった施設を必要とする児童と保護者がいるということです。
 
そういった人たちが安心して利用できる事業所を1つでも増やしていくことが求められているということを忘れずに、課題解決をし続けていくことが必要になっていきます。
 
次に高齢者向け住宅についても見てみます。
 
2022年の介護事業所の休廃業や解散は、2010年の調査開始以来、過去最多の495件(前年比15.6%増)になりました。

2022年の倒産も過去最多の143件で、倒産と休廃業、解散の合計は638件で、初めて600件台を超えました。
 
超高齢社会において凄く必要とされているもので、どんどん新しく作られている施設もあるのですが、その裏では、このように、退場する事業所も増え続けています。
 
この無駄…ギャップを排除していかないことには、国のお金はなくなるし、困る人は増えて…ということで、社会はもっと大変になります。
 
その中でも、今回はサービス付き高齢者向け住宅のお勉強です。
 
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー構造かつ安否確認や生活相談等のサービスが付帯する住宅です。
 
現在、全国に8165棟あります。
 
診療所や訪問看護ステーション、デイサービスなどの施設と併設しているサ高住もあります。

高齢者の方や在宅を望む方が増えていることから、年々、サ高住の登録数も増加傾向にあります。
 
サ高住の入居条件は60歳以上、または要支援・要介護認定を受けている60歳未満の方です。
 
自立状態にある方を対象とした“一般型”、日常的に介護を必要とした方を対象とした“介護型”の2種類の施設があります。
 
“一般型”でも介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用することで入居が継続可能です。
 
“介護型”は特定施設入居者生活介護に指定された施設もあることから、中重度の要介護状態でも入居できます。
 
サ高住によって提供サービスや受け入れ体制が異なるので、特徴は施設によって異なります。
 
サ高住は、それまで介護の部分が曖昧な施設分類だった高齢者専用賃貸住宅、高齢者円滑入居賃貸住宅や適合高齢者専用賃貸住宅などを統合したものです。

凄いネーミングで、憶えるのが大変です。

サ高住経営は高齢者を対象とする為、少子高齢化が進む日本においては儲かる仕事として考えられています。
 
また、公的機関からの支援を多く受けられる点も特徴です。
 
建築時の助成金、事業運営による介護報酬、税率の緩和があります。
 
サ高住経営の収入源は主にに3つです。
 
経営によって得られる利用料金、自治体からの介護報酬(厚生労働大臣から認証された施設が介護サービスを行う際に市町村から出る補助金)、土地や建物の賃貸料です。
 
サ高住は開設規制が比較的緩いこともあり、事業者や入居者が課題を抱えやすい状況にあります。
 
サ高住は介護福祉施設という扱いではない点で、専門施設と比べると職員体制が薄いことから、入居者の状態によっては充分な安全確保が厳しい状況にあります。
 
介護業界の人手不足による業務負担の課題は、サ高住も例外ではありません。
 
また、看取りや要介護者のニーズの多様化に対応し切れていない点も課題となっています。
 
開設規制が緩く条件を満たせばサ高住と名乗れることから、費用や不適正な内容のサービス、職員の理解度の不充分さが入居者の不満に繋がることもあり得ます。
 
サ高住は需要が高まる一方で、問題点も指摘されています。

職員の目が行き届かない場合が多いこともあって、サ高住内での事故や孤独死なども発生しており、危険な運営体制が問題視されています。

経営不振による廃業も多いのですが、それ以上に経営不振以外が理由で廃業に追い込まれているサ高住が多いことからも、問題があるのだろうな…ということはわかります。
 
在宅を希望する高齢者の増加を背景に施設数を増やすサ高住ですが、その背景には多くの問題や課題を抱えています。
 
問題の発見により、国土交通省や自治体は問題解決に向けて様々な策を講じているものの、依然として問題視されるサ高住も少なくありません。
 
サ高住の運営法人は、株式会社などが62.7%、医療法人が15.5%、社会福祉法人が9.6%と、営利団体による運営が大半を占めています。
 
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の制度が創設されたのは2011年です。
 
“高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)”で定められています。
 
現在はコロナ禍を機に、自立者が入居できる高齢者住宅が増えてきています。
 
現在の入居者は80代が多いですが、今後は60~70代の人たちが元気なうちに家を引き払って引っ越してしまうケースが増えると考えられています。
 
サ高住の国土交通省の制度設計時のコンセプトは、“厚生年金の平均的な受給額(単身者で月14~15万円)で暮らす高齢者が早めに住み替えられる安心・安全な賃貸住宅”でした。
 
医療や介護の有資格者が常駐し、入居者の安否確認や生活相談などの生活支援サービスを実施します。
 
住居と食事などが一体的に提供される“利用権方式”の厚生労働省管轄の有料老人ホームに対し、国土交通省のサ高住では賃貸借契約と別に介護サービスなどの契約を結ぶ形です。
 
サ高住の増加数に関して言えば、一時のピーク時よりは落ち着いてはいますが、やはり増加傾向にあり、その反面、倒産するところも増えています。
 
サ高住の経営で発生する問題点としては、介護の囲い込み問題があります。
 
事業所が多くの介護報酬を得る為に、入居者にとって不必要な介護サービスを受けさせる問題です。
 
サ高住の運営側で利用する介護サービス事業所を指定して、入居者に外部の介護サービスを選択させない事例も見られます。
 
そして、利益重視の増設によって倒産リスクが高まります。

利益重視でサ高住を増設した結果、多くの空室を抱えて倒産するリスクが高くなり、高齢者の住まいの安定確保に影響を及ぼしています。
 
自治体(指定権者)から行政処分を受けて事業所の閉鎖を余儀なくされる事例も見られます。
 
運営体制と入居者の介護度にズレが生じていることも問題です。
 
事業所では幅広く入居者を受け入れる姿勢を持っている反面、入居者の加齢によって要介護度が高まると、状況に応じた介護サービスを受けづらくなる問題です。
 
介護サービスが不十分な為に、転倒などの事故のリスクも懸念されています。
 
サ高住では、基本サービスとして毎日の安否確認や生活相談を提供していますが、生活支援や介護サービス、訪問医療などを受けたい場合には入居者自身で利用する事業所を選ぶことになります。
 
訪問介護事業所やデイサービス(通所介護)事業所を併設するサ高住も多いですが、運営する会社や団体の一部では併設する事業所以外の利用を認めないということも実際に起きています。
 
併設事業所を担当するケアマネージャーへの変更を入居条件に指定して、不適切なケアプランを作成して入居者に過剰な介護サービスを受けされる悪質な事例もあります。
 
サ高住の運営側が利益を得る為に介護サービスの囲い込みを行い、高額の介護報酬を得られる仕組を構築しているということです。
 
過剰な介護サービスを受けさせられた結果、入居者が高額な自己負担金の支払を余儀なくされる問題もあります。
 
介護保険の支給限度額の兼ね合いから本当に必要なサービスを受けられなかったり、保険外サービスを利用せざるを得なかったりすることは、入居者にとっては不利益です。
 
出費が増えると入居者のお金がどんどん少なくなるので、尊厳ある暮らしを送る権利を脅かす事態を招く恐れもあります。
 
また、併設する介護事業所や担当ケアマネージャーとの関係性から、訪問医療を担当する医療機関や調剤薬局を指定するサ高住もあるようです。

その結果、医療機関でも介護報酬として居宅療養管理指導費を算定しているので、介護の囲い込み問題の当事者になる可能性があります。
 
また、自由に医療機関を選ぶ権利も制約されるので、入居者が希望する医療を受けられない点も懸念材料になります。
 
現在、サ高住のニーズは高く、増加傾向にあります。
 
家賃収入で安定した利益を得ようと考えて、サ高住の経営に乗り出す会社も少なくありません。
 
一方、競合施設が増え続けているので、入居者を確保できなければ収入が得られないで倒産のリスクが高まります。
 
介護人材の不足も慢性化していて、サ高住の規模に見合った人数のスタッフを確保できず、運営が困難になるということも多々見られます。
 
仮にサ高住が倒産したとしても新たな運営会社に運営が引き継がれるケースがほとんどで、すぐに退去を迫られる心配はありません。
 
しかし、高齢者に住まいに関する不安を抱かせる点では大きな問題です。

介護の囲い込みによって高額な介護報酬を得ている事業所にも、倒産リスクは潜んでいます。
 
介護の囲い込みは入居者が希望する介護サービスの利用妨害に当たり、自治体の実地指導による指摘事項に該当します。
 
今はケアプランのチェックも強化されていて、介護サービスの提供状況によっては実地指導や監査の対象になる可能性があります。

不適切なサービス提供が確認された場合には、介護報酬の自主返還と加算金の支払を求められたり、事業所指定の取消処分を受けたりする恐れもあります。
 
ケアプランのチェックや実地指導、監査が介護の囲い込みの抑止効果になる一方で、事業所にとっては利益の確保が難しくなるので、今後はサ高住の倒産リスクが高くなります。
 
サ高住は、介護サービスを受ける必要のない高齢者や要介護度が低い高齢者を入居対象としています。

しかし、空室を少なくして利益を確保する為に、身体介護が必要な高齢者や認知症の高齢者を受け入れるサ高住が増えているのが現状です。
 
有料老人ホームや特別養護老人ホームに入居できない高齢者の受け皿になっている実態も見られます。
 
サ高住では、ケアマネージャーや介護職員初任者研修修了者などの有資格者が1日1回の安否確認と生活相談サービスを入居者に提供しています。
 
有資格者は1名常駐していれば運営基準が満たされ、常駐時間帯も9~17時とするサ高住が多いようです。
 
その為、入居者全員に目が行き届かず、介護が必要だと感じた時点ですぐに相談に応じてもらえない場合もあります。
 
建物の中を移動する際に必要なサポートを受けられず、転倒などの事故も心配されます。
 
また、介護が必要な場合は外部の介護サービス事業所を利用するのが基本ですが、サ高住に併設する事業所を利用することも可能です。
 
介護サービス事業所には介護福祉士などの専門職が在籍しているものの、スタッフの勤務形態や働き方は多岐にわたります。

事業所の状況によっては入居者が必要とする場面で充分な介護を受けられず、自立した暮らしに支障を来すリスクも生じます。
 
サ高住を運営する事業所には、入居する高齢者の住まいと尊厳ある暮らしを守る責任があります。

その為、介護の囲い込み問題に真摯に向き合い、運営の適正化に繋げることが求められます。

介護の囲い込み問題の背景には、空室や諸経費の高騰などで生じた赤字を介護報酬で補填するという利益重視のビジネスモデルが潜んでいます。
 
介護の囲い込み問題については国や自治体の対応が厳しくなっていて、悪質な事例と判断された場合には業務停止命令や事業所指定の廃止などのペナルティを受けてしまいます。

入居者のニーズに応じて適切な介護サービスを提供することが、サ高住の存続にあたっては重要なことになります。
 
入居者のニーズや介護の必要性に応じた多様な選択肢と適切な情報を提供することで、入居者からの信頼を得られると同時に介護事業所としての正当性が担保されます。
 
倒産リスクを未然に防ぎ、入居者の住まいを守ることにも繋がります。
 
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は生活の自由度が高い反面、要介護度が上がるなど…在宅での生活が難しくなると特別養護老人ホームなどへの住み替えを求められる場合があります。
 
それがその入居者にとって最善の方法だからです。
 
その反面、利益を確保する為に介護の囲い込みを行い、入居者に過剰な介護サービスを受けさせる事業所も見られます。
 
利用している側の人も安心してサ高住に住み続けられるように、入居する前にサービス内容や退去条件を充分に確認することが求めれます。
 
サ高住を運営する会社としても、倒産リスクを回避して高齢者の住環境を守る一環として、介護などのサービスを適正に提供する心構えが必要です。
 
この双方の働きかけが重要になります。
 
福祉で金儲け…悪いことではありませんが、何事もバランスが大事です。


写真はいつの日か…豊平公園で撮影したものです。





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